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刑務所出所者との関わり方

中部経済新聞令和6年1月掲載

弁護士 栗島 渉 

 刑務所から出所した者は、その後、どのように生活を送っていくのか。頼れる親族が居なかったり、帰る場所が無かったりする者は少なくない。出所者の社会復帰及び再犯防止を図るためには、出所後の生活環境を整備することが重要である。

 このような問題を解決するために、2019年度から、愛知県弁護士会は「よりそい弁護士制度」を実施している。本制度を利用すれば、「よりそい弁護士」の活動に対して一定の費用が支払われる。

 出所予定者からの申込みを受けて選任された「よりそい弁護士」は、出所前から出所予定者と面会することによって、出所後の生活環境の整備に向けて活動できる。想定される活動例は、帰住先の確保、就労先の確保、生活保護申請の準備など様々であり、枠にとらわれないで活動できることが本制度の利点である。

 また、本制度は徐々に認知されてきており、遠方の刑務所に収容されている出所予定者で、愛知県内で生活することを希望する者からも申込みを受けることがある。その場合、「よりそい弁護士」は、テレビ面会システムを利用することにより、遠隔地であっても出所予定者の相談に応じることができる。

 さらに、遠方の刑務所に収容されている場合、出所してから帰住先に入居するまでの段取りなど、事前に検討しておかなければならないことがある。新幹線や高速バスなどを利用する必要があるときは、確実に出所者と落ち合って帰住先へつなぐために、「よりそい弁護士」が刑務所まで迎えに行って、出所者と一緒に愛知県まで移動したり、出所者が乗車する便及び降車場所などを正確に確認したりすることとなる。出所者が帰住先にたどり着くことができず、路頭に迷うこととなっては元の木阿弥であるため、このように「地味」な活動にも大きな意義があるはずである。

 ただ、実際に帰住先や就労先を確保するのは、「よりそい弁護士」から依頼を受けた関係機関である。あくまで「よりそい弁護士」は支援者の一人にすぎず、関係機関(協力雇用主もその一員である)との連携が求められるとともに、関係機関に対して丸投げしてはならない。言い換えると、出所前から「よりそい弁護士」が出所予定者の要望を適切に聴取した上、その要望を実現し得る各関係機関に対して働き掛ける一方で、弁護士自身も積極的に活動に当たるようにすれば、出所後には円滑な社会復帰及び再犯防止が図られることとなる。このような取組みが全国的に拡がっていくことを期待したい。