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~弁護士を活用してみませんか~
「教員と弁護士の奇跡のコラボレーション」!

教員向け主権者教育セミナー
~弁護士を活用してみませんか~
「教員と弁護士の奇跡のコラボレーション」!

会報「SOPHIA」 平成30年3月号より

法教育委員会 委員
大 杉 浩 二

1 教員向け主権者教育セミナーの趣旨
 公職選挙法改正により平成28年から選挙権年齢が18歳に引き下げられ、学校現場でも「主権者教育」が大変注目されています。
 学校教員の方へ、主権者教育とは具体的にどのような授業なのか、主権者教育における弁護士の活用方法を理解していただくために、主に小中学校教員、教育関係者を対象として、3月17日に本セミナーを開催しました。


2 第1部 実践例報告及び講評
 第1部では、中学生向けプログラムとして名古屋市立楠中学校の森智成教諭から「沖縄米軍基地名古屋空港移転計画の是非」をテーマとした授業の報告がなされました。生徒が、沖縄県民、愛知県民、日本政府の立場に分かれ、各立場から肯定派・否定派として、理由発表、反対側への質問、反論を行いました。「反対する愛知県民の自己決定権が害されてもいいのか」「沖縄県民の自己決定権が害されている中で、現状が法の下に平等といえるのか」という生徒の議論映像には会場から感嘆の声があがっていました。同授業には複数の弁護士が参加の上、各グループの議論の補助をしました。また、弁護士が各立場に分かれた上での模擬討論も行いました。
 実践例報告を踏まえ、名古屋市教育委員会指導室の渡辺範人指導主事から講評がなされました。主権者教育においては、積極的に現実の政治的課題を取り上げる必要があるが、実践例のように弁護士が複数関与することで政治的中立性が担保できる、教員と弁護士とが共に授業を作ることが重要であり、この実践例を含め、これまでの教員と愛知県弁護士会との関係は「教員と弁護士の奇跡のコラボレーション」である、といった講評を戴きました。


3 第2部 グループディスカッション
 第2部では、小学校教員と中学校教員とで複数の班に分かれ、弁護士と議論をしました。議論では、第1部にて中学生向けプログラムと並んで細溝耕太郎委員から報告された当会平成29年サマースクールの「憲法とアリとキリギリス」(寓話を元に弁護士が寸劇を行い、多数決の限界や立憲主義について考えてもらうもの。福井弁護士会原案。詳細は会報平成29年8月号サマースクール特集記事をご参照ください)について、小中学校の授業として実施する場合の授業案、弁護士の活用法がテーマとされました。
 私が参加した小学校教員との議論では、(弁護士側は科目を「社会」としか想定していなかったところ)教員側から小学校では「社会」よりも、多様な価値観を理解し、多面的・多角的に考え判断する能力を養うという点で「道徳」がより適しているという意見がありました。小学校にて、アリとキリギリスを素材にした主権者教育の共同授業を実践しようという具体的な話にも進展しました。


4 おわりに
 「教員向け」セミナーと題しましたが、主権者教育での政治的中立性の担保についての弁護士の役割への期待、実践する場合の教員側の視点など、本セミナーは弁護士側が教員から学ぶ貴重な機会となりました。