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決議不存在確認の訴え

中部経済新聞2014年08月掲載 
決議不存在確認の訴え

【質問】

 私はA社の株主です。先日,A社の株主総会決議により私の息子が取締役から解任されていたことを知りました。しかしながら,私は株主総会の招集通知さえ受け取っておらず株主総会に出席しておりません。私のいないところで勝手に決められた株主総会決議に納得できません。株主総会の決議を争うにはどのような方法がありますか。

【回答】

 株主総会の決議の効力を争う訴訟には,株主総会決議取消の訴え,株主総会決議不存在確認の訴え,株主総会決議無効確認の訴えがあります。前回は,決議取消の訴えについてご説明しましたので,今回は,決議不存在確認の訴え,決議無効確認の訴えについてご説明します。

【決議不存在確認の訴え】

 株主総会がなされた外観はあるけれども、実際にはそのような株主総会決議が行われていない場合や、招集手続きや決議の方法の瑕疵の程度が著しく,法律上株主総会自体の存在を認めることができない場合には,決議不存在確認の訴えをすることができます。

 例えば,株主総会の議長としての資格がない者の下で採決された決議について決議不存在が確認された裁判例等があります。ご質問の件が,実際には株主総会を開いていないのに,議事録だけ作成して,取締役を解任しているようであれば,決議不存在確認の訴えをすることができます。前回ご説明しました決議取消の訴えとは異なり,この訴えに期間の制限はありません。

【決議無効確認の訴え】

 ご質問の件には当てはまりませんが,欠格事由のある者を取締役や監査役に選任する決議など,株主総会の決議内容が法令に違反する場合は、決議無効確認の訴えをすることができます。この訴えにも期間の制限はありません。

【株主総会の重要性】

 会社法では株主総会で決議すべき事項や株主総会の手続きが厳格に定められています。

 しかし実際には必ずしも株主総会が適切に開かれていないケースもあるようです。ご相談のように決議を争われることになると会社の負担も大きくなります。同族会社でも親族関係の悪化により過去の株主総会決議が争われる事例が散見されますので,適切に株主総会を運営していただく必要があります。ご注意ください。