平成29年4月19日、裁判所法が改正され、第71期司法修習生以降の修習生に対する修習給付金制度が創設されました。そして、同年12月に司法修習が開始された第71期司法修習生に対し、同制度に基づく修習給付金の支給が開始されています。

 修習専念義務を課されている修習生にとって十分な給付金額といえるか依然として、課題なしとは言えないと思いますが、新たな修習給付金制度の創設は、市民の皆様、衆参両院はじめ関係各位のご理解とご支援、そして最高裁判所、政府及び法務省のご英断に篤く感謝申し上げます。

 しかしながら、上記改正裁判所法では、新第65期から第70期までの司法修習修了者(以下「谷間世代」といいます)合計約1万1000人に遡及適用されていません。

 また、谷間世代のうち、新第65期司法修習修了者の第1回目の貸与金返還期限は平成30年7月25日に迫っています。万が一にも、このまま貸与金の返還が一部でも開始されてしまうと、司法修習期間中の給費に関する不平等・不公平が、是正されず、また是正を実現する方策が複雑となって、これまで以上に谷間世代が蔑ろにされてしまう危険性があります。谷間世代に対する是正措置は喫緊の課題です。

 新第65期の司法修習修了者を含め全ての司法修習修了者は、司法に求められる期待に応えようと、法曹の使命と自覚し市民の権利を守るために日々活動をしていますが、貸与金の返還が開始されれば、これまでのような活動が制限される危険性があります。当会にて実施された、谷間世代による意見交換会でも、「困っている人を助けたいと思って弁護士になったが、自分がマイナスを抱えている中で、費用対効果度外視で事件を受けたり様々な活動に取り組んだりすることがなかなか難しい」等、谷間世代の市民の権利を守るための活動に悪影響が出てきている旨の意見が複数ありました。谷間世代の意見からも明らかなように、谷間世代への不平等・不公平を是正することは、市民の権利の擁護と密接に関係しています。

 法の支配を実現し、市民の権利を守るとともに、三権の一翼を担っている司法の責務は大きく、その使命の重要性や公共性に鑑み、司法修習制度は、高度な専門的能力と職業倫理を有する法曹を育成するために、国によって創設・運営されている極めて重要な制度です。今回の裁判所法の改正の趣旨は、「法曹人材確保の充実・強化」にありますが、法曹人材を確保するには、法曹志願者の増加だけでなく、現在の法曹の流出の防止も同時に行なう必要があます。谷間世代に対する是正措置を講じないことは、谷間世代とそれ以外の世代と分断させ、さらには、法曹及び法曹志願者の減少を招いて一層の有為な人材の確保ができなくなる可能性が高いものです。

 当会は、これまでと同じく、日弁連や全国の弁護士会と一体となって、国及び関係機関に対し、遅くとも平成30年7月25日までに、谷間世代への不平等・不公平を一律に解消するための抜本的な是正策を速やかに講じることを求め、併せて、谷間世代への抜本的な是正策の実現が間に合わない場合に備え、新第65期司法修習修了者の貸与金の返還開始日を延期することを求めます。

                      2018年(平成30年)2月9日

                         愛知県弁護士会        

                             会 長 池 田 桂 子