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消費者問題速報 VOL.140 (2015年11月)

1 被告会社に委託した商品先物取引における不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点(広島地方裁判所平成27年2月18日判決)

 本件は、原告が、被告会社に委託した商品先物取引に関して被告会社従業員に適合性原則違反等があったと主張し、被告会社等に対して使用者責任(民法715条)に基づく損害賠償請求等を求めた事案である。本判決は、適合性原則違反等を認めたうえで、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算である「損害及び加害者を知った時」(民法724条)とは、委託者が、取引に関連する商品取引員の外務員等の行為について違法なものである可能性があることを認識することができた時をいうとした。

 本件では、原告が弁護士に相談し、本件取引による損失について損害賠償請求が可能かもしれないと指摘された時から消滅時効は進行するとし、全ての建玉が仕切られて本件取引が終了した時点を起算点とすべきとする被告らの主張を退けた。               

2 不招請勧誘により開始された商品先物取引について、損害の全部の賠償を命じた事例(東京高等裁判所平成27年10月21日判決)

 本件は、投資経験のほとんどない被控訴人が控訴人(KOYO証券株式会社)に委託した初めての通常の商品先物取引(以下「本件取引」という。)によって生じた損害の全部の賠償を認めた原審を維持した事案である。

 控訴審は、本件取引に係る勧誘から同取引の終了に至るまでの控訴人又はその従業員の一連の行為につき、不招請勧誘、説明義務違反、新規委託者保護義務違反、適合性原則違反、一任売買、無意味な特定売買などの違法による不法行為を認めた。具体的には、本件取引に先立つ被控訴人のスマートCX取引の経過等に照らし、本件取引が被控訴人の意思に基づいて積極的に行われたとは認められないとし、不招請勧誘につき、被控訴人が、商品先物取引の勧誘を招請する旨の申出書を作成したとしても、「招請」の意味等について十分に理解していない可能性を否定できないこと等から、勧誘の招請を認めなかった。

 さらに、控訴審は、控訴人の説明義務違反の有無、過失相殺の点について、被控訴人との面談時間は30分程度であり、その場で必要書類を作成することに加え、契約締結前交付書面等を交付するなどして商品先物取引の仕組みやリスクについての説明をするだけの時間があったとは認め難いとし、本件取引が不招請勧誘という違法な勧誘を経て、被控訴人が十分な理解をしないままに開始されていることなどに照らし、控訴人の過失相殺の主張を退けた。

3 貸衣装契約の解約金条項の使用差止請求に対し、請求認諾がなされた事例(大阪地裁平成27年10月30日請求認諾)

 本件は、適格消費者団体である原告(特定非営利法人消費者支援機構関西)が、被告ら(株式会社VeaU、富久屋マネージメント株式会社)と消費者との間で締結されるウェディングドレス用衣装のレンタル契約に係る解約金条項のうち、消費者からの解約申入れが契約日から使用日(=挙式日)の30日前までになされた場合に、契約金額(=衣裳代金)の30%の金員を解約金として消費者から徴収する条項(以下「本件解約金条項」という。)について、消費者契約法第9条第1号により無効であり、同法第12条第3項に基づき、被告の本件解約金条項を含む消費者契約たる本件契約の申込み又は承諾の意思表示の差止め等を求めたものである。被告らは、原告の請求をいずれも認諾した。

 【訴状、意見陳述書等は消費者支援機構関西HPに掲載】

4 事例紹介(古銭の購入に関して、「名義を貸してほしい。」などと持ちかけられ、金銭を騙し取られた事例)

 典型的な手口としては、まず業者から古銭の販売に関するパンフレットが消費者に送られ、その前後に別の業者を名乗る者から電話があり、「古銭が買えるのはパンフレットが送られた人だけ」などと言われ、「名義を貸してほしい。」と持ちかけられる。消費者が名義貸しを承諾すると、その後「名義を貸した行為が違法になる。」などと言われ、違法行為を免れるためという理由で、金銭を宅配便等で送るように指示される。そして、指示どおりに金銭を送った後、業者と連絡が取れなくなるといったトラブルが高齢者を中心に多く発生している。

【訂正】

 消費者問題速報VOL.132(2015.2)4の判決日に間違いが見つかりました。以下のとおり訂正します。

 (誤)東京地判平成26年12月11日

 (正)東京地判平成26年12月10日