社会の複雑化、多様化に伴い地方行政の果たすべき役割は増しており、特に福祉行政におけるセーフティネット機能は住民の基本的人権にも直結し、法に基づいた適切な提供が強く要請される。他方、弁護士会も、基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を全うするためには、市民に対し必要な法的情報や法的救済の途を広く行き渡らせることが必要であり、そのためには住民福祉の担い手である地方自治体との連携が求められる。
 これまで当会は、市民向け法律相談や行政職員向け研修講師等において、県下の自治体と連携を図り、その関係を深めてきた。また、平成30年1月に立ち上げた「行政連携センター」では、行政との窓口機能を果たすだけでなく、自治体内弁護士の採用に向けての取組等も進めてきた。連携方策は途上にあるが、すでに空き家協定は12市町村、災害協定は7市町村に及び、その他高齢者分野では法福連携協定や地域包括ケアシステムへ参与し、令和元年3月には名古屋市との間で政令市では全国でも初となる包括連携協定を締結している。
 しかしながら、住民の生活様式等の多様化に伴い行政が果たすべき役割が増加・複雑化していることに鑑みれば、住民福祉の増進のため、自治体等行政と当会との関係をこれまで以上に強化をする必要があり、さらに行政連携センター開設から3年の今、新型コロナウイルス感染拡大への対応等の実情を踏まえて、新たな取組も含めた連携を、より積極的に進めていくことが重要であると考える。
 自然災害発生時や、今回の新型コロナウイルス感染症拡大等、有事における自治体、当会、相互の対応を顧慮した時、自治体等行政と当会とが、平時において有事に対する備えをし、協働のための関係を構築しておくことが、住民福祉の増進のために肝要である。
 当会は、新型コロナウイルス感染拡大後における経験を踏まえ、迅速に対応していくためオンライン等情報環境を整備しつつ、行政連携センターの活動を一助として、法による支配の実現を着実に前進させる決意の下、次の4つの施策を進めていく所存である。
 (1)一般市民に向けた取組の連携
 (2)行政職員に対して、法的助言等により支える取組
 (3)取組みを市民に届けるための情報発信での連携
 (4)各分野での連携を実行可能とするための組織間の包括連携協定の締結

 
                  2021年(令和3年)3月15日
                      愛知県弁護士会
                       会長  山  下  勇  樹