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<外壁リフォーム工事を中心に>

工事見積書とリフォームトラブル
<外壁リフォーム工事を中心に>

会報「SOPHIA」令和3年 3月号より

消費者委員会 消費者関連法部会 部会長  平 野 憲 子

消費者委員会には、「消費者関連法部会」という部会があります。
 当部会では、日頃より消費者被害の救済・予防啓発にご尽力いただいている各消費生活相談窓口の相談員と当会会員とで、月に1回、定期的な勉強会を行うことを主な活動内容としています。

平成30年度からは、相談員と弁護士とで、一層顔の見える関係を構築し、消費者被害の予防や迅速な救済につなげるべく、年に2回、全国消費生活相談員協会中部支部との共催で、名古屋市消費生活センターで土曜日に部会を開催するなど、勉強の場を弁護士会館以外にも広げています。
 今年度2回目の名古屋市消費生活センターでの勉強会では、近時、水回り工事業者やリフォーム業者のトラブルが多発していることを受けて、標題のテーマで、纐纈誠一級建築士をお招きして、ご講義をいただきました。

まず、リフォームトラブル分野では、昔ながらの悪質リフォーム業者が存在するだけでなく、500万円に満たない住宅リフォーム工事については軽微な建設工事として建設業登録が不要(建設業法3条1項但書、同施行令1条の2)、100㎡以下の2階建て木造住宅については建築士の関与も不要(建築士法3条の3)、人口減少等により新築住宅市場が縮小傾向にあることを受け、専門知識や経験が少ない新規参入業者が増えていること等が、トラブル増加の背景にあるとのお話がありました。

トラブル予防のためには、1社だけの見積りは避け、3社以上の見積りを取ること(一式見積りでなく、明細見積りを求める)で、必要な工事の内容・使用材料・適正な数量単価を把握すること、塗装工事に伴って必要となる工事には、通常、足場工事、養生、高圧洗浄、シーラー塗布、塗装(主な塗料は2度塗り。中塗りと上塗りは、ちゃんと2度塗りなされたかを分かるようにするために色を変える)、樋等の塗装が考えられるが、これらが見積書に反映されているか(後から追加工事と言われないか)を確認すること、塗装の種類(耐用年数に影響)や金額、下地に適した塗料が使われているか、シーリング工事が必要な場合に同工事の記載があるか、シーリングの状態ごとの補修方法が適切かの確認が大切であるとのことでした。
 また、業者が「低額な工事だから」などと言って契約書すら作成しないこともあるが、トラブル予防のためには、必ず契約書の作成を求め、住宅リフォーム工事請負契約約款・打合せ資料・工程表の添付を求めることも大切とのことでした。

リフォーム工事は、高額になり、トラブルになることも多いので、紛争予防的に、当該工事と利害関係のない専門家への相談も選択肢に入れるとよいとのお話もありました。

塗装工事の工事中は、実際に見積どおりの塗料が使用されているか、塗料の缶を確認し、養生や下地処理、エアコンの配管の裏等塗りにくい箇所の塗装、シーリングの状況の確認もして、もし使用された塗料の種類や量を巡ってトラブルとなった場合は、施工者に対し、塗装メーカーからの出荷証明書の提出を求めることもできるので、検討するとよいとのことでした。