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~法教育Web授業に挑戦!!

サマースクール中止と新たな試み!
~法教育Web授業に挑戦!!

会報「SOPHIA」令和2年8月号より

法教育委員会 サマースクール部会長 大 杉 浩 二

1 サマースクール中止

 法教育委員会は、サマースクールを毎年8月頃に実施していますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から4月初旬の時点で中止と判断しました。
 愛知県内の学校の新学期の休校措置が急遽決定され、夏にも新型コロナウイルス感染が収束しているのか見通せない状況で、例年のように多くの子どもたちを弁護士会館に招くサマースクールを開催することはできないと考えました。既に委員会内の各チームにて講座準備が進められていた中での苦渋の決断でした。
 毎年サマースクールを楽しみに参加してくれる子どもたちが多く、中止とすることは非常に残念でしたが、実際に新型コロナウイルス感染が再拡大している状況をみると、判断は間違っていなかったと思います。

2 法教育Web授業の模索

 サマースクールは中止となりましたが、コロナ禍の中においても子どもたちに法教育に触れてもらう機会を設けられないか、Web形式での授業の実施を模索しました。
 緊急事態宣言が出され、多くの裁判期日が延期となり、弁護士としての活動にも先行きに不安があるような状況の中、サマースクールの各講座のチーム長を務める委員を中心にオンライン会議で前向きに議論を重ね、5月にはWeb授業を実践する方針を固めました。
 当委員会では、これまで毎年のサマースクールや講師派遣に多くの委員が関与し、法教育授業の経験を積み重ねてきました。しかし、Web形式での授業は全く新しい取組です。大多数の委員は当初オンライン会議にも慣れない中、まさに手探りで準備を進めました。
 サマースクール部会内に授業内容を検討する「授業案チーム」と、Web授業におけるオンライン設定等を検討する「ルール・技術チーム」を新たに設け、各チームを委員会全体でサポートするという体制をとりました。

3 授業案チーム

 直接対面して行う授業と異なり、パソコン等の画面を通して行うため、授業内容もWebに適したものにする必要があります。中弁連法教育委員会では、童話「アリとキリギリス」を題材とした主権者教育動画教材を作成しており、今回のWeb授業においてもその動画教材を用いることにしました。

スクリーンショット (23).png

【アリとキリギリス動画教材の一場面】

 授業案チームでは、中弁連法教育委員会で動画教材作成に深く関与していた高井洋輔委員を中心に、Web形式での授業の進行案を検討しました。Web形式でもいかに子どもたちを授業に引き込むか、積極的に発言をしてもらうか工夫を重ねました。

4 ルール・技術チーム

 当委員会では、サマースクールでも学校講師派遣でも、各場面で子どもたちに少人数のグループに分かれてグループ毎に意見交換を重ねてもらい、各グループの議論経過を発表してもらう形式を中心にしています。弁護士が各グループに寄り添って議論をサポートしながら、学校の授業とは違って実際の社会の問題では必ずしも正解が一つとは限らないこと、様々な価値観を知った上で自分の考えを持つことの大切さについて、子どもたちに知ってもらうことを一つの目的としています。
 今回のWeb授業では、世間でも広く使われているZoomを利用することにしました。会議中に全体から複数のグループに分けたり再度全体に戻したりできる機能があり、普段の法教育授業と同じ方法をとれるためです。
 子どもたちにZoomにどうやって参加してもらうか、授業の中で動画教材が円滑に放映できるか、接続不具合の際の連絡手段をどうするか、授業を陰から支援する多くの委員がリアルタイムで視聴するにはどうするか、ルール・技術チームでは、そうした未知の領域の課題を、須田悠花子委員や熊田憲一郎委員を中心に乗り越えてもらいました。
 実際に子どもたち向けに授業を行う前に、多くの新入委員に模擬生徒役を担ってもらい、弁護士内での模擬授業を複数回繰り返し、7月にはWeb授業の形が出来上がりました。

5 中学生向けWeb授業の実践

 先ずは当委員会と繋がりがあった特定の中学校担任教諭の協力にて生徒に案内していただき、Googleフォームにて申込みを受け付けて授業を行うこととし、8月3日に、中学3年生向けに初めてのWeb授業を実施しました。司会役を高井委員、グループ討論補佐役を細溝耕太郎委員、児島貴子委員が務め、参加者には自宅等からZoomに接続してもらい、動画を活用しながら授業を進め、グループ意見交換、議論発表を行いました。

 授業後のアンケートでは、親しみやすい動画でわかりやすい授業だった、他校の生徒や弁護士と意見交換ができる貴重な機会だったなど参加者全員から積極的な評価をいただけました。ただ、音声接続がなかなかうまくできなかった生徒もおり、接続テストのための準備に課題も見つかりました。

6 小学生向けWeb授業の実践

 翌8月4日には、小学生高学年向けにWeb授業を実施しました。鈴木愛子委員と関わりのある「あおぞら学童保育クラブ」の協力で実施に至り、司会役を児島委員、グループ補佐役を熊谷豊和委員、森川真樹委員、市川哲宏委員、久保明愛委員が務め、児童23名に学童内の複数の部屋から授業に参加してもらいました。同形式はWebによる学校講師派遣として活用できると考えています。アンケートでは同じく積極的な評価を得ましたが、小学生の場合は児童から積極的に発言してもらう工夫がより必要だと感じました。

 Web授業の技術動作は、両日ともに須田委員、熊田委員、後藤謙治委員が務め、3名で合計6台のPCを操作し、Zoomでの動画共有、グループ分け作業、視聴して支援する委員向けのWebexでの同時放映作業等を行いました。驚きの技術力です。

7 法教育Web授業本格実施に向けて

 当委員会では、今後、子どもたちに広く募集する形で法教育Web授業を本格実施していく予定です。
 新型コロナウイルス感染収束が見通せない中でも、可能な限りの法教育活動を行うべく、委員会全体で積極的にWeb授業に取り組んでいこうと考えています。