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社会貢献としての寄付

中部経済新聞令和6年8月掲載

人権救済基金運営特別委員会委員長 横山貴之

 愛知県弁護士会には、「人権救済基金」という基金があります。この基金は、弁護士が人権侵犯の救済や人権擁護活動の充実に取り組む上で必要な資金援助に充てることを目的として設置されました。設置は平成7年ですので、来年、ちょうど30年を迎えることになります。

 弁護士は基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、そのために多種多様な活動をしています。その一環として、社会的に弱い立場にある方々の人権が侵害されていると考えられる事件にも多くの弁護士が積極的に取り組んでいます。これらの事件に対し、弁護士は弁護士費用はもちろん、ときには実費すら依頼者から受け取らず、いわゆる手弁当で被害の救済に取り組んできました。

 このような弁護士の姿勢には学ぶべき点も多くありますが、他方で弁護士に時に困難を強いることにもなり、こういった活動から足を遠ざけるきっかけとなって、将来の人権擁護活動を先細りさせる懸念があります。

 そこで、人権擁護活動に取り組む弁護士の負担を少しでも軽減させることで、より多くの弁護士がこれらの活動に取り組み、人権が尊重される社会が実現されることを願って、人権救済基金が設置されました。これまで、公害や薬害、犯罪被害、再審、障がい者、難民などに関する様々な事件について基金からの支援がなされ、多くの方の人権が守られてきました。

 経済的な理由で弁護士費用や実費の負担が難しい方に対する支援としましては、法テラスによる費用の立替制度もありますが、条件を満たさない等の理由で利用出来ないケースもあり、そのようなケースも含めて人権救済基金による支援が続けられてきたものです。

 この人権救済基金は皆様からの寄付によって維持されています。無事に事件が解決し、実際に損害賠償金等が得られた場合には、基金への償還がなされることもありますが、そのようなケースは決して多くはなく、基金は全体的に減少傾向にあります。人権擁護活動が活発化し、基金が積極的に活用されることは歓迎すべきことでありますが、同時に財政的な心配もしなければならないというジレンマも生じます。基金を維持し、多くの弁護士が積極的に人権擁護活動に取り組めるよう、皆様からの寄付を是非お願い致します。

 海外では公益的な寄付は社会貢献の一環として高く評価されているようであり、今後、日本でもそのような寄付文化が根付いていくことを願っています。人権救済基金へのご寄付いただける場合には、当会か、お近くの弁護士にお気軽にお声がけください。皆様からのご寄付をお待ちしております。