再審請求手続については、かねてより改正の必要性が指摘され、昨年6月、議員連盟による法案が国会に上程されるに至った。こうした中で、法務省は、急遽、再審法改正について法制審に諮問し、去る2月12日、これに対する答申が法務大臣になされた。しかしながら、この答申の内容は、以下に述べる通り、えん罪被害者の救済に資するどころか、現行の再審の運用を更に厳しいものとするものであり、到底許容されるべきものではない。 

 第1に、証拠開示について、答申では、再審の請求の理由に関連すると認められる証拠について、かつ相当と認められるものに限定されている。

 袴田事件、福井女子中学生殺人事件、日野町事件など、近時再審開始もしくは再審無罪が確定した事件では、審理の過程で開示された証拠が決め手となっているところ、再審請求段階では、請求人には検察官の手元にどのような隠された証拠があるのか全く知るすべがない。この点で、証拠開示の範囲を再審の請求の理由に関連するものに限定されるとなれば、現行の再審手続よりも更に再審開始のハードルを上げることとなるのは必至である。

 第2に、答申では開示証拠の目的外使用を罰則付きで一律に禁止している。しかし、例えば新証拠獲得に向けた活動において、開示証拠を支援者に交付することも目的外使用にあたるのではないかと懸念し躊躇するなど、弁護人の活動を萎縮させるおそれがある。さらに、報道機関が報じることすら禁止される結果となる。

 第3に、答申では検察官の不服申立てを制限していない。検察官は、再審において有罪の立証を行うことができるものであり、再審開始決定に対して不服申立てを許容する必要性はない。

 第4に、答申は新たに「再審の請求についての調査手続」なる制度を設け、裁判所に対し、「再審請求に理由がないことが明らかであると認めるとき」など一定の場合には、再審請求を速やかに棄却することを義務づけている。これが採用されれば、調査手続の段階では裁判所は証拠提出命令を行うことが禁止されるため、再審請求人が無罪につながる証拠の開示を受けられないまま、再審請求が書面のみで速やかに棄却されるおそれがある。

 このように、答申の内容は極めて問題が多く、到底是認されるべきものではない。当会は、刑事再審手続に関し、答申の内容による改正には強く反対するとともに、えん罪の被害者を適正かつ迅速に救済し、その基本的人権の保障を全うする観点から策定された議員連盟の法案に沿った内容での改正を求める。

2026年(令和8年)3月24日

  愛知県弁護士会

     会長 川 合 伸 子