本年6月9日、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)の改定法が参議院本会議で可決され、成立した(以下「本改定法」という)。

 これまで当会は、2020年以降において二度にわたり入管法の改正に反対する旨の会長声明を発出し、さらに2023年2月8日付「入管法改定の再提出に反対する会長声明」においても、法案成立に反対するとともに、外国人の人権擁護の観点から、入管法の改正を求めてきた。

 本改定法は、2021年に国会に法案提出され、廃案となった旧改定法案の骨格を維持するものであり、入管の収容施設における長期収容問題の解消が見込めない一方、難民申請者に対する送還停止効を制限する等、新たな人権侵害につながる強い懸念を抱かざるをえない。

 本改定法に対しては、全国各地の弁護士会からも反対の意見が表明され、4月18日には、国連人権理事会特別手続きの専門家らも共同書簡を発出し、国際人権基準の観点から、本改定法が原則収容主義を維持することや司法審査の導入見送り等について懸念が示されていた。

 しかも今国会の審議では、本改定法の問題点が全く解消されず、むしろ法案審議中にも一部の難民参与員への偏った事件の配点等、本改定法の根拠となる立法事実にまで影響する様々な問題点が浮き彫りとなった。このような中、国会での審議が打ち切られ、多数決をもって採決が強行されたことは誠に遺憾であり、当会は、本改定法の成立に対し、強く抗議するものである。

 当会としては、改めて適正な在留資格の付与、収容期間の上限設定や司法審査の導入といった、国際人権基準を満たした入管法への速やかな改正を求める。

 さらに、今国会で明らかとなった、迅速に的確な難民認定が行われていない難民審査の状況を速やかに見直す等、必要な法改正を行うとともに、本改正法のもとにおいても、間違ってもノン・ルフールマン原則に反して、難民を本国へ送還し、その生命身体を危険に晒す事態が起きないよう難民認定手続きの厳正な運用を求める。

 今後も、当会としては、外国人の人権擁護の観点から、国際人権基準を満たした入管法の抜本的な改正を求めると同時に、本改正法のもとでの入管行政において、新たな人権侵害が起きることが決してないよう、外国人の人権擁護に全力を尽くす決意である。

2023年(令和5年)6月19日  

愛知県弁護士会       

会 長  小 川   淳