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相続・遺言についてのご質問

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先日、父親が亡くなり、兄弟2人で父親の財産を相続することになりました。ところが、私が長男であったため、先祖代々のお墓を私が承継することになったのですが、弟から、「お墓不足の昨今、お墓を取得するには、数百万円は必要になるので、お墓をもらったお兄さんはその分相続分を減らすべきだ」と要求されました。私は、弟の要求を応じなければならないのでしょうか。
お墓を承継した分だけ兄の相続財産を減らすべきだという弟さんの要求に応ずる必要はありません。
 確かに、お墓を購入しようとすると、墓石代、永代使用料等の諸費用がかかります。このうち、永代使用料は、安いところで約30万円、高いところになると740万円というところもありました。そのため、墓石購入費等を合わせると、お墓を購入するには数百万円はかかるのです。そうすると、お墓を承継しない者にとっては、お墓を承継しない代わりに、その分、相続分を増やしてほしいと思うのも分からないわけではありません。
 しかし、お墓を承継するというのは、お墓の管理料を支出したり、あるいはその供養をしたりしなければならい等の義務を負担することにもなります。さらに言えば、お墓を承継したからといって、お墓を他人に売って換金することもできないので、義務だけを承継すると言っても過言ではありません。そのため、お墓を承継する者が一人利益を得ているとは言えないのです。
 また、民法という法律は、お墓を相続財産とは別個の祭祀財産とし、相続の財産とはされていません。このことからしても、お墓を承継した者に対し、相続財産を減らすべきだと主張するのは、法的にも根拠がないことになります。
私は病気で寝たきりの父親を、10年間、ほとんど毎日のように父の家に通って、掃除、洗濯、食事の準備などをして療養看護に努めてきました。他の兄弟たちは、遠方に住んでいたため父の面倒は全く看ていなかったのですが、父が亡くなると、法定相続分どおりの分割を主張してきました。遺産分割にあたって、私の長年にわたる療養看護は考慮されないのでしょうか。
 民法は、相続人の中に、亡くなった人(被相続人)の生前における財産の維持や増加に特別に貢献をした者がある場合には、その相続人は遺産分割にあたって法定相続分を超える遺産を取得することができると定めています(904条の2第1項)。これを「寄与分」といいます。
 寄与分が認められるためには、まず、その相続人の貢献によって「被相続人の財産の維持または増加」という結果が生じたことが必要です。本問のような療養看護の場合、本来ならば付添婦を雇う必要があったのに、子や孫などの看護によって付添婦を雇わずにすみ、付添料の支払をせずにすんだというような場合です。
 また、寄与分が認められるためには、財産の維持増加に「特別の寄与」があったことが必要です。夫婦間の協力義務や親族間の扶養義務などの法律上当然の義務を尽くしただけでは寄与としては認められません。それ以上の特別の貢献が必要になります。
 本問の場合、療養看護の程度によっては子の父親に対する通常の扶養義務を超えた特別の貢献があったとして寄与分が認められる可能性があると考えます。判例では、重い老人性痴呆の母(被相続人)を10年にわたって看護した四女に、付添婦の費用に相当する1100万円余りの寄与分が認められた事例があります。
 なお、寄与分については、原則として相続人間の協議で定めるものとされています(民法904条の2第1項)。協議が調わないときや協議をすることができないときは、家庭裁判所に申立をしてその額を定めてもらうことになります(同条2項)。家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度や相続財産の額などの事情を総合的に考慮して寄与分の額を定めるものとされています。療養看護の場合、その寄与行為によって維持された財産の額がおおむね寄与分の額と認められる場合が多いと思いますが、相続財産に対する割合で寄与分が示されることもあります。
相続放棄は、いつまでに、どのようにしたらいいのでしょうか?
 人が死亡すると、その人(「被相続人」といいます。)の財産は一定の範囲内の親族(「相続人」といいます。)に引き継がれます。これが相続です。相続では、被相続人の借金などのマイナスの財産も引き継がれますので、相続が相続人に不利なときもあります。このようなときには、相続人が、プラスもマイナスも含め全ての財産を引き継がないとすることができます。これを相続放棄といいます。
 相続放棄をするには、自分のために相続が開始したことを知った時から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対し、相続放棄申述書という書面を提出する必要があります。この申述書の用紙は、各家庭裁判所に備え置かれています。また、戸籍謄本や住民票などの書類が必要となります。
 家裁裁判所が申述を受理する審判をすると相続放棄が有効とされますが、一度相続放棄をしてしまうと、原則として取り消すことができないため、放棄をするかどうかはよく考えて決める必要があります。
 上で述べた3ヶ月の期間を熟慮期間といいます。被相続人の財産を処分(相続財産である家を取り壊したり、売ったりした場合など)等した場合には、この期間内であっても放棄は認められませんし、そうでなくとも、この期間を経過してしまうと原則として放棄は認められないので注意が必要です。
 もっとも、相続財産が遠隔地にある、内容が複雑である等の理由で調査に時間がかかり、この期間内に放棄の決断ができない可能性がある場合には、熟慮期間の経過前に家庭裁判所に対し、熟慮期間の伸長を申し立てることができます。また、相続人が自己のために相続が開始したことを知った場合でも、相続財産(借金などの債務も含みます)の有無を調査することが著しく困難な事情(被相続人と相続人との生前の交際状態などから判断されます)があり、そのために相続人が相続債務等はまったく無いと信じたときなどは、相続債務等があることを知った時、又は知り得た時から3ヶ月以内であれば相続放棄の申述ができます。
 なお、相続が開始する前に相続放棄の申述をすること(事前放棄)はできません。また、相続人が、被相続人や他の相続人との間で事前に相続を放棄する旨の約束(契約)をしていたとしても、それは無効であると考えられています。
私は、夫と子供2人の4人で生活していましたが、先日、私の夫が亡くなりました。夫は、生前、貸金業者から多額の借金をしており、その返済をしていました。私や私の子供は、夫がした借金の返済をしなければならないのでしょうか。
1.借金も相続されます。
 質問の場合、相続人は妻のあなたと2人の子供ということになります。そして、夫が所有していた土地や夫の預金などのプラスの財産だけではなく、夫の借金といったマイナスの財産も相続されることになります。そのため、夫がサラ金から多額の借金をしていた場合、あなたやあなたの子供は、次に述べるような手続きをとらなければ、夫の借金も返済しなければなりません。
2.相続放棄によって借金の返済を免れることができます。
 借金も相続されますが、あなたやあなたの子供が、あなたの夫が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続を放棄する手続きをすれば、はじめから相続人でなかったという扱いになります。その結果、あなたやあなたの子供は夫の財産を相続しないことになりますから、夫の借金を返済しなくてもよいことになります。ただ、相続を放棄することでプラスの財産も相続できなくなりますので、注意してください。
3.場合によっては、夫の借金がすでに無くなっている場合もあります。
 貸金業者は、法律で認められている以上の利息をとっていた場合が多く、法律で認められた利息で借金を計算し直すと借金が相当減り、場合によっては利息の払い過ぎで業者からお金(過払金)を取り戻すことができる場合もあります。その場合には、相続放棄する必要もなくなるでしょう。
4.まずは、専門家に相談してください。
 相続するか、相続放棄するかについては、専門的な判断が必要となる場合があります。また、あなたやあなたの子供が相続放棄をする場合、夫の親などほかの人が相続人になってその人に影響を与える場合もあります。そこで、まずは、弁護士に相談することをおすすめします。