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小学生・中学生・高校生のためのサマースクール2024
サマースクール模擬裁判に参加しました
小学生・中学生・高校生のためのサマースクール2024
サマースクール模擬裁判に参加しました
会報「SOPHIA」令和6年8月号より
法教育委員会 模擬裁判チーム 牛 島 大 介
1 8月7日、中高生を対象として、サマースクール模擬裁判「はじめての民事模擬裁判~君たちはどう考えるか~」を開催しました。
例年は刑事事件を題材としますが、今年は初めて民事事件(転用物訴権)を題材としました。
参加生徒には「左陪席裁判官」として模擬裁判劇を見てもらった後で、9つの班に分かれて、「判決」と「和解案」を検討してもらい、各班での検討結果を全体で発表してもらいました。
2 具体的な事件の内容は、修理業者である原告が、バスの賃借人からの依頼を受け、バスの修理・改造をしたところ、バスの賃借人が行方不明になったため、バスの所有者である被告に対して、修理・改造代金2500万円を請求したというものです。被告は賃借人から賃料全額は支払いを受けておらず、改造後のバスを返却されたものの買い手や借り手を見つけられず途方に暮れていました。テーマパークが3000万円で偶々購入してくれたものの、被告は収支として1500万円の赤字となりました。原告・被告ともに不利益を被っている中でどのような解決が最も公平か考察してもらうことを最大のテーマに位置づけていました。
3 当日は、尋問に先立ち、事案や争点に関してパワーポイントや資料集を活用した解説もなされ、どの参加生徒も熱心に耳を傾けていました。
模擬裁判のメインとなる尋問においては、有名アニメーション映画の場面を想起させる工夫が各所にこらされ、演者の熱のこもった尋問にどの参加生徒も釘付けになっていました。尋問の終わりには会場の参加生徒から補充尋問として質問を募りましたが、多くの鋭い質問がなされ、意識の高さを垣間見ることができました。
4 お昼休憩の時間にはそれぞれの参加生徒にワークシートに取り組んでもらいました。
5 午後からの評議では、修理・改造したことでバスの価値が上昇したといえるのか、部品代と工賃代で区分して論じるべきではないか、また、利得を認めるとしていかなる算式により求めるべきかについて白熱した議論が展開されました。そして、請求を認容するか棄却するかにより、原告の取引先や被告の今後の生活に大きな影響をもたらすことも意識して、自分たちであればいかなる判決を下し、和解案を提示すべきかを主体的に考える姿勢が見られました。
6 最後に、各班の検討結果を発表してもらいました。どの班も説得的な理由付けがなされていましたが、中高生らしい柔軟な発想でユニークな和解案を考えた班の発表の際には会場全体が爆笑の渦に包まれました。
7 今回の模擬裁判では、転用物訴権という比較的難易度の高い事案をテーマとしました。しかしながら、事案や法概念をわかりやすく伝えようとする各会員の努力、そして参加生徒の意欲により、皆が今回の模擬裁判の事案に向き合うことができました。注文者(賃借人)に対する請求が事実上困難な状況において、原告・被告間の紛争の解決を公平の見地から適切に行うにはどうすればよいか、という問題意識を持って各人が検討することができ、参加生徒及び会員にとって極めて有意義な機会になったと思います。