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野宿者総合法律相談

会報「SOPHIA」令和3年 1月号より

会 員  大 野 紗 智

令和2年12月14日午後6時30分頃から午後8時頃まで、若宮大通公園ゲートボール場において、上記相談会が実施されました。
 同公園の片隅に簡易なテントを建て、内部に2つの相談ブースを設けました。また、相談者との間には、ついたてを立て感染症対策を施しました。
 寒さが厳しく、同公園の照明も薄暗かったため、同公園はもの悲しい雰囲気に包まれていました。しかし、相談ブースは明るく照らされていたため、活気が感じられました。相談者は8名おり、住居も仕事もないという方が多くいました。年越しを控えているにもかかわらず、安定した生活基盤がないためか、相談を受ける前の相談者らは一様に疲労感漂う面持ちで不安げな表情を浮かべていました。
 なお、本相談会は、私たち72期会員の人権研修の一つでもあったため、私たちは相談担当者が行う各相談に立ち会う形で参加しました。

・相談事例等

本相談会は野宿者の方々も対象としていたため、生活保護受給に関する相談もありました。しかし、相談内容は、賃料やリース料の支払請求、交通事故、及び相続等多岐にわたりました。
 72期会員からは、生活保護申請拒否の相談が多いと思っていたが、相続等の一般的なものも多く、驚かされたとの声が聞かれました。

私自身が立ち会った相談は、以下のものでした。
 他人の土地に自分の荷物を置いていたが、土地所有者から荷物を早急に撤去するように求められ、困っているとのことでした。
 まず、相談担当者から、他人の土地には勝手に物を置くことはできず、撤去しなければならないと説明がなされました。
 次に、相談担当者は、相談内容に関することだけではなく、野宿者生活の期間、及び所持金の額等相談者の生活状況に関する聴き取りも丁寧に行いました。一般的な法律相談と異なり、相談者の生活への配慮を怠ってはならない点が特徴的で印象に残っています。
 相談者には、仕事も住居もなかったため、生活保護の受給を検討するよう勧めました。しかし、相談者が難色を示したため、通信手段の有無等を確認し、相談先を知らせるにとどまりました。名古屋市では、住居を有さなかった生活保護受給者は、一定期間、保護施設で共同生活を送ることになっています。そのため、共同生活に抵抗を感じ、生活保護申請をためらう方もおられるそうです。相談者が拒否する以上、強制はできませんが、非常に歯がゆい場面でした。

本相談会の開催にあたっては、当会ホームページにおける告知や、官公庁等への掲示では、対象者たる野宿者の方々に対して相談会の開催が伝わらないため、一枚一枚ビラを配って周知されたそうです。
 寒さ厳しい中、相談者らが集まったことを踏まえると、どこまでも野宿者の方々の目線に立った法律相談会を開催することが、相談者数の増加につながり、一人一人を必要な支援へとつなげられるのだと実感しました。