新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、我が国及び愛知県内でも日々感染拡大の一途をたどっている。本年4月7日に公示された緊急事態宣言は、同月16日、対象区域を愛知県を含む全都道府県と拡大するに至った。

感染拡大防止のための外出自粛、在宅勤務の促進、休校、雇用環境悪化、経済状態悪化の中で、不安やストレスなどによりドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待の増加・深刻化が懸念され、本年4月5日にはアントニオ・グテーレス国連事務総長が、また、同月6日にはプムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長が、新型コロナウイルス感染症による危機下において女性に対する暴力が急増していることに関し、各国への重点的な対応を要請する声明を相次いで発出した。また、国連・子どもの権利委員会は、同月8日、子どもたちが家庭におけるいっそうの身体的及び心理的虐待にさらされているとして、具体的措置を求める声明を発出した。

我が国では、阪神・淡路大震災や東日本大震災という災害時において、DVや虐待の増加・悪化があり、深刻な問題となったことが内閣府男女共同参画局等の調査からうかがえ、新型コロナウイルスによる危機下においても同様の問題が懸念されている。

政府は、DV被害者支援を継続的かつ迅速に実施すべく、DV被害者に対する相談と保護に力を入れる対策を打ち出し、虐待についても支援対象児童等の状況変化の確認等を行うことや啓発等の対策が打ち出されているところではあるが、避難先の増設と必要な人員確保、被害者支援等の実現のための財源の確保、外出自粛要請下でも必要な一時保護の躊躇なき実現と避難先の確保、被害実態の積極的な把握、相談時や避難先での感染防止対策の徹底、避難後の生活の中長期的支援など対応すべき課題はなお多い。

本年4月20日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うべく一人あたり一律10万円の特別定額給付金(仮称)が支給されることとなり、同対策においては、加害者による追跡等を免れるべく、やむをえず住民票を移さないまま別居しているDV被害者及び同伴する子が同給付金を受け取るための配慮もなされている。ただ、「配偶者からの暴力を理由に避難している方の申出の手続き」の申出期間は4月24日から同月30日と短く、被虐待児(虐待等を理由に児童養護施設等に入所している児童等)への対応については手続案内がなされていないことから、給付金の申請手続について至急周知を図るとともに、手続の漏れ等により給付金を受給できなかった方に対しては再度の機会を設けるなどの事後的な救済方法を検討し、DV被害者及び同伴する子や被虐待児に対して同給付金が簡易迅速かつ安全・確実に支給されるよう一層の配慮が求められる。


 当会では、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、法律相談センターでの面談相談を休止しているが、女性に対する暴力被害及び子どもの人権に関する電話相談を継続するとともに、本年4月27日から、まずは、当面1か月間、無料電話相談を実施し、DV・子どもの専門相談枠を設けることにより、新型コロナウイルス感染拡大下におけるDVや虐待の相談に対応している。
当会は、今後も政府や地方自治体の動向を注視しつつ、関係機関と連携・協力し、DVと虐待の問題に取り組む所存である。

2020年(令和2年)4月27日 

愛知県弁護士会       

 会 長  山 下 勇 樹