本日、東京拘置所と福岡拘置所において、死刑確定者各1名に対して死刑が執行された。今回の死刑執行は、昨年12月27日の執行に続くものであり、山下貴司法務大臣が就任してから2度目の執行である。2012年12月に第2次安倍内閣となってから、これで合計38名という多数の死刑執行がなされたことになる。

 当会を含めた多数の弁護士会及び日本弁護士連合会は、昨年の死刑執行の際にも、これに対する抗議声明を発表し、死刑執行を停止するよう求めた。それにも関わらず、山下法務大臣が再度の死刑執行を命じたこと、及び再審請求中の者への執行が含まれていることは極めて遺憾であり、当会は、今回の死刑執行に対し、強く政府に抗議する。

 死刑は、かけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であり、死刑の廃止は国際的な趨勢である。2018年12月末現在、法律上・事実上の死刑を廃止国は142か国に及び、世界の中で3分の2以上を占めている。そして、OECD(経済協力開発機構)加盟国35か国のうちでも、死刑を残置しているのは、日本、米国、韓国の3か国だけであるが、韓国は事実上の死刑廃止国であり、米国も多くの州で死刑廃止ないし死刑の執行停止が宣言されており、死刑を国家として統一的に執行しているのは、日本だけである。

 2016年12月に国連総会は死刑存置国に対する死刑執行停止を求める決議を加盟国193か国のうち117か国の賛成により採択した。従前より、日本政府は、国連自由権規約委員会や拷問禁止委員会などから、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきであるなどの勧告を繰り返し受け続けている。

 判決には常に誤判の恐れがつきまとうところであり、日本においては、これまでにも4件の死刑確定事件についての再審無罪が確定している。誤って死刑が執行されればそれは二度と取り返しのつかないことであり、絶対に回避されなければならない。

 その後も、2005年4月に名古屋高等裁判所で、いわゆる名張毒ぶどう酒事件の再審開始決定が出されており、2014年3月に、静岡地方裁判所で、いわゆる袴田事件の再審開始決定がなされているが、いずれも、その後に取り消されている。死刑判決の再審請求という重大な裁判においても、裁判所において結論が分かれることも経験したところである。私たちは、えん罪の恐ろしさを通じて、死刑制度の問題についても学んだところである。また、死刑冤罪には、死刑か無期懲役かという量刑判断における誤判のおそれもあり、再審中の死刑確定者については、その防御権が尽くされたといえるのかとの疑問も残る。

 こうした死刑制度の重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、日本弁護士連合会においても、2016年10月7日に開催された人権擁護大会において、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(いわゆる福井宣言)を採択し、その中で2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであると宣言した。

 当会としても死刑制度の廃止に向けて議論を深め、死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求めるものである。それが実現するまでの間、死刑に関する情報を国民に公開し、死刑執行の停止を求め続けることをここに改めて表明する。

2019年(令和元年)8月2日

愛知県弁護士会       

会 長  鈴 木 典 行