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京都コングレス・サイドイベント
~刑事手続における被害者参加とリーガルアクセス~

犯罪被害者支援連載シリーズ90
京都コングレス・サイドイベント
~刑事手続における被害者参加とリーガルアクセス~

会報「SOPHIA」令和3年 3月号より

犯罪被害者支援委員会 委員長  今 枝 隆 久

1 コングレスとは

3月7日から12日にかけて、国立京都国際会館において、第14回国連犯罪防止刑事司法会議(通称コングレス)が開催された。
 コングレスは5年に一度開催される犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議で、昨年4月に京都で開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のために今回の開催となった。
 このコングレスでは全体会合等の他に、犯罪防止・刑事司法分野における問題をテーマに様々な団体がサイドイベント(Ancillary meetings)を行い、日弁連犯罪被害者支援委員会も「刑事手続における被害者参加とリーガルアクセス」をテーマにサイドイベントを企画し、私も準備に携わった。

2 サイドイベントの内容

講演者は望月晶子弁護士(東京)、マイケル・オコンネル氏(世界被害者学会事務局長)、サミ・ネヴァラ氏(EU基本権庁(FRA)政策コーディネーター)、アールネ・キンヌネン氏(フィンランド法務省大臣特別補佐官)、モデレーターは齋藤実弁護士(東京)が務めた。
 まず、望月氏が「日本における被害者参加と被害者参加弁護士の役割」をテーマに講演を行った。日本の被害者参加制度の説明があり、被害者参加件数が10年で2倍以上になり、被害者参加人は被害者参加弁護士を付けられるが、国選被害者参加弁護士制度はあるものの、未だ国による経済的支援は不十分であり、被害者のリーガルアクセスを充実させるためには、国がより被害者のための経済的支援を充実させるべきであることを訴えた。
 次に、アールネ氏からフィンランドにおける被害者の権利と司法へのアクセスと題して講演が行われた。フィンランドでは被害者のための充実した施策が行われ、刑事手続では被害者は当事者としての立場を有し、また、起訴前の段階から法律扶助により弁護士の援助を受けることができる、とのことであった。
 その後、サミ氏からEUにおける被害者に対する司法と支援をテーマに講演があった。EUでは被害者に関するEU指令(2012年)の下、国境を跨いだ被害者支援が行われているが、2019年のEUでの基本権調査の結果、身体的暴力を受けた被害者の64%が警察等に通報していない、という実情が明らかになった。そこで、被害者の権利に関するEU一次戦略(2020-2025)が策定され、より強固な被害者の権利の確立を目指している、とのことであった。
 最後に、マイケル氏からオーストラリアにおける被害者の権利の状況について講演があった。特徴的なのは、オーストラリアの各州でコミッショナーが指名され、刑事手続において被害者の代理人として活動している。コミッショナーには犯罪被害者基金から報酬が支払われ、また、法律扶助制度を利用して弁護士を雇うことができる、とのことであった。
 その後、パネルディスカッションが行われ、今後の課題について議論された。そこでは、共通して未だ被害者が声を上げることの難しさが課題であり、そのためには一層、被害者のリーガルアクセスを充実させることが必要であることが明らかとなった。

3 さいごに

講演者はリモートでの参加で、トラブルも心配されたが充実した議論が行われた。この議論を糧に、さらに被害者支援を充実させ、またいつか、世界の人たちと被害者支援について意見交換できれば、と思った。