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中部経済新聞2012年1月掲載 紛争解決センターの利用

弁護士 社長、今日は何の相談ですか。
社長 実は、建物建築の工事を請け負って、引き渡したのだけど、いろいろと細かなクレームを言われて、請負代金を支払ってもらえないんだ。裁判をしなければいけないのかな、と思って相談にきました。
弁護士 では、愛知県弁護士会(以下、弁護士会)の紛争解決センターにあっせん・仲裁の申立てをするのはいかがでしょうか。
社長 紛争解決センター?何ですか、それは。
弁護士 紛争を、簡単な手続で、早く、しかも公正に解決することを目指して、弁護士会が主宰している紛争解決機関です。紛争の当事者の一方が申立てをし、相手方が手続に応じれば、弁護士のあっせん・仲裁人が双方の言い分をよく聞いて、話し合いでの解決を目指すというものです。
社長 裁判所の調停と似てますね。

調停との違い

弁護士 調停と異なるのは、あっせん・仲裁人として全て経験豊かな弁護士が入るという点と、仲裁判断を求めることもできるという点です。
社長 仲裁判断って何ですか。
弁護士 当事者双方が仲裁人に判断を委ねることを合意すれば、仲裁人が第三者の立場で解決案を示し、双方がこれに従って紛争を終わらせる手続です。
社長 いわば、双方の合意に基づいて、あっせん・仲裁人が判決をするようなものですね。
弁護士 そうですね。

強制執行はできるの?

社長 裁判所での調停による和解や判決であれば、その後、相手が約束を守らなかった場合、強制執行ができると聞いていますが、紛争解決センターのあっせん・仲裁はどうですか。
弁護士 紛争解決センターの場合も、仲裁であれば強制執行ができますが、和解では強制執行ができません。ただし、分割弁済を合意した和解の場合には、名古屋簡易裁判所における即決和解、名古屋家庭裁判所における即日調停により強制執行ができるように手続のご案内をしています。

費用は?

社長 費用はどのくらいかかるのですか。
弁護士 申立費用は税込1万500円です。相手方が不出頭なら半額は戻ります。また、成立した段階で成立手数料が必要です。成立手数料は、解決金額に応じて異なりますが、例えば、解決金額が100万円であれば成立手数料は6万7200円、1000万円であれば26万8800円で、原則として、申立人と相手方が折半で負担することになります。

どのような事件を取り扱うの?

社長 当社のような、建築紛争も取り扱ってくれるのですか?
弁護士 紛争解決センターでは、話し合いによる解決の可能性があれば、原則としてどんな紛争でも扱います。平成22年10月からは、弁護士会と協定を結んでいる金融機関と顧客との間の金融商品やサービスに関する紛争を特別な手続で解決する金融ADR制度もスタートしました。
また、紛争解決センターでは、各分野に詳しい弁護士をあっせん・仲裁人に選任していますし、専門性のある事件では、建築士や医師等の専門家があっせん・仲裁人や専門委員として手続に関与しています。実際、平成22年に受理した事件241件のうち、医療事故紛争は36件、建築紛争は20件ありました。相手方があっせん・仲裁手続に応じた割合(応諾率)は医療事故紛争が73%、建築紛争が65%で、このうち実際に紛争が解決した割合(解決率)は、医療事故紛争が52%、建築紛争が50%となっています。ちなみに、紛争解決センターの受理事件全体の応諾率は67%、解決率は61%となっています。
社長 私の友人は今離婚話で奥さんと揉めていますが、そんな事件でもよいのですか。
弁護士 それも可能です。
社長 離婚の場合は、裁判所で調停をしないと訴訟できないと聞きましたが、その点はどうなんでしょうか。
弁護士 問題ありません。弁護士会の紛争解決センターは平成20年にADR法による法務大臣の認証を受けたので、紛争解決センターで話し合ったけれど不調となった場合は、裁判所での調停が不調となった場合と同じく、引き続いて離婚の訴訟を起こせるようになりました。また、この認証を受けたため、紛争解決センターに対する申立により、消滅時効が中断するという効果も認められるようになりました。

手続の特徴

社長 簡単な手続、ということだけど、裁判と比較して、どんな特徴があるのですか?
弁護士 まず、申立手続が簡単です。定型的な申立書式は弁護士会のホームページからダウンロードできます。法律的に整った文章でなくても、申立の趣旨と理由を簡潔に記載していただければ結構です。「相当額の支払を求める」とか、「相当な解決を求める」といった申立も可能です。会社の内紛などだと、訴訟になれば複数の申立てをしなければなりませんが、このような事件を一挙に解決することも可能です。また、管轄の定めがありませんので、当事者双方が愛知県外であっても利用できます。
社長 申立手続が簡単なのはわかりましたが、手続が始まってからはどうなんですか。
弁護士 開催の時間、場所に配慮したり、手続を柔軟に進めるなどしています。期日は、原則平日の午前10時~午後4時の開催ですが、事案や当事者の都合に合わせて、土日や時間外にあっせん・仲裁人の事務所で開催することもあります。また、当事者が遠隔地にいる場合、電話やFAXを利用して期日を開催することもできます。
社長 そうすると、解決までに要する時間はどのくらいなのでしょうか。
弁護士 事案によって異なるので一概には言えませんが、平成22年解決事件の平均審理日数は受理日から121日、第1回期日から76日、平均審理回数は3回でした。
建築紛争等では、弁護士や建築士が早い段階で現地へ足を運んでくれることも多く、それによって柔軟かつ妥当な解決を早く導くことができた実績もあります。社長の今回の事件の解決には適していると思いますよ。
社長 それなら、利用してみますよ。

お問合先

愛知県弁護士会紛争解決センター(愛知県弁護士会館2階)
電話(052)203―1777 【MAP】

愛知県弁護士会西三河支部紛争解決センター(西三河支部会館)
電話(0564)54―9449 【MAP】

いずれも、受付時間は平日の午前10時から午後4時まで。

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