本年度は、令和時代の新たな幕開けであるとともに、平成の最後の年でもあった。平成の30年は、地球温暖化問題に象徴されるように環境問題が私たちの暮らしに大きな影響を及ぼしかねないことを明らかにした。また、政府は再生可能エネルギーを主力電源化する政策を打ち出すなど、東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故を契機にエネルギー問題が私たちの暮らしを大きく変えるようになった。当会では、温暖化問題やエネルギー問題を含む環境問題は、基本的人権にかかわる問題であると捉え、これまでも調査やシンポジウムの開催など、様々な取組をしてきた。

 近年は、夏の最高気温や平均気温が記録的な暑さを観測するなど過去にない猛暑が続き、令和最初の冬も、各地で観測史上最高気温を更新した。異常な暑さや降雪が極端に少ないことなど、生活の中で多くの変化を実感するようになってきた。また、地球温暖化の影響が指摘されるものとして記憶に新しいところでは、台風の大型化や集中豪雨の増加などが挙げられる。これらの気象の変化は、災害の増加に直結するものである。また、地球温暖化は、これまで日本には無関係であった病気等のリスクの増加といった健康問題にもつながることが指摘されており、さらには、生物多様性の喪失や生態系・植生の変化を引き起すことが指摘され、それによる農林水産業等への影響が懸念されるなど、多くの人々の生活に影響をもたらすことは避けられないといえる。

 国外に目を向けると、ヨーロッパでの異常な熱波による健康被害やアフリカ東部から発生した大量のイナゴによる国を越えた農業被害、森林の大規模な喪失、氷河や北極海の海氷の急激な消失など、もはや国レベルの取組では対応困難な深刻な環境問題が多数生じている。

 当会は、これまでも多くの公害や環境問題に関わってきた。四大公害の社会問題化から半世紀以上が経過する中で、当会の取組も公害から環境問題へと広がりを見せている。そして、COの排出に伴う温暖化問題などの近時の環境問題は、国境や地域を越え、かつ、被害者と加害者の区別がつかないような問題状況となりつつあり、その対策には人々の意識や社会の在り方の変革が求められるようになってきた。

 当会としては、このような国内、国外の様々な温暖化や気候変化に起因するような問題など、新たな環境問題に対して憂慮するとともに、これらは人権問題であるとの認識から、これからの令和時代に向け、さらに取組を継続・強化していきたいと考えるものである。

2020(令和2)年3月30日

愛知県弁護士会 

会長 鈴木 典行