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消費者問題速報 VOL.191 (2021年2月)

1 株式会社DeNAの運営する「モバゲー」の利用規約の一部について,使用差止めを認めた判決(東京高裁令和2年11月5日判決)

 本判決は,適格消費者団体(X)が,株式会社DeNA(Y)の運営するポータブルサイト「モバゲー」に関する契約条項(7条3項:当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても,当社は,一切損害を賠償しません。)の使用差止めを求めた事案について,Xの請求を認めた一審判決(さいたま地裁令和2年2月5日判決)の控訴審判決である。Yは,本件条項は,Yが損害賠償責任を負わない場合に,これを負わないことを確認的に規定したものに過ぎないとして争っていた。

 本判決は,差止請求制度上の不当条項該当性について,「差止請求の対象とされた条項の文言から読み取ることができる意味内容が,著しく明確性を欠き,契約の履行などの場面においては複数の解釈の可能性が認められる場合において,事業者が当該条項につき自己に有利な解釈に依拠して運用していることがうかがわれるなど,当該条項が免責条項などの不当条項として機能することになると認められるときは,(消費者契約)法12条3項の適用上,当該条項は不当条項に該当する。」との判断枠組みを示した一審判決の判断を是認した。

 その上で,それぞれ控訴提起後に控訴人が一部改正した本件規約7条1項(免責条項)について,「c号の『他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が合理的に判断した場合』という要件(について)…控訴人(Y)は,『合理的な判断』を行うに当たって極めて広い裁量を有し,客観的には合理性がなく会員に対する不法行為又は債務不履行を構成するような会員資格取消措置等を『合理的な判断』であるとして行う可能性が十分にあり得るが,会員である消費者において,…当該措置が『合理的な判断』に基づかないものであるか否かを明確に判断することは著しく困難である。」とし,「e号は,『その他,モバゲー会員として不適切であると当社が合理的に判断した場合』との要件であるが,…c号と同じ『合理的に判断した場合』との文言が用いられていることから,c号の解釈について認められる上記の不明確性を承継するものとなっている。」等として,対象条項につき,「著しく明確性を欠き,契約の履行などの場面においては複数の解釈の可能性が認められると言わざるを得ない。」とした一審判決の判断を踏襲した。

 さらに,本件規約7条1項c号及びe号の意味内容について,一般に合理的限定解釈は許される等により明確であるとの控訴人(Y)の主張について,「事業者は,消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が,その解釈について疑義が生じない明確なもので,かつ,消費者にとって平易なものになるよう配慮すべき努力義務を負っているのであって(法3条1項1号),事業者を救済する(不当条項性を否定する)との方向で,消費者契約の条項に文言を補い限定解釈をするということは,同項の趣旨に照らし,極力控えるのが相当である。」等として,上記7条3項は,「同条1項c号又はe号との関係において,…同条3項が,免責条項として機能することになると認められる。」として,法8条1項1号及び3号の各前段に該当すると判断し,控訴人(Y)の控訴を棄却した。

 【特定適格消費者団体 埼玉消費者被害をなくす会HP      

 http://saitama-higainakusukai.or.jp/topics/201202_02.html

2 被告Y1を統括者とするグループにおいて,被告各社および各社の取締役らにつき,一体として共同で詐欺的取引を行っていたとして,共同不法行為責任を認めた判決(新潟地裁長岡支部令和3年1月18日判決)

 本件は,Xが,株式会社Shunka,株式会社ビクトリー・ワールド,飯田高津原高原ホームズ株式会社,株式会社ORIONWAY,及び各社の取締役らに対し,Xが各社の勧誘を受け行った本件出資等は,Yらの不法行為に基づくとして,拠出した金員相当額の賠償を求めた事案である。

 本判決は(1)不法行為の成否,(2)Yらの責任原因について,次のとおり判断した。

(1) 不法行為の成否

 被告各社は,会長と呼ばれ,各社の運営において,最終的な決定権を有する統括者(Y1)を頂点とするグループによって一体的に運営されており,事業の実体がなく事業によって配当原資となる利益が得られる見込みもないにもかかわらず,それを偽って出資等をさせる行為は,不法行為を構成すると評価できる。なお,Xは当初,配当金や利息金の支払いを受けていたが,その原資は事業利益ではなく,いわゆる自転車操業として,X同様の出資等をした者からの入金が充てられていたと考えられ,不法行為の成否に関する判断を左右しない。

(2) Yらの責任原因

 ア グループに所属する取締役らの責任原因

 被告各人は,遅くとも平成25年ころまでにはY1を統括者とするグループに所属し,各社においては事業実態がないにもかかわらず,出資金等の名目で高率の配当を約束して金員を拠出させていた。よって,被告各人はグループに所属した時点以降,共同で不法行為に加担したといえる。

 そして,Xに本件出資等の勧誘をしたのは訴外Aであり,各人がXに直接の折衝や欺罔行為をしたとまでは認められないものの,本件出資等のスキームは,Y1を統括者とするグループにより構成され,訴外Aもそれに沿って本件出資等を勧誘していたものと推認できるから,被告各人の共同不法行為とXが金員を拠出したこととの間には因果関係もあり,被告各人は共同不法行為責任を負う。

 イ 被告各社の責任原因

 被告各社は,登記簿上の目的としては,具体的な事業が掲げられているものの,実際は,Y1を統括者とするグループにおいて,出資を募る手段として,適宜恣意的に設立されたものと認められる。

 被告各社は,Y1を統括者とするグループにおいて,一体となって運営されていたこと,被告会社のうち,特定の一社に対してされた出資等の配当や償還が困難になった場合は,他の会社に対する別名目の出資等に振り替えるよう求め,最終的に償還しなかったことがあり,被告各社は,共同して出資者からの追及を免れようとしていたと認められる。よって,被告各社は,一体として,共同で詐欺的取引を行っていたと評価するのが相当であり,他の会社の行為についても共同不法行為者として責任を負うと評価するのが相当である(ただし,共同不法行為責任を負う範囲は,自らが設立された後の行為にとどまる)。

 

3 「特定商取引に関する法律及び特定商品の預託等に関する法律の書面交付義務の電子化に反対する会長声明 」について

 令和3年2月26日付で,「特定商取引に関する法律及び特定商品の預託等に関する法律の書面交付義務の電子化に反対する会長声明」を発出しました。

 【https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2021/02/post-48.html