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模擬法律相談に参加して

会報「SOPHIA」令和2年12月号より

名古屋大学法学部4年 大 﨑 美 優

 今回私が参加させていただいたのは、弁護士役の学生が15のグループに分かれ、依頼人役の先生方を相手に法律相談を体験するというものでした。テーマは「離婚」、「相続」、「賃貸借」であり、オンラインで議論をしながら準備をして本番に臨みました。
 準備段階では、大半の学生が「離婚」、「相続」、「賃貸借」といった、いわゆる一般民事の問題に直面したことはないうえ、法律相談の経験もないことから、相談者の気持ちを想像しながら、想定質問を考えて回答を用意することは非常に難しいことだと感じました。また、当日は、予想していなかった質問をされたり、法律だけでは解決できない問題に直面したりと、大苦戦でしたが、普段の学習では得られない緊張感の中で物事を考え、判断するという貴重な体験となりました。
 今回の模擬法律相談を通して私が学んだことは大きく2点あります。1点目はコミュニケーションの重要性、2点目は経験に基づく現場思考の重要性です。
 1点目のコミュニケーションの重要性は、模擬法律相談の際だけでなく、座談会においても強く感じたことです。法律相談に来る相談者の方々は法律のプロではないため、法的アドバイスに必要な情報を漏れなく話してくれるわけではありません。また怒りや悲しみといった感情から、主観的にお話をされることもあります。弁護士は気持ちに寄り添って信頼を得られるように努めながらも、客観的な情報を聞き出して、話を進めていくことが必要です。こうした実際の現場では、皮肉にも、普段学習している難しい法律用語は役に立ちません。専門家であるからこそ、相談者の気持ちや要望を汲み取りながら、難しい用語を平易な言葉で分かりやすく伝えることのできるコミュニケーション能力が求められていることを痛感しました。
 2点目の経験に基づく現場思考の重要性は、特に模擬法律相談と講評の中で感じたことです。先生方は、これまでの経験に基づいて質問をされていましたが、それらは実際に現場に立たないと想像できない「生の声」でした。また、予想外の質問をされた際には焦りを感じ、できるはずの回答でさえ窮する場面もありました。普段の座学は、時間や気持ちに余裕のある状況だったことを気づかされ、現場で考えることの難しさがわかりました。
 これら2点は実際に体験することでしか学べないことです。私は以前から、特に弁護士になりたいと考えていましたが、今回の体験を通して、より一層その仕事の面白さを感じるとともに、今回得たことを今後の学習に活かし、将来に繋げていきたいと決意を新たにする絶好の機会になりました。
 最後に、「インターネット等で情報を持っている相談者にどのような付加価値をつけて話をするのかを考えなければいけない」、「弁護士はカウンセラーではないから、どこかで線引きをして法律家としての仕事をしなければならない」という2つのアドバイスが特に印象に残った言葉です。「法のプロとしてどうあるべきか」という課題に真摯に向き合う姿勢が伝わってきました。私もその問いを常に念頭におきながら勉強に励んでいきたいと思います。
 この度は貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。