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消費者問題速報 VOL.132 (2015年2月)

1 121関連ファンド商法(FX自動売買システム商法)において「121グループ」を構成していたと目された証券会社に対して,同証券会社の事務所において同商法の首謀者らに勧誘された被害者2名に対する損害賠償を命じた判決(東京高等裁判所平成27年1月14日判決)

 本件は、自動売買ソフトを用いたFX取引により恒常的に高い利益を得ることができるとの虚偽の説明を受けて(実際は他の事業に流用)取引を勧誘された被害者が、FX取引の証拠金等の名目で金員を支払わされ損害を受けたとして、虚偽の勧誘を行った者と同一の企業グループを構成し、勧誘の場所として自社の事務所を提供した証券会社とその代表取締役に、損害賠償を求めた事案である。

 一審は原告らの請求を全部棄却したが,控訴審は,被害者が勧誘行為を受けた場所は,被控訴人証券会社の本社事務所であったと認定した上で,「被控訴人証券会社代表取締役は,本件勧誘行為が行われた時点においても・・・適切な調査を行うべき義務の履行を怠り,121商法による被害の拡大を防止することができなかったため,控訴人らが本件勧誘行為を受け121商法の被害に遭ったものと認めることができる」として同証券会社の代表者は過失による不法行為責任を負い,証券会社は会社法350条に基づく責任を負うとして一審判決を変更し,同証券会社及び代表者に対する損害賠償請求の一部を認容した。

 【あおい法律事務所HP

2 不動産の売買契約が恋愛心理を逆手にとって、投資適格が高いと言えないワンルームマンションの購入を決意させた行為を信義誠実の原則に反すると慰謝料請求を認めた判決(東京地方裁判所平成26年10月30日判決)

 判決は、本件における被告Aの勧誘行為は、被告Aが虚偽の年齢をサイトに登録の上、被害者に近付き、被告Aに好意を抱いていた被害者の交際や結婚を願望する気持ちを殊更に利用したものであり、このような恋愛心理等を逆手にとった勧誘が被害者の人格的利益への侵害を伴うもので、投資適格が高いとはいえないワンルームマンションの購入を決意させた勧誘行為は信義則に反し違法と評価した。

 更に、原告からは当該マンション購入資金のための被告銀行からの借入についても無効等の主張がされたが、当該原告の請求については棄却された。ただし、判決理由中においては、「…売主と貸主との関係、売主の本件消費貸借契約手続への関与の内容及び程度、売主の公序良俗に反する行為についての貸主の認識の有無、程度等に照らし、売主による公序良俗違反の行為の結果を貸主に帰せしめ、売買契約と一体的に金銭消費貸借契約についても効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情がある場合には、本件消費貸借契約も無効になるとするのが相当」と論じ、特段の事情が認められる場合に、購入資金の金融機関からの借入も無効とされる可能性があることを示した。

 【金融・商事判例No.1459】

3 冠婚葬祭互助会契約において、契約解約時に払戻金から所定の手数料が差し引かれる条項に関し、消費者契約法9条1号の「平均的な損害」を超える違約金を定めるものに該当することを認めた判決(福岡地方裁判所平成26年11月19日)

 本件は、適格消費者団体の原告が、冠婚葬祭互助会契約における契約解約時に払戻金から所定の手数料が差し引かれる条項が消費者契約法9条1号を理由に無効との理由から、消費者契約法12条に基づき意思表示等の差止めを求めた事案である。 

 判決では、冠婚葬祭互助会契約は、消費者たる会員からの役務提供の請求によって初めて具体的な準備活動が始まるものである性質があるので、役務提供の請求前に解除された場合において、「被告の当該会員に対する損害賠償の範囲は、本件互助会契約の締結及び履行のために被告が支出する費用の原状回復を内容とするものに限定され、具体性のない役務提供のための準備に要する費用や役務提供ができなくなったことによる逸失利益は含まれ」ないとし、問題とされた冠婚葬祭互助会契約の締結及び履行において通常要する費用を超える部分は「平均的な損害」とは認められず、当該部分を返金額から差し引くことを内容とする条項を無効と判断した。

 【NPO法人消費者支援機構福岡HP

4 現金を私書箱宛てに送付させる詐欺について、私設私書箱業者の責任を認める判決(東京地判平成26年12月10日)

 判決では,私書箱名義人本人が関与したとの証拠が不十分であるとして、名義人に対する請求は棄却したものの、私書箱事業者の責任については、犯罪収益移転防止法の趣旨等からすれば,私書箱事業者のような特定事業者は,「単に本人確認や疑わしい取引の届出を行えばよいのではなく,契約締結時や個別の取引の際の事情から顧客等が犯罪収益を移転しようとしている疑いがある場合には,かかる事情についてより詳細な確認を行い,かかる疑いが払拭されない限りは取引を停止しなければならないという条理上の注意義務を負っていたというべきである」とした上で,重過失でこれを怠ったとして,代表者を含めてその責任を認めた。

5  消費者問題速報1月号で、「2」の判例の出典の訂正

 消費者問題速報1月号での「2」で紹介した判例の出典を「東京地方裁判所平成26年12月4日判決」と記載されていましたが、「一宮簡易裁判所平成26年12月11日判決」の誤りでした。