昨年10月、愛知県議会議員が「同性結婚なんて気持ち悪いことは大反対!」とSNSに投稿し、市民からの抗議を受け謝罪をした。ところが、報道によれば、同議員は、本年1月23日、再びSNSに「同性婚が気持ち悪いと言って何がいけないんですか」などと投稿した。

 報道によると、再度の投稿は、昨年の投稿を問題視した性的マイノリティ当事者からのコメントに対してなされたもので、同議員は、「まともな人が思うことをありのままに投稿しただけ」、「同性がキスしたりするのは、私のようなまともな人がどう思うかお分かりですよね」、「同性婚は気持ち悪いと思う人が沢山いるのに、そう言って何がいけないんですか!」などとも記載していた。

 同議員は、昨年、市民から抗議を受けた際には、「本当にこの度は申し訳ありませんでした。私には弁解の余地はありません。ただ謝るだけです」などと謝罪し、「今後どのような場であってもこのような発言はしないと約束する」と述べていた。しかし、今回の投稿は、その際に述べた反省の弁が、表面を取りつくろう心にもないごまかしに過ぎず、全く反省していないことを如実に示すものであった。

 上記投稿内容は、同性カップル等の性的マイノリティの尊厳を損なう差別的なものであり、性的指向が個人の人格的生存や幸福追求、プライバシーと密接にかかわることへの無理解を示したものである。

 そして、報道された内容を前提とすると、謝罪からわずか3か月余で、謝罪の言葉を反故にして差別的投稿を繰り返したものといえる。性的指向や性自認を理由とする差別にさらされ苦しんでいる当事者はもちろん、そうした差別の解消を願う広範な市民の憤りや落胆、不安感は言うまでもない。

 この出来事は一個人の問題ではない。昨年、同議員に抗議をした市民からは、昨年の投稿について議会や所属政党(当時)が公に処分をしなかったことが、差別的投稿をエスカレートさせた背景ではないかと指摘する声が上がっている。

 日本社会にはいまだ性的マイノリティを侮蔑や嘲笑の対象とするような差別感情が根強く残っている。愛知県議会は同議員に公の処分を課さず、結果として同議員に再度の差別的投稿を許している。このような事態からすれば、愛知県議会内にも未だ性的マイノリティに対する差別感情が存在していると評価されてもやむを得ないと思われる。

 当会は、同議員の差別的投稿に強く抗議する。さらに、同議員だけでなく、愛知県議会及び愛知県内の地方議会における全政党・全議員、県知事、県内各市町村長に対し、これを契機として、性的マイノリティに向けられる差別感情や、婚姻の平等(同性婚)など政策上の差別的課題を解消するために、差別的言動に反対する姿勢の表明や、性的マイノリティに関する研修の実施、県内外で生活する性的マイノリティがさらされる差別問題の解消に向けた同取り組み等を積極的に進めることを要望する。とりわけ、県においては、愛知県人権尊重の社会づくり条例(令和4年愛知県条例第3号)第15条が定める責務を果たすよう求める。

 当会としても、性的マイノリティに向けられる差別を払拭し多様性を尊重する社会の実現に向けて、取り組みを推進していく所存である。

                      2023(令和5)年2月3日

                      愛知県弁護士会

   会長 蜂須賀太郎