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犯罪被害に遭ったとき何ができるか ~Q&A~

質問文の上でマウスをクリックしていただくと、回答が見られます。

〔現在受けている被害について〕

〔加害者に対する要求について〕

〔犯罪捜査について〕

〔被害者参加制度について〕

〔刑事裁判・少年審判について〕

〔公的な補償について〕

〔報道被害〕

〔現在受けている被害について〕

1 嫌がらせやつきまといをやめさせるにはどうしたらよいのか
 いわゆるストーカー防止法にいうつきまとい等に該当する場合には、警察署長に申し出て、警告を出してもらうことが出来ます。なおも相手方がつきまとい等を止めない場合には、公安委員会、警察本部長が禁止命令を出すことも出来ます。また、2016年の改正で警告や警告違反を経なくとも、禁止命令を出すことも出来るようになりました。そして、禁止命令等に違反してストーカー行為をした者や禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます。
2 被害届を出す前にどんな準備をしたらよいか
 被害届は、犯罪の被害にあったことを警察に通知することです。従って、被害の内容がどのようなものであったのかを明らかにする必要があります。具体的には、何時、どこで、どのような被害にあったのかを特定する必要がありますので、届け出の前に記憶を整理しておくと良いでしょう。このほか、物を取られたのであれば何を取られたのかを特定する必要がありますし、怪我をさせられたのであれば、医師の診断書などを用意すると良いでしょう。
3 犯人がわからないときはどうしたらよいか
 被害届は、あくまで被害にあったことを警察に通知するだけですので、犯人が分からなくても全くかまいません。むしろ、泥棒被害にあったような場合には、犯人が分からないのが通常です。
 なお、被害届のほかに、犯人を処罰して欲しいと申し出ることを告訴といいますが、告訴の場合でも、犯人が分からないまま告訴をすることも出来ます(この時は、被告訴人不明などと記載します)。

〔加害者に対する要求について〕

4 犯罪が起きたとき、加害者はどのような責任を負うのか

 加害者が負う責任としては、①刑事上の責任、②民事上の責任、③行政上の責任があります。

  • ①刑事上の責任とは、犯罪を行った加害者に対して、国家機関が刑罰を科すことをいいます。 具体的には、捜査機関が加害者を逮捕・勾留して取り調べた上、犯罪行為の内容を確定して、裁判所に処罰を求めます(これを「起訴」といいます)。この起訴によって、裁判がはじまり、裁判所での裁判(審理)の上、裁判所において、加害者に対して、懲役・禁固や罰金などの刑罰が科されることになります。刑事上の責任追及は、被害者本人ではなく、捜査機関が行いますが、被害者が加害者に対して刑事上の責任を追及したい場合(処罰を求めたい場合)には、警察や検察庁に「告訴」をすることができます。また、被害者は、証人として証言したり、被害者として意見を陳述するなどの形で、加害者の刑事裁判に関与します。
  • ②民事上の責任とは、加害者が、犯罪によって被害者が受けた損害を賠償することを言います。民事上の責任追及については、国家機関(警察や裁判所等)は関与することができませんので、被害者自身が加害者に対し、損害賠償請求をしなければなりません。損害賠償請求においては、加害者のどのような行為によってどんな損害を被ったか(精神的な苦痛も含めて)を、被害者が立証する必要があります。
  • ③行政上の責任とは、交通事故などの場合の免許停止処分や、公務員が犯罪を犯した場合の懲戒解雇処分などを言います。
5 告訴をしたいのだが、どのような手続をすればよいのか
 犯罪の被害者が加害者の処罰を求めることを告訴といいます。告訴は、多くの場合警察長に対して行いますが、検察庁に直接告訴をすることも出来ます。
 告訴は、口頭でも文書でも行うことが出来ますが、実際には文書の作成を求められます。
 しかし、一般の方が告訴状を作成することは困難であり、弁護士に相談することをお勧めします。但し、親告罪(告訴がなければ刑事事件として起訴できない種類の事件)については、事実上警察がその書き方を教えてくれます。
6 加害者に謝罪を求めたい
 残念ながら、被害者から加害者に対する法的な請求権としては金銭的な損害賠償請求が認められているのみであり、加害者に対し法的に謝罪を求めたり強制したりすることはできません。
 ただ、刑事手続や示談交渉の中で、加害者本人から直接、あるいは代理人である弁護士を通じて謝罪を受けられることもあります。
 また、弁護士会のあっせん・仲裁制度を利用することも考えられます。「あっせん・仲裁」とは、あっせん・仲裁人が当事者双方の言い分をきいたうえで話し合いにより紛争を解決できるよう仲介をしたり、あるいは最終的な判断をしたりする制度です。民事裁判手続では加害者に対し金銭的な損害賠償しか請求することができませんが、あっせん・仲裁手続であれば必ずしも法律にしばられず、実情に応じた柔軟な解決が可能ですので、加害者側に金銭賠償だけではなく謝罪も求めることが考えられます。
7 加害者の責任を追及した場合の報復が怖いが、どうすればよいか

 加害者の報復をおそれて、加害者の刑事裁判で証言をしたり、民事裁判で加害者の責任を追及したりすることをためらわれる方は多いと思います。また、報復に備えて、加害者がいつ社会に出てくるかを知りたいかたも多いと思われます。

(1) 刑事上の責任追及に関して

 まず、捜査段階においては、警察や検察に相談して頂ければ適切な対応をしてもらえます。
 刑事裁判の場合、証人として加害者の刑事裁判に出頭すると言うことは精神的負担が大きいものです。特に、加害者を前にして証言するということは、多大なプレッシャーがかかり、言いたいことが言えなかったり、さらなる精神的苦痛を受けるおそれもあります。そこで、証人の不安感を緩和するために、証人への付添(刑事訴訟法157条の2、316条の39第1項)、遮蔽措置(157条の3、369条の39第4項)、ビデオリンク方式(157条の4、369条の39第5項)、被害者特定事項の保護(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項を被告人や傍聴人に知られないようにする制度(290条の2第3項、295条3項、299条の3、305条))などの制度があります(制度の詳細については、語句説明のページをご参照下さい。)。
 具体的にどのような方法がとられるかは、証言する人の年齢や心身の状態その他を個別的に考慮して決められますので、担当検察官とよく相談されるとよいでしょう。

(2) 民事上の責任追及に関して

① 訴状に住所を記載しない取り扱い

 加害者からの報復が怖くて、損害賠償をためらうこともあるでしょう。確かに、裁判所に訴えを起こす場合、訴状に住所地を記載することが原則となりますので、加害者が住所を知って家にやってくるのではないか、という不安を持つ方も多くいらっしゃると思います。
 ただ、犯罪被害者等については、実際の住所地を知られることでその生命または身体に危害が加えられることが予想される場合(いわゆるお礼参りのおそれがある場合)など、実際の居住地を記載しないことについてやむを得ない理由があれば、仮の住所として、その場所に連絡をすればあなたに連絡がつく場所等の相当な場所(代理人弁護士の事務所所在地など)が記載されていれば、実際の住所地の記載を厳格には求めないという取り扱いがなされています(最高裁通知)。

② 民事訴訟における付添、遮蔽、ビデオリンク

 民事訴訟においても、刑事事件と同様に、付添、遮蔽、ビデオリンクなどの措置を求めることができます(民事訴訟法203条の2、203条の3第1項、同2項、210条、211条)。

(3) 出所情報

 加害者が実刑にはなったものの、出所後の対応を考えておかなければならない場合もあります。受刑者である加害者が出所するのは、原則としては実刑の期間が満了するときですが、実際には、刑期満了前に出所する仮出獄制度がありますので、刑期満了以前に出所することがほとんどです。
 出所情報を知るには、検察庁に受刑者釈放通知希望申出書を提出することにより、加害者の出所時期を知らせてもらえる被害者等通知制度があります。従来は、処分結果や裁判結果、出所情報等の通知にとどまっていましたが、平成19年12月より、制度内容を拡充し、加害者の受刑中及び少年院在院中のの処遇状況に関する事項や仮釈放・仮退院等に関する事項、保護観察中の処遇状況に関する事項等についても関係機関から通知されることになりました(詳しくは、Q12,13,14をご参照ください。)。
 なお、このような申し出がされた場合でも、受刑者の更生を妨げるおそれがあるなど通知することが相当でないときには、通知が行われないこともあります(被害者等通知制度実施要領)。

8 加害者に損害賠償請求したい

 刑事裁判の手続き中に、加害者本人や加害者の代理人である弁護士から、被害者が受けた被害についてお金で弁償したいという申し出(被害弁償といいます)を受けることがあります。この場合には、加害者本人や弁護士と話し合って、賠償の金額を決定することができます。賠償額について折り合いが付いた場合、刑事裁判の中で、書面に残すこともでき(刑事和解)、刑事裁判の調書に内容を残すことで、仮に加害者が支払ってこない場合に、調書を利用して、強制執行の手続きを取ることが可能です。但し、この場合には、被害者に被害弁償をしたということが、刑事裁判において、加害者に有利な情状となります。被害弁償の申し出がない場合や、仮にあったとしても金額等について納得がいかない場合は、被害者の側から、損害賠償請求(民法第709条)をすることができます。

 以下、損害賠償請求の方法を説明します。

① 民事調停・あっせん仲裁

       これは、中立の第三者に間に入ってもらって話し合いをし、金額面などで折り合いがついた場合に、その内容での被害弁償を受けることができるというものです。民事調停は簡易裁判所で、あっせん仲裁は弁護士会の紛争解決センターで、それぞれ行われます。申立にかかる費用などに違いがある他、あっせん仲裁は夜間や休日に行うなど柔軟な運用ができる場合があります。どちらも折り合いがつかなければそこで終了となります。  
       民事調停については簡易裁判所の、あっせん仲裁については日弁連や弁護士会の、各ホームページ等で詳しい説明をしておりますので、参考にされて下さい。

② 民事訴訟(裁判)

       裁判官が証拠によって事実を認定し、金額等も含めた最終的な結論を出してくれるものです。話し合いが付かなくても必ず事件を解決してもらえるという強制力があります。
       これら①②は、話し合いか強制的な解決かという違いはありますが、どちらも、被害者自身で、刑事裁判とは別に、調停の申立や訴訟提起をする必要があります。 

③ 損害賠償命令制度 (犯罪被害者等基本法第12条)

       これは、刑事裁判の成果を利用して、被害者の受けた被害についての損害賠償請求についても審理する手続です。具体的には、被害者が、加害者の刑事事件が行われている地方裁判所に対して、損害賠償請求の申立をすると、申立を受けた裁判所は、刑事事件の判決(懲役〇年など)をした後に、被害者からの請求(お金を払え)について審理を行い(原則4回以内)、加害者に損害賠償を命じます。これまでの民事訴訟手続(②)では、刑事裁判とは全く別の裁判官が、損害賠償請求が認められるかどうか、損害賠償の金額などを決定していましたが、この損害賠償命令制度を利用すれば、刑事事件を担当した裁判所が、刑事事件の成果を利用することができるため、より簡易・迅速に損害賠償請求ができるよう。申立費用も、請求額に関わらず2000円と、利用しやすく設定されています。但し、損害賠償命令が出せる犯罪は、被害者参加のできる犯罪(詳しくはQ1を参照して下さい)のうち、わざと人を死なせたなどの故意犯に限られています。また、どちらかが結論に不服を持ち、異議の申し立てをした場合には、通常の民事訴訟(②)の手続に移ります。なお、通常の民事訴訟の手続に移行した場合は請求金額に応じた印紙額を追加で納める必要があります。
         このように、損害賠償請求の方法はいろいろありますが、どの手続を利用するかについては弁護士に相談されることをお勧めします。
         なお、加害者に所有財産や支払能力がない場合には、賠償を受けられる判決を得ても現実の支払を受けられないこともあります。
    9 事件から長期間が経過してしまっているが、損害賠償請求はできるか
     加害者に対して損害賠償請求をする場合に注意しなければならない点として、時効の問題があります。不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間は3年とされています。
     ただし、この3年間は、犯罪が行なわれた時点から起算するのではなく、被害者が、損害の発生の事実と加害者が誰であるかを知った時から起算することとされています。したがって、事件は発生しても、犯人が誰であるか分からない間は、時効期間は進行しません。また、具体的な損害が発生していない間も、その損害についての賠償請求権の消滅時効期間は進行しません。
     例えば、小学生のころに受けた性被害が原因で、十数年後にいわゆるPTSD(外傷後ストレス障害)により、自殺未遂をするに至った事例で、消滅時効の起算点を性被害に遭った時点ではなく、自殺未遂を図った時点と認定して、加害者の消滅時効の主張が排斥された例があります(札幌地方裁判所平成15年3月31日判決)。
     また、仮に消滅時効期間が経過した場合であっても、加害者が消滅時効を援用することは、権利の濫用として許されないとの判断が多く見られます。
     このほか、消滅時効とは異なる概念として、不法行為時から20年の経過によって、損害賠償請求権が消滅すると定める除斥期間と呼ばれる概念もありますが、これについても、解釈によって、不法行為時から20年以上経過した後の請求を認める裁判例が出されています(最高裁判所平成10年6月12日判決、大阪高等裁判所平成13年4月27日判決など)。
     人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については損害及び加害者を 知った時から5年以内 であり、かつ、不法行為の時から 20 年以内であれば権利行使をすることが可能です。2020 年 4月1日の時点で改正前の民法による不法行為の消滅時効(「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」)が完成していない場合には、改正後の新しい民法が適用されます。
     以上のように、犯罪被害の発生から相当の期間が経過している場合でも、加害者に対する損害賠償請求は不可能とは言い切れませんから、損害賠償請求をお考えの場合は、あきらめずにご相談ください。

    〔犯罪捜査について〕

    10 今後の刑事手続について知りたい
     刑事裁判・少年審判の手続についてのフローチャートとその用語解説をご覧下さい。
    11 警察署、検察庁から呼び出されたが、どうしたらよいのかわからない
     この場合、被害者として、犯行の状況や犯人の様子など事件に関する色々な事情を尋ねられます(事情聴取)。また、例えば、被害当時に着用していた衣服など、証拠品の提出を求められることもあります。
     いずれにしても、真相解明のためにはできる範囲で捜査機関に協力することになります。
     その他、例えば、犯人からの仕返しの心配などがある場合は、その点も、率直に相談されるとよいと思います。

    〔被害者参加制度について〕

    12 どのような犯罪の被害者でも参加制度を利用できるのか
     参加制度を利用できるのは一定の犯罪の被害者に限定されます(刑事訴訟法316条の3 3第1項)。
     参加制度を利用できる対象犯罪は、以下のとおりです。
    •  ① 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
         (例えば、殺人罪、傷害罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪など)
    •  ② 強制わいせつ、強制性交等などの罪
    •  ③ 逮捕及び監禁の罪並びに略取誘拐及び人身売買の罪
    •  ④ 当該犯罪行為に②、③の罪の犯罪行為を含む罪
    •  ⑤ ①~④の罪の未遂罪
    •  ⑥ 過失運転致死傷などの罪
    13 被害者として刑事裁判の期日に参加したいがどうすればよいか
     裁判は、公開が原則であり、特別な手続をとらなくても、誰でも傍聴することができます。
     但し、傍聴を希望する人が多い事件の場合、傍聴席の数が限られていることから、傍聴券が発行され、傍聴券を持っている人だけが傍聴することができるとされることがあります。
     その場合、事件に最も関わりの深い被害者やそのご遺族も、傍聴券がないと傍聴することができないとすることは、適当でありません。
     そこで、そのような場合、被害者等から傍聴の申出がある場合には、裁判長は傍聴席及び傍聴希望者の数その他の事情を考慮しつつ、申出をした者が傍聴することができるよう配慮しなければならないとされています。
     傍聴希望者が多数であることが予想される場合は、事前に、裁判所の担当部の書記官に傍聴希望の申出を行ってください。電話でも構いません。傍聴する座席の位置や、入退廷の仕方についても、一定の配慮をしてもらえるので、相談されるとよいでしょう。被害者ご本人だけでなく、その付添の人や、支援弁護士の傍聴席についても、人数の制限はありますが、配慮されることが多いようです。被害者として刑事裁判の期日に参加するためには、まず、裁判所から参加の許可を得なくてはなりません(刑事訴訟法316条の33第1項)。
     具体的には、参加を希望する場合、裁判所に対して、検察官を通じて参加の申し出をします(同法316条の33第2項)。
     (実際の手続きなどについては、あなたの事件を担当する検察官、あるいは各検察庁の被害者支援専門員にお尋ね下さい。)
     その後、裁判所が、検察官、被告人、弁護人の意見を聴き、犯罪の性質や被告人との関係などを考慮して、参加の可否を決定します(同法316条の33第1項)。
     こうして、裁判所から参加の許可を受ければ、刑事裁判の期日に参加することができます。
     ただ、裁判所は、審理の状況、参加人の数などを考慮して、相当でないと認めるときは、期日の全部または一部の出席を許さないことができます。この場合には、刑事裁判の期日の参加が一部(ないし全部)制限されます(同法316条の33第4項)。
    14 検察官に意見を述べたり、説明を受けたりすることはできるのか
     被害者参加人(刑事裁判への参加を許可された被害者)は、検察官に対し、その刑事事件に関し検察官が行使した権限や行使しなかった権限について、意見を述べることができます。そして、検察官は、意見を述べた人に対し、権限を行使した理由、あるいは行使しなかった理由を説明しなければなりません。このことは、刑事訴訟法316条の35に定められています。
     例えば、被害者が殺人での起訴を求めているのに検察官が傷害致死で起訴したような場合、なぜ傷害致死で起訴したのかについて被害者は検察官に説明を求めることができ、検察官  はこれに対して答える義務があります。
     ところで、刑事訴訟法316条の35という条文自体は、刑事裁判への参加を許可された被 害者にしか適用されません。しかし、最高検察庁から各検察官に対する「通達」(行政機関内部での指示のようなもの)によって、検察官が事件の処理について被害者の要望に沿えない場合はその理由を被害者に説明しなくてはならないこと、などが定められる予定です。この「通達」によって、刑事裁判に参加しない被害者でも、検察官に意見を述べたり説明を受けることができます。
     詳しくは、事件を担当する検察官にお問い合わせ下さい(担当検察官が分からない場合は  検察庁に問い合わせをすれば教えてもらえます)。
    15 証人に質問したい
     被害者参加人(刑事裁判への参加を許可された被害者)は、一定の場合に、裁判の証人として呼び出された人に質問をすることができます。
     このことは、刑事訴訟法316条の36に定められています。
     このような質問は、①情状事実についての証人の②供述の証明力を争うために必要な事項についてのみ、認められます。ちょっと分かりにくいので、以下ご説明します。
     <①について>「情状事実」とは、被害弁償が済んでいるとか、十分反省しているなどの、被告人の刑の軽重を決めるために考慮すべき具体的事情をいいます。「情状事実についての証人」とは、このような事情について証言する人のことです。例えば、被告人の家族が「私は被告人に代わって被害弁償をしました」と証言する場合がこれにあたります。
     <②について>「供述の証明力を争う」とは、証人の言っていることが信用できるかどうかを争うということです。
     例えば、被告人の家族が、裁判の前に被害者宅を訪れたときには「被害弁償などする気 はない」と言っていたのに、法廷では「きちんと被害弁償をしたいと考えています」と証言したたために、この証言が信用できるかどうかを争う場合がこれにあたります。
     この場合、被害者としては、この証人(被告人の家族)に対し、「あなたは私の家に来たと きに『被害弁償などする気はない』と言っていましたよね?」と質問することが考えられます。
     被害者参加人が上記の質問をする場合、まずは検察官に申し出て、検察官から裁判所 に通知することになります。あらかじめ証人に対して質問したいことが分かっている場合は、担当検察官にその旨を伝え、十分な打合せをしてのぞまれることをお勧めします。
    16 被告人に質問したい
     被害者参加人(刑事裁判への参加を許可された被害者)は、裁判所の許可を得て被告人に対して直接質問をすることができます。このことは、刑事訴訟法316条の37に定められています。
     制度上、質問事項は、後に裁判の中で意見陳述(質問6参照)を行うために必要な事項に限定されていますが、意見陳述の内容は多岐に亘りますので、事実上、制限はないこととなります。しかし、あまり関係ないことを縷々質問したり、既に弁護人や検察官が質問したことを重ねて質問したりしますと、裁判所から制限を受けることがありますので注意が必要です。
     被告人に質問をするためには、事前に質問事項を明らかにして検察官に申し出る必要があります。申し出がありますと、検察官は、自ら質問をするか、申し出があったことを裁判所に通知します。裁判所は、被告人、弁護人、検察官の意見や諸般の事情を考慮して質問を許可するかどうかを決めます。
     申出のタイミングとしては、弁護人や検察官による被告人質問が行われる期日の前と弁護人や検察官による被告人質問が終わった直後とがあります。
     前者の場合には、予め検察官に書面や口頭で申出ることとなります。多くの場合、検察官と打ち合わせをすることになると思われますので、質問項目について、検察官と被害者参加人として振り分けることになる場合もあると思われます。
     後者の場合には、弁護人の主尋問・検察官の反対尋問が終了した直後に法廷内のその場で口頭で検察官に告げます。
     質問は、被害者参加人本人が行うことも、被害者参加人の弁護士が行うこともできます。
    17 検察官と違う求刑や事実関係を主張したい
     被害者参加人(刑事裁判への参加を許可された被害者)は、裁判所の許可を得て事実や法律の適用について意見を言うことができます。
     これを被害者参加人の意見陳述と言います。このことは、刑事訴訟法316条の38に定められています。
     刑事裁判では、証拠調べが終わった後、検察官が事実や法律の適用について意見を言います(これを論告求刑と言います。)。この検察官の論告求刑の後に、被害者参加人も、検察官とは別に論告求刑ができるというのがこの制度です。被害者参加人は、犯罪に関する事実や情状(刑の軽重を決めるために考慮すべき具体的な事情)に関する事実について証拠に基いて主張したり、犯罪が成立するかどうか、法定刑の範囲内で量刑はどのようにすべきかなど自分の意見を述べたりできます。
     意見陳述の範囲は、検察官が起訴した犯罪の範囲内に限られますので、例えば傷害致死罪で起訴されているのに殺人罪で意見を述べたりしますと、裁判所から意見陳述を制限されることがあります。
     意見陳述を行うためには、事前に意見の要旨を明らかにして検察官に申し出る必要があります。申し出がありますと、検察官は、申し出があったことを裁判所に通知します。裁判所は、検察官の意見や諸般の事情を考慮して意見陳述を許可するかどうかを決めます。
     申し出がありますと、多くの場合、検察官と打ち合わせをすることになると思われますので、場合によっては検察官の論告求刑に取り入れられたりすることもあるでしょうし、また、意見陳述ができる範囲であるかどうかについても検察官と意見交換することとなるでしょう。
     意見陳述は、被害者参加人本人が行うことも、被害者参加人の弁護士が行うこともできます。
     被害者は、刑事裁判の中で、以上説明した論告求刑という意味での意見陳述の外に、別の意味での意見陳述を行うことができます。これにつきましては、「刑事裁判・少年審判の手続について」の頁にある、フローチャート中央括弧内の「被害者等の意見陳述」の部分をご覧下さい。
    18 刑事裁判に参加するときに、弁護士による援助を受けたい。その場合、弁護士費用は負担しなければならないのか

     1) 被害者の方々が刑事裁判への参加を申し出て、裁判所の許可を受けると、被害者参加人として、

    1.  公判期日への出席(刑事訴訟法316条の34)
    2.  検察官に対する意見陳述等(同法316条の35)
    3.  情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く)に関する証人尋問(同法316条の3)
    4.  意見陳述のための被告人質問(同法316条の37)
    5.  事実・法律適用に関する意見陳述(同法316条の38)  

    を、裁判所の許可等、一定の範囲内で行うことができます。
     これらの活動は、全て法律の定めに従って行われます。
     それゆえ、被害者の方々が刑事裁判に参加して前記のような活動を適切かつ効果的に行うためには、多くの場合、法律の専門家である弁護士による援助が必要不可欠になると思われます。法律も、被害者の刑事裁判の参加について、被害者の方々が自ら活動する場合だけでなく、被害者の方々から「委託を受けた弁護士」が活動する場合を予定しています。
     ですから、刑事裁判に参加する際に弁護士による援助を希望される場合は、是非、弁護士会の犯罪被害に関する電話相談、あるいは、法テラス(日本司法支援センター)にご相談下さい。弁護士の紹介も受けることができます。

    •  愛知県弁護士会 
          犯罪被害に関する電話相談(愛知県弁護士会名古屋法律相談センター)
          毎週金曜日(祝日・年末年始は除く)13:00~16:00 TEL052-571-5100
    •  法テラスコールセンター(全国) 平日9:00~21:00 土9:00~17:00 TEL0570-079714
    •  法テラス愛知地方事務所 平日9:00~17:00 TEL050-3383-5460

     2) 刑事裁判に参加しようとする被害者の方々が弁護士に委託しようとする場合の弁護士費用については、資力が乏しい場合であっても、弁護士の援助が受けられるようにするため、一定の要件に該当する被害者参加人について、裁判所が弁護士(国選被害者参加弁護士)を選定し、国がその報酬等を負担する制度(被害者参加人のための国選弁護制度)があります(犯罪被害者保護法5条~12条)。

     国選被害者参加弁護士の選定を希望される場合は、法テラスを通じて申込を行います(同法5条2項)。 ご自身がこの制度を利用することができるかどうかについては、弁護士会の犯罪被害に関する電話相談、あるいは、法テラスにご相談下さい。

    〔刑事裁判・少年審判について〕

    19 裁判を傍聴するには、どうしたらよいか
     裁判は、公開が原則であり、特別な手続をとらなくても、誰でも傍聴することができます。
     但し、傍聴を希望する人が多い事件の場合、傍聴席の数が限られていることから、傍聴券が発行され、傍聴券を持っている人だけが傍聴することができるとされることがあります。
     その場合、事件に最も関わりの深い被害者やそのご遺族も、傍聴券がないと傍聴することができないとすることは、適当でありません。
     そこで、そのような場合、被害者等から傍聴の申出がある場合には、裁判長は傍聴席及び傍聴希望者の数その他の事情を考慮しつつ、申出をした者が傍聴することができるよう配慮しなければならないとされています。
     傍聴希望者が多数であることが予想される場合は、事前に、裁判所の担当部の書記官に傍聴希望の申出を行ってください。電話でも構いません。傍聴する座席の位置や、入退廷の仕方についても、一定の配慮をしてもらえるので、相談されるとよいでしょう。被害者ご本人だけでなく、その付添の人や、支援弁護士の傍聴席についても、人数の制限はありますが、配慮されることが多いようです。
    20 少年審判を傍聴するには、どうしたらよいか

    1) 平成20年に少年法が改正され、一定の重大な犯罪事件の被害者や遺族の方が、少年審判の傍聴を申し出た場合、家庭裁判所の裁量により傍聴することが認められるようになりました。

    2) これまで、大人の刑事事件と異なり、少年審判は非公開とされ、被害者や遺族の方々であっても傍聴することはできませんでした。これは、少年の更生、健全な育成のためには、精神的に未成熟で表現力も乏しい少年が、懇切な運営のもとに、自らをありのまま語ることができる場を提供しながら審判を行う必要性が高いと考えられているからです。 

    3) 一方、被害者や遺族の方の中には、なぜ事件が起こるに至ったのか、なぜ自分が事件の被害者にならなければならなかったのか、その一端でも知りたい、あるいは、少年がどのようにして処分を決められるのかを見たいという想いから、少年審判を傍聴したいと希望される方もおられます。そのため、冒頭1)の改正がなされ、
    ①14歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪や業務上過失致死傷等の罪を犯したとされる事件、
    ②12歳以上14歳未満の少年が①の罪にかかる刑罰法令に触れるとされる事件
    に関し、被害者等から審判傍聴の申出があった場合、少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況、その他の事情を考慮して、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときには、家庭裁判所は審判を傍聴することを許すことができるとされたのです。
     また、被害者やご遺族に少年審判の傍聴が認められる場合で、傍聴する人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、その人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがある場合には、一定の人を傍聴する人に付き添わせることが認められるようになりました。

    21 裁判を傍聴しても手続の流れや専門用語の意味がよく分からない
     刑事裁判・少年審判の手続についてのフローチャートとその用語解説をご覧下さい。
    また、弁護士に直接ご相談いただくこともできますので、詳しくは、こちらをご覧の上ご相談下さい。
    22 裁判で、自分の名前や住所を読み上げて欲しくない。また、自分が被害者であることを誰にも知られたくない
    • 1) 犯罪の特定や立証のために、起訴状や証拠書類に、被害者の名前や住所などが記載されていることがあります。これまでは、これらの書類などを提出したり読み上げる際に、被害者の名前や住所が法廷でそのまま読み上げられたり、尋問などの際にも、被害者の名前などがそのまま出されることもありました。名前などが出されることにより、被害者は苦痛を受けるだけでなく、被告人やその関係者に名前や住所を知られるのではないかと不安を感じてしまうこともありました。
       このようなことから、これまでも性被害などの事件などにおいては、裁判所の判断(訴訟指揮)で、起訴状を朗読するときや、尋問のときなどに、被害者の方の名前を明らかにしないで( たとえば、単に「被害者」と呼ぶなどして)訴訟を進める扱いが実務上も行われてきました。
    • 2) このような実務上の取扱を発展させ、平成19年6月に成立した「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法の一部を改正する法律」では、特定の事件について、裁判所が名前や住所など被害者を特定させることとなる事項(被害者特定事項)について、非公開とする旨の決定を行うことが明文で規定されました。これにより、被害者特定事項を明らかにしない方法で、起訴状や証拠書類の朗読、尋問や陳述を行ったり、被害者特定事項にわたる部分について制限することができることとされました。
       但し、その結果、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合や被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合については、その制限は許されないものとされています。
    • 3) また、検察官から弁護人に対して証拠を開示する際、被害者特定事項が明らかにされることで、被害者などの名誉もしくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあったり、被害者やその親族の身体・財産に害を加えたり怖がらせたり困惑させるなどの行為がなされるおそれがあるような場合には、検察官は弁護人に対し、被告人やその他の者に被害者特定事項が知られないように求めることができることになりました(但し、これについても、被告人の防御に関し必要がある場合については、除かれることとなっています)。
    23 検察官から裁判の内容を教えてもらうことはできるのか

     Q14でご説明したとおり、被害者参加人(刑事裁判への参加を許可された被害者)は、検察官が権限を行使したり、あるいは行使しない場合に、意見を述べたり、説明を求めることができます。しかし、なかには、刑事裁判に参加することは難しいけれど、事件を担当する検察官に、事件の処理等について要望を出したり、説明を求めたいという被害者もいらっしゃるでしょう。

     被害者が刑事裁判に参加しているか否かにかかわらず、検察官が被害者と十分なコミニュケーションを図り、事件の処理等について被害者の要望を聴いたり、要望に沿えない場合にはその理由を丁寧に説明することが、被害者のための刑事裁判実現にとって大切なことです。そこで、各検察官には、以下のような対応が求められます。

    1.  検察官は、事件処理に関して被害者からの要望に配慮し、要望に沿えない場合は、その理由を被害者に説明しなければなりません。
    2.  検察官が裁判に提出する予定の証拠については、被害者の要望があれば、裁判が始まる前でも相当な範囲で被害者に証拠を見る機会を与える等弾力的な運用をしなければなりません(刑訴法47条但書)。
    3.  検察官が裁判の中で主張し、証明しようとする事項については、被害者からの要望に配慮して、必要に応じてその内容について説明しなければなりません。
    4.  上訴(判決を不服として上級の裁判所に申立をすること)するか否かについて被害者からの意見を聴き、上訴しないときはその理由を説明しなければなりません。
    5.  検察官を監督すべき立場にある者は、被害者から不服申立があったときは、必要に応じて検察官を適正に監督しなければなりません。詳細については、事件を担当する検察官にお尋ね下さい。
    24 公判前整理手続とはどのような手続か。被害者も内容を知ることができるのか。

    1) 第1回公判期日前に、公判の準備として、事件の争点及び証拠を整理するために行われる刑事訴訟手続きです(刑事訴訟法316条の2~)。裁判員制度の導入や刑事裁判の充実・迅速化を図るためには、わかりやすい審理を連日集中して行う必要があることから、2004年の刑事訴訟法改正により導入され、2005年から実施されています。

     公判前整理手続に付されるのは、

    ①裁判員裁判となる事件全ての他に(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律49条)

    ②裁判所が、充実した審理のために、検察官及び被告人または弁護人の意見を聞いて、決定で公判前整理手続に付すと定めた事件です(刑事訴訟法316条の2第1項)です。

     この手続きでは、検察官に対して、証明予定事実を明らかにし、証拠等の開示を求めることで、被告人に防御の準備を十分に行わせることができるようにすると共に、被告人側にも主張の明示と証拠調べ請求等を求め、手続き終了後の新たな証拠調べ請求に制限を課しています。

    2) 現在のところ、公判前整理手続の段階で、その内容を被害者が知るための制度に関する直接の規定はありませんが、公判前整理手続においても、Q3やQ8の回答でご説明したことが当てはまると考えられます。すなわち、整理手続において検察官が行使した権限や行使しなかった権限について、説明を求めたり、意見を述べたりすることができます。

    25 加害者本人及び代理人である弁護士が示談を申し込んできたが、どう対応したらよいのかわからない

     刑事事件になると、加害者やその代理人である弁護士が示談を申し込んでくることがあります。これは、一般的に、被害者と示談をして被害弁償をしたことは加害者の刑事処分を決定するうえで有利な事情となるからです。
     そのため、加害者本人に支払能力がない場合でも、加害者の親族等が示談金を準備しているというケースがあります。したがって、加害者本人に財産や支払能力がある場合はよいのですが、そうでない場合、刑事処分が決定した後に民事裁判等で損害賠償請求しようとすると、原則として加害者本人に対してしか請求できないため、被害弁償が受けにくくなるという実情もあります。
     加害者や弁護士の示談申入れを受け入れるかどうかは被害者の自由です。示談に応じることが加害者の刑事手続にどのような影響を及ぼすのか、示談を断った場合の被害弁償はどうなるのかを慎重に考えて判断すべきといえます。
     なお、示談の際に取り交わす「示談書」に、被害者は加害者を「宥恕する」という言葉が入っていることがありますが、これは「罪を許す」という意味です。

    26 裁判の結果がどうなったか知りたい

     検察官が被害者の方などに事情聴取をした場合には、その時に、加害者の裁判結果などについて通知を希望されるかどうかを確認します。通知を希望されると、後日、検察庁から裁判結果について連絡があります。
     事情聴取の際、通知を希望されなかった場合は、検察庁(被害者ホットライン)に問い合わせてみて下さい。
     なお、裁判後の加害者の刑務所や少年院での様子を知りたいという方のために、加害者に関する情報を通知する制度があります。詳しくは、Q27「加害者の刑務所や少年院での様子を知りたい」の回答をご覧下さい。

    〔各種通知制度について〕

    27 加害者の刑務所や少年院での様子を知りたい(加害者に関する情報の通知制度)

    1) 被害者の希望に応じて、

    ①刑事裁判確定後の加害者の受刑中の処遇状況に関する事項、

    ②仮釈放審理に関する事項、

    ③保護観察中の処遇状況に関する事項
    等について、各関係機関から通知を受けることができます。申出をすることができるのは、被害者本人、その親族又はこれに準ずる者、これらの代理人弁護士で、受付先は、検察庁です。

    2) 少年審判で保護処分を受けた加害者についても、同様に、被害者の希望に応じて、

    ①少年院在院中の処遇状況等に関する事項、

    ②仮退院審理に関する事項、

    ③保護観察中の処遇状況に関する事項
    等について、通知を受けることができます。

     申出をすることができるのは、被害者本人、その法定代理人(被害者が死亡又は心身に重大な故障がある場合)、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹、これらの者から委託を受けた弁護士で、申出の受付先は、少年院送致の場合は少年鑑別所、保護観察の場合は保護観察所です。

    3) 通知は、基本的に文書の郵送で行われます。

    28 加害者が刑務所や少年院から仮に出ることについて意見を伝えたい(意見等聴取制度)

     ①被害者、②法定代理人、③被害者の配偶者・直系親族・兄弟姉妹(被害者が亡くなったあるいは心身に重大な故障がある場合)は、加害者の仮釈放等につき、意見を言うことができます(以下、「被害者等」と言います。更生保護法38条1項、同法42条)。
     意見を伝える方法ですが、被害者等がお住まいの地域を管轄する保護観察所に電話を掛け(名古屋在住の方の場合、052-961-0249が被害者専用担当番号になります。)加害者の仮釈放、仮退院に関する意見や、被害に関する心情を述べたい旨を申し出ると、加害者の仮釈放・仮退院の審理を行っている地方更生保護委員会により、事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮した上で、被害者等の意見・心情を聴取するかどうかが決定されます(更生保護法38条1項、同法42条)。そして、意見・心情を口頭で述べていただくのか、書面で述べていただくのかについても、被害者等の希望を踏まえて同委員会が決定することになります。
     なお、全国に8か所ある地方更生保護委員会には、被害者専用担当の電話番号が用意されておりますので(中部は、052-951-2951)、ここにお問い合わせいただくことができます。
     また、通常は、地方更生保護委員会が加害者の仮釈放・仮退院の審理を行う過程において、保護観察官または保護司より、被害者等に対して、意見・心情を述べることを希望されるのかどうか問い合わせがされているようです。

    29 加害者に自分の気持ちを伝えたい(心情等伝達制度)

     ①被害者、②法定代理人、③被害者の配偶者・直系親族・兄弟姉妹(被害者が亡くなったあるいは心身に重大な故障がある場合)は、保護観察の対象となっている加害者に対して、自らの心情を伝えることができます(以下、「被害者等」と言います。更生保護法65条1項)。
     心情を伝える方法ですが、被害者等がお住まいの地域を管轄する保護観察所に電話を掛け(名古屋在住の方の場合、052-961-0249が被害者専用担当番号になります。)、被害に関する心情、被害者等の置かれている状況又は保護観察対象者の生活若しくは行動に関する意見(以下、「心情等」と言います。)を述べたい旨を申し出ると、加害者の保護観察を実施している保護観察所長は、これを伝達することに保護観察対象者の改善更生を妨げるおそれがないか、あるいは、事件の性質、保護観察の実施状況その他の事情を考慮した上で、心情等を聴取し伝達するかどうかを決めます(更生保護法65条1項)。実際には、心情等を、保護観察所の被害者担当官に対して口頭又は書面で述べていただくことになります。
     なお、現在のところ、受刑者や少年院在院中の少年に対して、心情等を伝達する制度はありません。

    〔公的な補償について〕

    30 犯罪被害者に対する公的な補償の制度はないのか

     1)国による犯罪被害者等給付金の制度

     これは、犯罪被害者等給付金支給法により、一定の犯罪の被害者やその遺族に対して補償を行うものです(第1条、第3条)。 対象となるのは、生命・身体に対する故意の犯罪(殺人罪や傷害罪など)によって死亡・障害・重傷病を負った場合で、給付金の種類と金額は次のとおりとなっていますが、具体的な支給額は、犯罪被害を受けたときの被害者自身の収入や障害の程度などによって決まります(同法第9条)。

    H18.4.1~H20.6.30までに発生した犯罪行為による場合H20.7.1以降に発生した犯罪行為による場合
    障害給付金 等級第1~14級
    18~1,849.2万円
    等級第1~3級
    1,056~3,974.4万円

    等級第4~14級
    18~1,269万円
    遺族給付金 320~1,573万円 一定の生計維持関係遺族がいる場合
    872.1~2,964.5万円

    それ以外の場合
    320~1,210万円
    重傷病金 加療期間1ヶ月以上かつ入院期間3日以上の傷病につき、1年を限度とした医療費自己負担相当額 右の「医療費自己負担相当額」に「療養のため休業した場合の休業損害を考慮した額」を加算(但し、上限額120万円)

     なお、平成18年3月31日までに発生した犯罪行為に対しては、加療1か月かつ14日以上の入院が要件となり、支給額は3か月を限度とした医療費の自己負担相当額となりますので、ご注意下さい。
     また、犯罪行為を受.けた場合でも、

    •  被害者と加害者の間に親族関係がある場合
    •  犯罪被害の原因が被害者にもある場合
    •  労災保険等他の公的給付や損害賠償を受けた場合

    などについては、給付金の全部又は一部が受けられないことがあります(犯給法第6条、第7条)。

     申請期間については、原則として犯罪行為による死亡等を知ってから2年以内、犯罪行為が発生してから7年以内とされています(但し、やむを得ない理由により申請できなかったときは、その理由のやんだ日から6月以内に申請することが可能です)。
     申請の受付窓口は公安委員会ですが、

    •  申請する人が居住している都道府県警本部又は警察署の被害者支援室
    •  社団法人被害者サポートセンター

    などで、申請書の作成方法も含め、アドバイス・サポートをしてくれますので、お問い合わせ下さい。

     2)犯罪被害救援基金

     これは、財団法人犯罪被害者救援基金が、犯罪被害者の遺児に対して学資の給付を行う奨学事業です。対象となるのは、人の生命または身体を害する故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた方または身体に重い障害が残った方の子弟のうち、経済的理由により修学が困難な方です。

     紹介したこれらの制度について、警察庁のHPにも詳しい解説がありますのでご参照下さい。

    〔報道被害〕

    31 報道関係者から毎日のように取材があり、プライバシーが守られない。

     このような場合、弁護士に取材窓口となってもらい取材攻勢を制限することができます。具体的には、

     ①被害者やそのご家族への直接取材は全てお断りし、取材要請は全て弁護士を通して行ってもらう、
     ②直接取材は被害者等が希望する場合のみに制限し、取材が二次被害となることがないよう、取材にあたる報道機関の記者やカメラマンに事前に十分説明をする、③弁護士が被害者などに代わってコメントを代理発表する、
     等の方法が現実にとられています。

     被害者等に関する誤った報道がされたような場合、弁護士がその報道機関に抗議し、訂正を要請した事例もあります。
     いずれの場合も、個別のケースごとに、具体的にどう報道対応するのがいいか弁護士と十分相談されることをおすすめします。