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「SNS・アプリ等を経由した海外投資詐欺、暗号資産(仮想通貨)詐欺被害全国一斉110番」を実施しました

会報「SOPHIA」 令和3年 10月号より

消費者委員会 委員 サクラサイト被害弁護団(愛知)事務局長 鵜 飼 雅 成

1 はじめに

 サクラサイト被害全国連絡協議会の呼びかけにより、10月4日、5日を中心に、全国24地域において「SNS・アプリ等を経由した海外投資詐欺、暗号資産(仮想通貨)詐欺被害全国一斉110番」が実施されました。当会では、10月4日の午前10時から午後4時まで、サクラサイト被害弁護団(愛知)との共催で実施しました。

2 被害の内容

 SNSやアプリをきっかけに海外投資や暗号資産への取引に誘われ、金銭を詐取される被害が増加しています。被害の特徴としては次のような点が挙げられます。

・被害者は、アプリ(マッチングアプリ、語学学習アプリ等)やSNS(Facebook、Instagram)を通じて相手方と知り合う

・相手方からLINEに誘導され、LINE上でやりとりをするようになる

・相手方は、外国人を名乗る者や海外在住を称する者が多い

・相手方は様々な方法で被害者の信用を得ると、被害者に海外のFXや暗号資産への投資を勧める(恋愛感情や親切心を利用する事例や、途中利益が出ているように見せかけるなどして成功体験を積ませる事例等があります)

・利益が出ても出金のために追加費用が必要と言われたり、相手方と連絡が取れなくなるなどして、結局、返金を受けられなくなる

 このような被害に関しては、金融庁・消費者庁・警察庁が連名で注意喚起をしている他、国民生活センター、愛知県、名古屋市等からも注意喚起が出されていますが、被害は後を絶ちません。

 今回の110番でも、当会に寄せられたものだけで22件の相談がありました。被害額は1000万円を超えるものが複数あり、最高額は2000万円と多額の被害が生じていることが分かります。

3 被害救済に向けて

 アプリやSNSを経由し、連絡手段もLINEのみということが多いため、被害者は相手方との間で直接の面識がないのが通常です。これらのアプリ等の運営業者は、登録者の情報開示に応じないことが多いため、被害者が被害に気付いた後も、まず相手方を特定する段階で支障が生じます。

 送金手段に暗号資産が用いられる場合には、送金先の特定にも困難が生じます。銀行振込が用いられている場合は、金融機関に対し振り込め詐欺救済法による口座の利用停止措置を求めたり、口座開設者を特定するための情報開示を受ける方法を取り得ますが、一部金融機関はこれに応じない例があることも報告されています。

 このような事情が、被害者の救済の障害となっています。今回の110番でも、被害者の中には、警察、消費生活センター、弁護士等に相談したものの、解決困難と言われ、被害回復をあきらめている方も多くいました。

 被害者の被害回復を実効化するには、以上のような被害回復の障害を取り除くべく、法制度や実務運用の改善に向けた活動が不可欠です。すでに一部のSNS業者に対し、協議の申入れを行っていますが、今回の110番で明らかとなった被害実態も活かしながら、このような活動に取り組んでいきます。