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労働(労働者側)問題についてのご質問

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私の勤務先は、2か月前から給料の遅配が続いていましたが、ついに倒産してしまいました。どうすればいいでしょうか。
従業員の給料債権には、一般先取特権といって、会社の総財産から優先的に支払を受ける権利があります。とは言っても、会社の倒産の場合は、そもそも会社資産がなかったり、資産に担保が付いているようなことが多いので、結局、会社からは給料を払って貰えないことも少なくありません。勤務先が倒産のおそれがある場合には、あらかじめ資産状況を調べて先取特権を行使する準備ができるとよいのですが、実際には難しいことが多いでしょうね。
 しかし、会社の倒産に際して、従業員の給料が支払不能の場合には「賃金の支払の確保等に関する法律」により、未払給料を労働者健康福祉機構に立て替えてもらう制度があります。
 倒産といっても、破産、民事再生など法律上の手続がとられている場合と、経営者が放置したり、行方不明になったままの事実上の倒産の場合とがあります。
 破産の手続がとられている場合には、破産管財人に未払金額等必要な事項を証明して、証明書を出してもらいます。
 事実上の倒産の場合には、まず、労働基準監督署長に、会社が事業活動を停止し、再開の見込みもなく、支払能力のない状態であることを認定してもらうことが必要です。そのうえで未払給料金額の確認申請を行います。
 そして、証明書や確認通知書の交付を受けたら労働者健康福祉機構に立替払の請求します。ただし、立替を受けられる限度額は、未払給料の8割で、その上限は、退職日の年齢により差が設けられており、30歳未満だと88万円、45歳未満だと176万円、45歳以上だと296万円です。会社倒産前に退職した従業員でも給料の未払があれば請求できますが、2年を経過していると認められません。なお未払賃金には退職金は含まれますが、解雇予告手当は含まれません。
 給料計算に必要な資料(賃金規定、過去の給与明細書、タイムカード等)等があると便利ですから、同じように未払の従業員がいる場合は協力しあって、最寄りの労働基準監督署に相談することをお勧めします。
最近、新聞などで残業代の未払いに関する記事を目にします。そこで、自分は残業代をきちんと支払ってもらっているのか不安になりました。残業代支払いの仕組みはどうなっているのでしょうか。
労働基準法は、1日8時間、1週間40時間を超える労働をさせた場合には、割増賃金(所定賃金の1.25倍以上)を支払わなければならないと定めています(37条)。これがいわゆる残業代です。
 もっとも、就業規則などで定められている所定労働時間を超えたとしても、上記法定時間内の残業であれば、割増残業代支払の対象にはなりません。
残業代が発生しない場合があるのでしょうか。
管理監督者などに該当する場合や変形労働時間制、みなし労働時間制が採用されている場合には残業代は発生しません。
 「管理監督者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい、該当するかどうかは名称にとらわれず、職務の内容や権限などから実体に即して判断されます。実際には、わが国で「管理職」と呼ばれる人たちの大半は、管理監督者に該当せず、管理職手当が支払われているからといって、残業手当の請求が出来ないということにはなりません。
 「変形労働時間制」とは、ある一定期間(変形期間という)を平均した所定労働時間が週法定時間(40時間)以内であればよいとする制度で、「みなし労働時間制」とは、実労働時間のいかんにかかわらず、予め定められた一定の「みなし時間」を実労働時間とすることを認める制度です。いずれも厳格な要件の下、週40時間1日8時間労働の例外として認められ、この場合には残業代は発生しません。
支払ってもらっていない残業代があるのですが、どのようにすればいいでしょうか。
直接使用者に対して請求して支払ってもらうことが一番望ましいことですが、労働組合があればそこに相談して使用者と交渉してもらうという方法も考えられます。直接交渉が難しく、頼りになる労働組合もない場合には、労働基準監督署や弁護士に相談されることをお勧めします。残業代請求の時効は2年ですので、早めの行動が必要です。
 愛知県弁護士会では現在、名古屋法律相談センターにおいて法律相談を実施しており、毎週特定曜日に「労働問題集中相談日」を設け、労働問題に関心の深い弁護士を配置しております。予約電話番号は、052-565-6110です。原則として予約制・面談制の法律相談となっておりますので、まずはお電話でご予約ください。
私は、病院でパートタイムの看護師として1年の契約期間の更新を繰り返し、6年間勤務しています。しかし、雇い主に対し介護休業を取りたい旨伝えたところ、雇い主から契約更新の際「今度は契約の更新をしない。」と言われました。仕事を辞めなければならないのでしょうか。
まず、そもそもパートタイム労働者が介護休業を取得可能かどうかですが、日々雇いを除く労働者は介護休業が取得できるのが原則であり、期間の定めのある労働者であっても、①同一事業主に引き続き1年以上雇用され、②介護休業開始予定日から起算して93日経過日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる場合には、介護休業を取得可能であるとされています。
 では、本題の期間の定めのあるパートタイム労働者は、雇い主が契約更新を拒絶した場合に応じなければならないかについてお答えします。
 まず、雇い主はパートタイム労働者を雇入れる場合、労働者との間で雇用期間について合意をするのが通常ですが、この雇用期間の定めをした場合で、仕事の性質上、一時的、臨時的及び季節的であることが明らかな場合は、契約期間の満了に伴い、雇用契約も終了します。
 他方、短期間の契約期間の定めがある場合でも、仕事の性質や従前の契約更新の経緯から、今後の契約更新がある程度期待されていたような場合には、契約の更新拒絶は、客観的合理的な理由がなければ許されません。
 あなたの場合、看護師として勤務しており仕事の性質上一時的臨時的なものではなく、また、1年契約の契約を6回更新し6年間勤務を継続していることから、今後の契約の更新がある程度期待されていたと考えられます。そして、あなたは6年間勤務しているため、上記②の条件を満たす場合には介護休業は取得可能です。そこで、雇い主があなたの介護休業取得を理由として更新拒絶をするのであれば、その更新拒絶は客観的合理的な理由を欠くと考えられますので、更新拒絶をすることは許されません。したがって、あなたは仕事を辞める必要はありません。
「労働審判制度」とはどんな制度なのですか?
労働審判制度は、企業と個々の労働者の間の権利義務に関する労働紛争について、調停による解決を試みつつ、それで解決できない紛争については、権利関係を踏まえて事案の実情に即した解決案(労働審判)を定める裁判手続です。
今までは、労働関係の個別紛争を解決する制度はなかったのですか?
従来、民事訴訟(仮処分を含む)や都道府県労働局による助言指導・あっせんの制度などがありましたが、前者は解決までに長期間を要し、後者は当事者の自主的解決を促すだけです。労働審判制度は、これらのデメリットを克服するために創設されました。
「労働審判制度」には、どのような特色があるのでしょうか?
労働審判制度の特色は3つに集約されます。第1は迅速な解決です。原則として、3回以内の期日(3~4か月程度)で結論が出ます。第2は専門的な解決です。労働審判官(裁判官)とともに、労使問題の実務経験に富んだ専門家である労働審判員が審理・判断に加わり、専門的な解決が行われます。第3は事案の実情に即した解決です。例えば解雇に関する紛争については、通常訴訟においては、結論は解雇が有効か無効かのいずれかしかありませんが、労働審判においては、その実情に合わせて金銭給付の額で調整したり、一定の条件下で雇用を継続したりといった柔軟な解決が可能です。
「労働審判制度」は、どのようなイメージで審理が進むのですか?
第2回期日までに当事者は主張立証を終了します。労働審判委員会は、随時調停案を示すことができ、第3回期日にも調停が成立しない場合、労働審判を行います。
職場におけるセクシュアル・ハラスメントの問題について知りたいので教えてください。
セクハラとは何かという点については、簡単にいいますと、「職場における相手方の意に反する不快な性的言動」を言います。セクハラには大きくわけて、対価型と環境型があります。対価型とは、例えば、査定を良くしてあげるからと言って交際を強く求める場合や、女性の胸や腰を触ったところ、女性が抵抗したため腹いせにその女性を解雇する場合のように、性的言動に対する女性の対応によって女性を職場で不利益に扱うケースを言います。他方、環境型とは、女性従業員の抗議にもかかわらず、職場で卑猥な話をしたり、ヌードポスターを貼ったりするなど、性的な言動により労働者の就業環境を悪化させるケースを言います。
例えば、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、性的な関係を強要すること、必要なく身体に接触することなどです。
職場の忘年会での出来事もセクハラになるのですか。
なり得ます。セクハラの起る時間や場所という点では、必ずしも会社内や就業時間内に限りません。アフターファイブに社外の飲食店で行われる忘年会であっても実質上職務の延長と考えられる場合にはセクハラになり得ます。同様に、取引先や出張先、移動中、ゴルフコンペなどのレクリエーションもなり得ます。むしろ社外の方が、気が緩んでセクハラが起りやすいので、ご注意下さい。
セクハラの被害者は女性だけですか。
いいえ、男性も被害者になり得ます。ただ、実際には男性から女性へのセクハラが起りやすいのも事実です。
セクハラの被害者は正社員だけですか。
いいえ、正社員とは限りません。アルバイト、パート、契約社員、派遣社員など、広く職場で働いている人は被害者になり得ます。
いいえ、正社員とは限りません。アルバイト、パート、契約社員、派遣社員など、広く職場で働いている人は被害者になり得ます。
あなたの従業員の地位、労働条件が、事業譲渡に伴って当然に譲受会社でも維持されるか否か(雇用契約も譲受会社に引き継がれるか)については、比較的最近の裁判例では否定するものが多く、異論はありますが、譲受会社が譲渡会社の雇用契約を当然に承継することはないというのが一般的な考え方です。
 従業員としての地位および労働条件が譲受会社でも維持されるためには、①今のあなたの会社(譲渡会社)と譲受会社との間の従業員を承継する旨の合意と、②従業員であるあなたの同意が必要となります(例外的な場合はありますが、ここでは省略します)。
 これは、合併や企業分割という「組織の変更」と異なり、事業譲渡は個々の事業用財産やこれに付随する取引先を含む権利義務の承継という「取引」なので、取引の内容は自由に定められるはずという理由によります。どの権利義務を承継するかは、譲渡会社と譲受会社の合意によって内容が決まるのです。
 他方、従業員側から見ても、勝手に雇い主を変えられても困るので大きな利害関係があることになります。そこで、民法625条は雇用契約の移転には労働者の同意を必要と定めており、雇用契約の移転(承継)には従業員の同意も必要となります。

譲渡会社と譲受会社の間で雇用契約を承継する合意がない場合には、雇用契約は従業員と譲渡会社との間で存続したままになります。譲渡会社は、事業を譲渡したことにより余剰人員を抱えることになりますので、従業員を解雇せざるを得なくなる可能性があると考えられます。他方、譲受会社は、譲り受けた事業を行うために従業員を新たに雇用する必要があるでしょう。しかし、雇用契約を承継する合意がない以上、この雇用契約は従業員と譲受会社との間で締結する新たな雇用契約となります。したがって、その労働条件は従前のもの(譲渡会社との間における労働条件)と異なる可能性があります。反面、新たな雇用契約を締結するわけですから、譲渡会社から解雇された従業員は、譲受会社に雇われるか否かを決めることができます。
なお、譲渡会社と譲受会社との間の従業員を承継する旨の合意は、暗黙の合意でも認められます。多くの従業員が譲受会社に採用されているのに、特定の従業員だけ採用されないケースでは、暗黙の承継合意があったのではないかが問題とされることがあります。事業譲渡後に紛争になる危険を冒すよりも、事業譲渡を実行される前に弁護士に相談されることをお勧めします。