本日、大阪拘置所において、死刑確定者2名に対して死刑が執行された。内1名は再審請求中のものであった。今回の死刑執行により、本年は15名もの死刑執行がなされたことになる。山下貴司法務大臣が本年10月に就任してから初の執行であるが、2012年12月に第2次安倍内閣となってから、合計36名に対する死刑執行がなされたことになる。

 当会は、本年7月6日と26日の死刑執行の際に、これに対する抗議声明を発表し、死刑執行の停止を求めた。それにも関わらず、山下法務大臣が本日の死刑執行を命じ、死刑が執行されたことは極めて遺憾であり、当会は、今回の死刑執行に対し、強く政府に抗議するものである。

 死刑は、かけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であり、死刑の廃止は国際的な趨勢である。2017年12月末現在、法律上・事実上の死刑廃止国は142か国に及び、世界の中で3分の2以上を占めている。そして、OECD(経済協力開発機構)加盟国35か国のうち死刑を残置しているのは、日本、米国、韓国の3か国だけである。しかも、韓国は事実上の死刑廃止国であり、米国も多くの州で死刑廃止ないし死刑の執行停止が宣言されており、死刑を国家として統一的に執行しているのは、日本だけとなる。

 国連総会は、2016年12月、加盟国193か国のうち117か国の賛成により、死刑存置国に対する死刑執行停止を求める決議を採択した。日本政府は、国連自由権規約委員会や拷問禁止委員会などから、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきであるなどの勧告を、繰り返し受け続けている。

 裁判には常に誤判の恐れがつきまとう。日本の裁判史上、死刑確定事件について、これまでにも再審無罪が4件確定している。取り消されてはいるが、2014年3月の静岡地方裁判所での再審開始決定(いわゆる袴田事件)、2005年4月の名古屋高等裁判所での再審開始決定(いわゆる名張毒ぶどう酒事件)がなされており、死刑判決の再審請求事件という重大な裁判においても、裁判所において判断が揺れることも、誤判の恐れを示しているところである。また、死刑か無期懲役かという量刑判断における誤判のおそれや、再審請求中の死刑確定者については防御権が尽くされたといえるのかという疑問も残る。誤った判決にもとづき死刑が執行されればそれは二度と取り返しのつかないことであり、絶対に回避されなければならないことである。私たちは、えん罪の恐ろしさを通じて、死刑制度の問題についても学んだところである。

 こうした死刑制度の重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、日本弁護士連合会は、2016年10月7日に開催された人権擁護大会において、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言(いわゆる福井宣言)を採択し、その中で2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであると宣言した。

 当会としても死刑制度の廃止に向けて議論を深め、死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求めるものである。それが実現するまでの間、政府に対し、死刑に関する情報を国民に公開することと、死刑執行の停止を求め続けることをここに改めて表明するものである。


                   2018年(平成30年)12月27日    

                      愛知県弁護士会

                          会 長  木 下 芳 宣