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教育が人生を変える!外国人教育最前線 ~NPO法人 シェイクハンズ~

会報「SOPHIA」 平成30年4月号より


人権擁護委員会 国際人権部会 部会員  森 上 未 紗

1  幼少期から20年以上日本にいるのに、漢字がまともに書けない、そんな外国人の事件を経験した会員は少なくないと思います。外国人子女教育の問題は、本人の資質にのみ帰責できるものではなく、外国人と共生していくために、日本が取り組むべき課題です。

 この問題は、教育を受ける権利等の人権に関わるものですが、弁護士による関与が少なく、問題意識も共有されてきませんでした。そこで、本年度は、外国人子女教育について知識を深めるため、支援を行っているNPOを紹介していきます。今回は、犬山にあるNPO法人シェイクハンズを訪問してきました。


2  名鉄小牧線楽田駅から徒歩2分程の場所にある教室に行くと、「こんにちは。先生何人?私は中国人!」と元気に声をかけられました。まず国籍を確認する様子から、国際色の豊かさが感じられます。

 シェイクハンズでは、小中学生を対象に、週3日、日本語を中心に学習指導をしています。現在、約60人が利用しており、ペルー、ボリビア、中国、フィリピン等にルーツをもつ子が多いようです。犬山市外の子については、送迎を行っています。
 この他にも、主要言語の違い等による親子間のコミュニケーション不足解消のための親子参加型の教室や、軽度の発達障害や不登校傾向にある子ども向けの教室もあります。


3 代表理事の松本里美さんがこの活動を開始したのは、お母さん的発想からでした。松本さんは、フェアトレードコーヒーを広める活動を通じて犬山市に多く在留するペルー人と交流するようになり、子どもたちの日本語能力が低いことが心配になりました。そこで、国際交流協会に子どもの日本語クラス設置を打診しましたが上手くいかなかったため、個人的に活動を開始し、活動を継続していくうちにNPOを作ることになりました。

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4 活動当初は、子どもたちが荒れており、学習する雰囲気ではなかったそうですが、訪問時、子どもたちは熱心に勉強をしていました。教室で勉強をがんばっている子どもたちは、進学面でほとんど問題がないそうです。

 松本さんをはじめとする支援者は、子どもの親とも積極的に関わるようにしており、リーマンショックで外国人失業者が急増した際には、週末に80人くらいの履歴書を書いたこともあったそうです。また、学校との間で子どもの受入れのための協議をしたり、子どもの状態を確認することなども行っています。
 現在の状況を作り上げるまでには、学習指導だけでなく、より踏み込んで子どもたちの環境を整えてこられたことが分かりました。


5 ただ、学習の場としての環境が整ったことで、逆に居場所をなくす子どもがいることには配慮が必要とのことです。在日外国人の間でも二極化が進んでいる印象があり、学習の場で居場所を見つけられない子どもたちとの関係では、最後の砦となるようにLINEでつながって連絡をとれるようにしておく等、頼れる存在となるようにしています。

6 「目の前の子どもやその家族を助ける」というシンプルだけれども大変なことを積み重ねておられる姿に、頭が下がりました。