交通誘導警備業務に従事していた軽度知的障害のある男性が、被保佐人となったことにより警備業法の欠格事由に該当するとして、約3年勤務した警備会社からの退職を余儀なくされたことに対し、被後見人又は被保佐人であることを欠格事由とする令和元年改正前の警備業法14条、3条1号(以下、「本件規定」という)の違憲性等を争った事案において、令和8年2月18日、最高裁判所大法廷は、本件規定は憲法22条1項(職業選択の自由)及び14条1項(法の下の平等)に違反していたとの判断を示した。しかし他方で、控訴審判決(名古屋高等裁判所令和4年11月15日)が、本件規定を改廃せず放置し続けた国会の立法不作為による違法性は大きいとして国に対し50万円の国家賠償を命じていたのに対し、最高裁判所大法廷の多数意見はこの結論を排斥した(以下、「本判決」という)。
平成14年の警備業法改正により、「精神病者」を警備員の絶対的欠格事由とする条項は、相対的欠格事由に改められた。しかし、上記改正後も、精神上の障害のある者は、成年後見・保佐の利用開始においては警備員として稼働するために必要な能力は判定されないにもかかわらず、権利擁護のための成年後見・保佐の制度を利用すると、警備員としての就業を断念しなければならない立場に立たされていた。今回、大法廷の多数意見が、法定後見制度を安易に転用する欠格条項が違憲無効であると明確に判示した点において本判決の意義は大きい。成年被後見人及び被保佐人が警備員として社会参画する途を閉ざすことによって、社会から障害者を排除する本件規定は、障害者基本法が定める障害者施策の基本に反していたのみならず、我が国が批准した障害者権利条約にも反していたのである。そのため本判決は、欠格条項の問題を超えて、今後の我が国の障害者施策や権利擁護の在り方にも大きな影響を与えるものと考えられる。
他方で、本判決の多数意見が国会による本件規定改廃の不作為について国家賠償法上の違法性を否定した点は、極めて遺憾である。むしろ、本判決の反対意見にもあるように、遅くとも障害者差別解消法及び障害者雇用促進法の改正がなされた平成25年6月には、本件規定の違憲性は国会にとって明白になっていたと考えられるのであるから、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠った以上、本件立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるべきであった。
当会は、国に対し、残された課題として、現在も残置されている相対的欠格条項が障害を理由とする新たな差別として働くことのないよう必要な措置を講じること、さらに、間近に迫った成年後見制度の改正においても、本判決の理念・内容を踏まえ、適切な立法がなされることを強く求める。
また、当会としても、今後も我が国が「あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行と戦う」(障害者権利条約8条1項(b))ための取組みをさらに進めていくことを、改めて決意するものである。
2026年(令和8年)2月27日
愛知県弁護士会
会長 川 合 伸 子

