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高齢者・障がい者についてのご質問

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遠方にひとりで住んでいる80歳の父がいるのですが、最近認知症が進み、高額で不必要な商品ばかりを買うトラブルが続いています。今後、どうしたらいいのでしょうか。
厚生労働省によれば2012年の時点で認知症の高齢者の方は全国に約462万人おられ,約10年で1.5倍程度に増えるという見通しですが、認知症が進んでいくと、正しい判断に基づいた物品の購入などがだんだん困難になってきます。
 民法は、このような判断能力が不十分な人の権利を守るために「成年後見制度」を用意しており、対象者の判断能力の程度に応じて、「後見」、「保佐」、「補助」という3つの制度を用いることができます。
 「後見」とは、常に判断能力が欠けている方の場合に利用され、本人の日常生活に関する小額の取引以外は、全て成年後見人が本人に代わって行ないます。「保佐」とは、判断能力が著しく不十分な場合に利用され、本人が借金や家のリフォーム契約など一定の行為をする場合には、保佐人の同意が必要とされます。「補助」とは判断能力が不十分な場合に利用され、「保佐」の場合よりも更に限定された取引について補助人の同意が要求されます。そして、成年後見人等は、本人が成年後見人等の同意なしに行なってしまった契約等を取り消すことができるので、本人を不当な契約から守ることができます。
 これらの制度を利用するには、判断能力の程度を検討の上、本人や親族等が家庭裁判所に申立てをなし、そこで成年後見人等が選任される必要があります。また、成年後見人等には、家庭裁判所が事案の性質等を考慮して適切な人や法人を選任することとされています。成年後見人等は,本人の意向,事案の内容に即し,裁判所が,本人を支援するうえで,適格であると考える者を選任することから,必ずしも親族に限定されず,むしろ,弁護士や司法書士が後見人に選任されるケースが増加しています。今回のように親族が遠方に居住している等本人の事務を処理することが困難な場合には、弁護士等が後見人に選ばれることが多いと思われます。
 最近、判断能力の不十分な高齢者の方を狙いにしたと思われる悪徳商法が横行し、一度被害にあった方が続けて被害にあうケースも多発しており、早めの対処が必要かと思われます。まずは、愛知県弁護士会の法律相談センタ-やお近くの家庭裁判所に相談され、この制度の利用を検討してみて下さい。
成年後見制度について教えて下さい。
1.成年後見制度とは
 成年後見とは、認知症・知的障がい等のために契約などの法律上の行為を行うための判断能力を欠く常況にある方について、裁判所が後見人を選任し、その判断能力を補う制度です。
 この制度は大きく分けて法定後見制度と任意後見制度に別れます。法定後見制度の場合、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長が後見開始の審判を申し立てると、家庭裁判所は本人が精神上の障害により判断能力を欠く常況にあると認める場合には後見開始の審判をし、後見人を選任することになります。
 なお、判断能力の程度によって、後見のほか保佐・補助の制度も準備されています。
これに対して,任意後見制度とは,判断能力が低下する前に,予め,財産管理や身上監護を担当してくれる方(任意後見人)後見人)を契約により選んでおく制度です(判断能力低下後,裁判所が任意後見人を監督する人(任意後見監督人)を選任することにより効力が発生します。
2.成年後見人の職務
 成年後見人は、判断能力を欠く常況にある本人にかわって、預金の管理、不動産の売買・賃貸借契約、施設入所契約といった本人の財産に関する法律行為全てを行うことができます。また、本人が自分でした契約等を取り消すこともできます(ただし、日用品の購入、光熱費の支払等の日常生活に関する行為を除く)。
 成年後見人は、その職務の遂行にあたっては本人の身上について配慮しなければならないとされています。
3.成年後見制度の今後
 福祉サービスを受けるために契約の締結が必要となったこともあり、判断能力を欠く常況にある本人を支援するために法定後見の申立は増加の傾向にあります。具体的な申立方法や費用等については、愛知県弁護士会高齢者・障害者総合支援センター「アイズ」へご相談下さい。
 成年後見制度は本人の財産管理に重きをおいた制度であることから、成年後見のみで事足りるというものではなく、身上監護を含め本人の生活全体をサポートするシステムの一つとして位置づけていく必要があります。また、ご自分のことはご自分で決めるという考え方(自己決定権の尊重)からすれば、今後は、法定後見制度の利用だけではなく、任意後見制度を積極的に利用することが望ましいと言われています。
 愛知県弁護士会では高齢者・障がい者支援センターを設置し、会の監督の下、専門の弁護士が財産管理契約、任意後見契約にあたる取組を実施、利用しておりますので、併せて、ご相談・ご利用ください。