鹿児島地方裁判所(中田幹人裁判長)は、2022年(令和4年)6月22日、いわゆる大崎事件第4次再審請求事件につき、再審請求を棄却する決定をした(以下「本決定」という。)。

 大崎事件は、1979年(昭和54年)10月12日、鹿児島県大崎町の農道脇に転落し前後不覚で道路上に横臥していた義弟が、その後近隣住民らによって自宅に運ばれたところ、原口アヤ子氏(以下「アヤ子氏」という。)が、元夫らと共謀の上、義弟を殺害し遺体を遺棄したとされる事件である。アヤ子氏は、逮捕時から一貫して無罪を主張してきたが、「共犯者」らの自白等により懲役10年の有罪判決を受け、服役することとなった。  

 その後、アヤ子氏は冤罪を晴らすため再審を請求し、これまで第1次再審請求審決定(2002年(平成14年)3月26日鹿児島地裁)、第3次再審請求審決定(2017年(平成29年)6月28日鹿児島地裁)及び同即時抗告審決定(2018年(平成30年)3月12日福岡高裁宮崎支部)と、実に3度も再審開始決定を勝ち取ってきた。しかし、再審開始決定が出るたびに、検察官が即時抗告・特別抗告を申し立て、これを受けた最高裁は、2019年(令和元年)6月25日、再審開始決定を取り消し、自判で再審請求を棄却した。  

 第4次再審請求審では、臨床医学、供述心理学等に関する専門家5名の証人尋問などの審理を実施し、これらの新証拠によって、義弟が転落事故によって致命的な傷害を負い、近隣住民らが連れ帰った頃には義弟は死亡していた可能性が高いこと、つまり殺人事件が存在しなかったことを明らかにするものであったが、本決定は、最高裁判所の決定に追従し、再審請求を棄却したのである。

 本決定は、新旧全証拠の総合評価を適切に行っておらず、白鳥・財田川決定に明らかに違反しているほか、死亡時期に関する検討も不十分であって、到底是認できない。

 アヤ子氏は現在95歳の高齢である。当会が支援する名張毒ぶどう酒事件において、2005年(平成17年)再審開始決定が出た後、検察官が異議を申し立てたことにより再審開始決定が取り消され、奥西勝氏が存命中に冤罪を晴らすことができなかったことを思い起こすと、一刻も早く再審開始決定がなされ、再審公判が開かれることが強く望まれる。

 当会としても、えん罪防止の実現を目指し一層の努力を続ける決意である。  

2022(令和4)年6月22日  

愛知県弁護士会       

会 長  蜂須賀 太 郎