2021年に廃案となった入管法改定案(以下、「旧法案」という)に関して、当会は、旧法案の検討段階であった202012月1日付会長声明、および旧法案国会提出後の2021年4月30日付会長声明にて、問題点を指摘し到底容認できないことを表明した。

 ところが、旧法案の骨格を維持した入管法改定案が今通常国会に再提出される見込みとのことであり、難民申請中は送還が停止される規定(いわゆる「送還停止効」)について、3回目の申請以降は原則、適用しないとする改定も含まれているとされる。

 入管行政については、長きにわたり、国内外において懸念等が示され続けており、その問題は根深い。

 難民の保護に関しては、昨年11月の国連自由権規約委員会総括所見において日本における難民認定率の低さにつき懸念が示されており、保護されるべき者が保護されていない現状にある。

 また、入管収容についても、入管の裁量のみに委ねられている現状は、著しい体調不良を訴えている場合にすら身体拘束からの解放が実現されず、求めた医療にアクセスできずに命を落とすという事態が生じる危険なものである。名古屋出入国在留管理局における30代のスリランカ国籍の女性の死亡に関しては、名古屋第1検察審査会が、業務上過失致死罪の成否を再検討すべきと「不起訴不当」の議決を行っている。

 今、求められているのは、難民認定すべき場合には難民認定がされるための制度の構築、在留を認めるべき場合に確実に在留を認める基準の導入、入管収容について収容期間の上限および効果的な司法審査等を設ける改定等であり、もって人命や人の尊厳が尊重される制度の実現である。

 それにも関わらず、複数の報道において、再提出が予定されている入管法改定案には、送還停止効の制限が含まれているとされている。保護されるべきものが保護されていないなかで、難民申請中の者の送還を可能とすることは、迫害を受けるおそれのある地域への送還を禁じる「ノン・ルフールマン原則」(難民条約第33条第1)に反する結果を招くものであり、到底容認できない。

 また、入管収容についても、法案の報道では、収容期間の上限および効果的な司法審査を設ける等の必要な改定について、一切言及されていない。しかしながら、収容について入管の裁量のみに委ねつづけることは人命にすら関わる危険な状況を継続するものである。

 再提出が予定されている入管法改定案は、報道されている情報に限っても問題が大きい。

 当会は、これまで再三に渡って指摘した問題を維持した改定案の再提出に強く反対し、入管法の抜本的改正を求めるものである。

2023年(令和5年)2月8日   

愛知県弁護士会       

会 長  蜂須賀 太 郎