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消費者被害についてのご質問

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遠方にひとりで住んでいる80歳の父がいるのですが、最近認知症が進み、高額で不必要な商品ばかりを買うトラブルが続いています。今後、どうしたらいいのでしょうか。
現在、全国では200万人を越える認知症の方々がおられるといわれていますが、認知症が進んでいくと、正しい判断に基づいた物品の購入などがだんだん困難になってきます。
 民法は、このような判断能力が不十分な人の権利を守るために「成年後見制度」を用意しており、対象者の判断能力の程度に応じて、「後見」、「保佐」、「補助」という3つの制度を用いることができます。
 「後見」とは、常に判断能力が欠けている方の場合に利用され、本人の日常生活に関する小額の取引以外は、全て成年後見人が本人に代わって行ないます。「保佐」とは、判断能力が著しく不十分な場合に利用され、本人が借金や家のリフォーム契約など一定の行為をする場合には、保佐人の同意が必要とされます。「補助」とは判断能力が不十分な場合に利用され、「保佐」の場合よりも更に限定された取引について補助人の同意が要求されます。そして、成年後見人等は、本人が成年後見人等の同意なしに行なってしまった契約等を取り消すことができるので、本人を不当な契約から守ることができます。
 これらの制度を利用するには、判断能力の程度を検討の上、本人や親族が家庭裁判所に申立てをなし、そこで成年後見人等が選任される必要があります。また、成年後見人等には、家庭裁判所が事案の性質等を考慮して適切な人や法人を選任することとされています。現在では核家族化・少子化等の影響もあってか、弁護士や司法書士が後見人に選任されるケースが増加しています。今回のように親族が遠方に居住している等本人の事務を処理することが困難な場合には、弁護士等が後見人に選ばれることが多いと思われます。
 最近、判断能力の不十分な高齢者の方を狙いにしたと思われる悪徳商法が横行し、一度被害にあった方が続けて被害にあうケースも多発しており、早めの対処が必要かと思われます。まずは、愛知県弁護士会の法律相談センタ-やお近くの家庭裁判所に相談され、この制度の利用を検討してみて下さい。
エステ・英会話・学習塾・家庭教師派遣を申し込んだのですが,自分の期待していたものと違う場合,契約を取り消して払ったお金を返してもらえるでしょうか。
エステ等のように継続的にサービスを受ける契約については,サービスを提供する側の資質によりその内容が大きく左右され、サービスを受けてみて初めてその内容が実感できます。それにもかかわらず長期間の契約を一括で行い,中途解約を認めないとか、高額の違約金の支払を要求されるなどのトラブルが多くありました。このようなトラブルを防止するため,契約期間が2ヶ月を超え(エステについては1ヶ月),かつ金額が5万円を超える契約の場合は,原則としてクーリング・オフが認められています(適用除外については法律で定められています)。このクーリング・オフは契約書面を受領した日から8日以内に,契約を解除する旨を相手方に書面で通知するだけで足ります(後のトラブルを避けるためにも内容証明郵便等で行うことがお薦めです)。契約書面を受け取っていなかったり,書面の記載に不備があったりする場合は,8日という期間は関係ありません。また化粧品や学習教材といった政令で定められている関連商品を別個購入している場合は,それらもクーリング・オフの対象となります。クーリング・オフした場合は,業者から違約金を請求されることはなく,既に提供を受けたサービスに対する支払いも必要ありません。
このクーリング・オフの期間を経過してしまっている場合でも、契約期間の中途で、理由の如何を問わず無条件で解除することができます。この場合は,将来に向かっての解除ですので、既に受けたサービスに対する対価は支払わなければなりません。また、このような中途解約の場合の違約金については法律で上限が定められていますので、不当に高い違約金を支払う必要はありません。
 支払いについて個別クレジットを利用した場合には,個別クレジット契約をクーリング・オフすることもできます。
呉服などの「次々販売」が社会的な問題になっているようですが、どのようなもので、何が問題となっているのですか。
「次々販売」とは、その人の収入状態から見たら、到底支払ができないような高額のローンを組ませるなどして次々と商品を売りつけ、結局、多額の支払いで財産を失ったり、ローンの支払いができなくなって、生活を破綻させるという商法です。典型的には、専業主婦などで全く定期的な収入がない人、年金生活者などの高齢者・低所得の人たちに、次々と高額な商品を販売し、手持ちの現金のすべてをつぎ込ませたり、自分の収入では支払っていけないくらいのクレジットを組ませて、売りつけるような事例があります。
 いくら商取引とはいえ、業者が、商品に対する知識や交渉力の劣る消費者に対し、しつこく勧誘するなどして次から次へと押付販売をし、購入者の生活を破綻に追い込む売り方は明らかに違法であり、購入者は「次々販売」による"被害者"として救済される必要があります。
 そこで、このような被害に対しては、クーリング・オフや消費者契約法に基づく契約の取消で対処する方法があります。また、それができない場合でも、顧客の支払能力、生活状況(商品の必要性の程度等)、その他の事情に照らして過剰な点数、金額の商品を売り付けたこと自体を、公序良俗違反あるいは不法行為であるとして、既払い金の返還を求め、これによって解決したケースも出ております。
 また、こういった被害が起きるのは、呉服会社だけでなく、クレジット会社にも大きな責任があります。そのローンがその人の収入なら生活を破綻させたり、老後の生活資金や夫の退職金をつぎ込んだりすることなく、無理なく支払える程度のものなのかどうか、クレジット会社が本当にきちんと審査をした上でローンを通していれば、このような被害は起きていないはずだからです。
 したがって、クレジット会社に対しても、未払いクレジット代金の支払義務の不存在を主張して、支払を拒んでいくことが考えられます。
 このような呉服等の「次々販売」は、"買ってしまったから仕方がない"ではなく、"消費者被害"であるという認識を持って、弁護士に相談してみてください。なお、こういった問題に対しては、愛知県弁護士会消費者問題対策特別委員会有志で結成された、「呉服次々販売被害弁護団」等が被害回復等の活動に取り組んでいます。
クーリング・オフとは、どのような制度でしょうか。
クーリング・オフとは、消費者を保護するための制度で、一定の取引について、所定の期間内であれば、何らの理由も必要とせず、無条件に契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりすることができるという制度をいいます。
 クーリング・オフは、特定商取引に関する法律(特定商取引法)や割賦販売法などの法律で定められています。
 中でも、特定商取引法によるクーリング・オフは、法律相談などでよく問題となります(自宅にセールスにやって来た業者とその場で耐震補強工事の契約をしてしまった場合など)ので、ここでは特定商取引法でのクーリング・オフを説明することにします。
 特定商取引法では、クーリング・オフができる取引を訪問販売、電話勧誘販売、マルチ商法など5つの類型に分けています。そして、訪問販売・電話勧誘販売の場合は、クーリング・オフのできる商品やサービスの種類が決められており、それ以外の商品やサービスについては、クーリング・オフは認められません。
 そして、クーリング・オフの行使期間は、取引の類型によって違っており、訪問販売・電話勧誘販売などでは契約書を受け取ってから8日間、マルチ商法などでは契約書を受け取ってから20日間とされています。
 ただ、行使期間を過ぎていてもクーリング・オフができる場合があります。それは、契約書を受け取っていない場合や、受け取っていても法律の定める事項が記載されていない場合、さらに、業者が消費者に嘘をつく等して消費者がクーリング・オフをするのを妨害した場合です。このような場合には、行使期間が過ぎていてもクーリング・オフができます。
 消費者がクーリング・オフをした場合、販売業者は、受け取った代金を速やかに返金しなければならないほか、販売業者は消費者に対して、損害賠償や違約金を、請求することはできません。これに対して、消費者は、提供されたサービスの対価を支払う必要はありません。
 なお、訪問販売・電話勧誘販売で購入したのが消耗品(健康食品や化粧品等)である場合、それを使ってしまうと、クーリング・オフができなくなる場合がありますので、注意して下さい。また、乗用自動車と、3000円未満の現金取引についても、クーリング・オフは認められません。
 ここでは、特定商取引法について述べましたが、ほかに、割賦販売法や保険業法などでも一定の要件でクーリング・オフが認められています。
長期の契約をする英会話教室の中途解約時の精算方法について、最高裁の判例がでたそうですが、どのような判例でしょうか。
英会話教室などの継続的なサービスを提供することを内容とする契約について、これまで解約時のトラブルが多かったこともあって、特定商取引法は、英会話教室で2ヶ月以上・5万円を超える契約をした場合には中途解約ができることと、その場合の精算方法を定めています。キャンセル料の上限は、教室に通い始める前は1万5000円です。通い始めた後はそれまでに提供された役務(サービス)の対価に5万円か契約金残額の20%のいずれか低い額を足した額以外は入会金などの名目の如何を問わず返還しなければなりません。特定商取引法は強行法規ですので、これに違反する契約は無効です。
 中途解約時に英会話教室が「それまでに提供した役務の対価」を受領できるのは当然としても、その「役務の対価」を算出するにあたっての「単価」まで特定商取引法が定めているのかが争点となっていました。通常は、契約締結時の単価を用いて計算されることが原則です。それでは、長期の契約者が割安の価格で契約をした場合に、中途解約時には通常価格ないし、解約時にのみ適用される別の単価にてこれを計算するよう契約に定めることは可能でしょうか?
 この点について判断したのが、最高裁平成19年4月3日判決です。最高裁は、「本件料金規定は、契約締結時において、将来提供される各役務について一律の対価額を定めているのであるから、それとは別に、解除があった場合にのみ適用される高額の対価額を定める本件精算規定は、実質的には、損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので、(特商法の)上記各規定の趣旨に違反して受講者による自由な解除権の行使を制約するものといわざるを得ない」と判断しました。解除のときは契約時の単価にて計算されるべきと判断されたのです。
 したがって、精算時の単価を契約時より高額の単価にて設定することはできません。
 この考え方は、エステティック、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介にも適用があります。
先日自宅に電話がかかってきて、大豆やとうもろこしを買えば必ず値上がりし、絶対儲かるとしつこく勧められました。何回もかかってくるし、絶対損をさせないと言うので、一度やってみようかなとも思っているのですが、どうでしょうか。最初に委託保証金を30万円くらい出してもらったらよいと言われており、それくらいは出すことができます。
それは商品先物取引です。商品先物取引とは、その名の通り、物がまだ出来ていないのに取引をすることです。例えばまだ大豆が収穫時期に来ておらず豊作なのか不作なのかわからない時に将来のことを予測して先に大豆を売り買いして取引をすることを言います。いわゆる相場をつくりあげることになるわけです。
商品先物取引は仕組みも複雑な上、商品先物取引に参加して利益を得ようとすると多大な情報収集能力・判断力などの専門性が要求される取引で、素人ではとても難しいものです。よほどの専門家でない限りは損をする危険性が大きいものです。経産省も一般の人は参加しない方が賢明と言っているくらいです。素人の方、特に老後のための貯金をつぎ込んだたくさんのお年寄りの被害が目立ちます。
 商品先物取引の場合、顧客の売買の手数料が最大の収入になります。そのため、執拗に売り買いを頻繁に勧め、手数料を稼ぎ、顧客の利益には関心がありません。最初の委託保証金はそれほど大きな金額ではないかも知れませんが、巧妙に勧められ、何千万円とつぎ込むことになった例も多いのです。
 このため、手を出さないのに越したことはないと思われますが、万一、「絶対損をさせない」「絶対儲かる」という言葉があったとすれば、損害賠償請求ができる可能性が高いので、早めに相談に行って下さい。特に商品先物取引の問題は専門性が高いので、商品先物取引に詳しい弁護士に相談するのがよいと思われます。
中古車販売店で中古車の売買契約を締結した買主が売買契約を解約したが、その売買契約に解約時には高額の損害賠償金を請求するという特約条項が存在する場合、販売店がこの条項に基づきその額の損害賠償金を請求することは認められるのでしょうか?
設例のように、消費者(個人)と事業者(法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合の個人)との間で締結される契約には消費者契約法が適用されます。
 消費者契約法とは、消費者と事業者との間に情報の質と量、交渉力について格差があることから、その格差を是正し消費者を保護するために、消費者・事業者間の契約締結過程において事業者に不適切な勧誘行為があった場合に消費者に取消権を認めたり、消費者にとって一方的に不利益な条項を無効としたりする法律です。
設例では損害賠償の額に関する定めが問題となっていますから、問題となるのは消費者契約法9条1号です。
 消費者契約法9条1号は、消費者・事業者間の契約において、解除に伴う損害賠償額の予定がされている場合、同種の契約の解除によって当該事業者に生ずる平均的な損害を超える部分を無効としています(全部が無効となるわけではありません)。
 したがって、設問の場合も平均的損害を超える部分については、販売店は買主に対し損害賠償請求をすることができません。
ただ、何をもって平均的損害というかという点は当然消費者契約法に規定があるわけでもなく一義的には決まりません。では、何が平均的損害かという点について、事業者・消費者のいずれが証明しなければならないのでしょうか。
 この点について、裁判例は分かれていますが、設問とほぼ同様の事案において、消費者契約法が消費者保護を目的とする法律であること、損害が生じていないという消極的事実の立証が困難であること等に照らし、損害賠償額の予定を定める条項の有効性を主張する側(事業者側)にその証明責任があるとした裁判例があります。
 この裁判例に従えば、設例でも、販売店側が契約書を作成するに要した費用や交通費等、平均的損害額について証明する責任を負うことになります。販売店が平均的損害額の証明に成功した場合、その額までは損害賠償請求をすることが認められます。