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フィリピンの家庭裁判所の手続を学びに

会報「SOPHIA」 平成31年4月号より

国際委員会 委員  根ケ山 裕子

フィリピン共和国首都マニラのラスピニャス市にある法律事務所DAVID & DE GUIA LAW OFFICESで、2月18日から22日までの5日間にわたり、インターンとしてフィリピンの婚姻無効、外国で成立した離婚の承認手続等を勉強してきました。

フィリピンでは離婚制度がないため、日本人とフィリピン人夫婦が離婚するときに、日本では協議離婚ができても、それがフィリピンの裁判所の承認を受けなければ、同国内で婚姻が解消されたことにはなりません。

そのため、例えば、前婚の解消手続をしないまま、フィリピン人女性が別の日本人男性と内縁関係になり、子どもができると、フィリピン国内において、前婚の嫡出推定が及ぶために、内縁の日本人父はその子どもを認知することはできません。

私は児童相談所で常勤弁護士をしており、日ごろの業務の中で、そんな子どもたちをたくさん見てきたことから、フィリピンでの手続を学びたくてインターンシップに参加しました。

実際に裁判傍聴をしたり、事件記録を読むと、離婚の承認の裁判において、有効な離婚をした事実や日本の民法を立証することのハードルが高いことが分かりました。

現状では、離婚が成立した事実を証明するために、戸籍謄本だけでなく離婚届の受理証明書、在マニラ日本大使館が発行するDivorce Certificate等が英語訳付きで裁判所に証拠として提出されていました。

英語にかなり苦戦しましたが、外国の裁判の仕組みの違いや文化の違い等を学ぶことができました。裁判官と面会したり、公設事務所や留置所も見学したり、よいトレーナー弁護士にも恵まれ、充実した1週間でした。今後のフィリピン人の親子の支援に生かしていきたいと思います。