愛知県弁護士会トップページ>
愛知県弁護士会とは
>
ライブラリー >
「全国一斉投資被害110番」報告
~今回もSNS型詐欺被害に関する相談が多く寄せられました~
「全国一斉投資被害110番」報告
~今回もSNS型詐欺被害に関する相談が多く寄せられました~
会報「SOPHIA」令和7年3月号より
消費者委員会 委員 濵 尚 行
1 はじめに
2月25日、弁護士会館において、当会及び名古屋投資被害弁護士研究会との共催で「全国一斉投資被害110番」(電話相談)が開催されました。先物取引被害全国研究会が全国的に実施を呼びかけ、毎年開催しているものとなります。
2 110番の集計結果
今回は17件の相談が寄せられました。内12件がSNS型投資・ロマンス詐欺の相談で、副業詐欺被害の相談も2件寄せられました。
SNS型投資・ロマンス詐欺に関する相談の内、被害額が500万円以上のものが7件あり、最も高額な被害額は4000万円でした。なお、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数・被害額等については、警察庁の特殊詐欺対策ホームページ内で公表されており、深刻な被害が続いていることが明らかになっています。
日弁連や当会を含めた各地の単位会が、法律事務所による二次被害について注意喚起を繰り返していますが、二次被害が窺われる事案に関する相談は前年の3件から5件に増加しています。
3 被害の実態について
SNS型投資・ロマンス詐欺や副業詐欺に共通する特徴として、主としてSNSその他の非対面での欺罔行為によることが挙げられます。このような特殊詐欺の場合、犯罪グループが検挙されたような事案を除けば、首謀者や直接の勧誘者等に対して責任追及を行うことは困難です。
被害金が詐取される手口については、犯罪組織に口座開設者が譲渡等した預金口座が悪用されるものと、暗号資産を送金させられる手口に大別されます。但し、前払い形式の電子マネーが悪用される事案もあります。
今回寄せられた相談の多くも預金口座が悪用されたものでしたが、暗号資産を送金させられた被害も3件ありました。
預金口座に送金させられる手口では、振込先として個人名義の預金口座を指定されること(法人名義の預金口座が悪用されるケースも増加しています)や振込先の預金口座が振込の度に変わることが特徴となっています。
暗号資産が悪用された場合、現在の法制度や規制等では、被害回復は極めて困難です。暗号資産が今後普及していくことに伴い、同様の事案が増加することが予想されます。詐欺被害からの被害回復が完全に不可能となる未来が到来することを懸念しています。
4 最後に
近時は、詐欺の手口が匿名化するとともに、役割が細分化していることから、捜査機関が首謀者等を摘発することが難しくなっています。闇バイトや口座売買により、犯罪に関与した者が摘発される事案も多くはないと思われます。
他方で、被害額が高額であることから、SNS型投資・ロマンス詐欺を含めた特殊詐欺は、摘発されるリスクが低いにも関わらず、利益が高い犯罪類型となっており、犯罪に関与する者からすれば経済合理性が高くて、コスパがよい犯罪となってしまっています。実際に、令和5年における特殊詐欺の認知件数は19,038件、被害額は452.6億円と、前年に比べて総認知件数及び被害額は共に増加し、件数は過去15年で最多です。
消費者委員会として、問題提起や被害に関する啓発等、できることを地道に続けるほかありません。