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真夏のティーンコート、開廷。

小学生・中学生・高校生のためのサマースクール2024
真夏のティーンコート、開廷。

会報「SOPHIA」令和6年8月号より

法教育委員会 ティーンコートチーム 中 子 祐 矢

1 はじめに

 8月5日、サマースクール初日、午後の部として、中高生を対象とした講座「ティーンコート」が開催されました。ティーンコート(子ども裁判所)は、生徒が裁判官役、検察官役、弁護人役にわかれ、罪を犯してしまった少年が、なぜ事件を起こしてしまったのか、再犯しないために今後どうすればよいかといったことを、模擬裁判を通して議論してもらう講座です。本年も30名以上の生徒が参加し、屋外の気温に負けない白熱した議論が繰り広げられました。

2 事件の概要

 今回の事件は、素性を隠して不適切動画を公開していた高校3年生の加害少年が、当該動画について同級生の被害少年から脅すようなことを言われたため、殴打し、傷害を負わせてしまったというものです。
 生徒に事前配付した資料の「事件の概要」には、それほど詳しい情報は載せていません。不適切動画とはどのようなものだったのか、普段の両者の関係性や、事件に至るまでにどのような経過を辿ったのか等といった具体的な事情は、生徒自ら、加害少年または被害少年から聞き出してもらうことになります。

3 いざ、開廷

 ティーンコートでの尋問に備え、検察官役の生徒らは被害少年と、弁護人役の生徒らは、加害少年とそれぞれ打合せを行いました。
 その結果、加害少年は活発で目立つ生徒であり、あまり目立たない被害少年を軽く扱っていたことや、他方で、被害少年が、不適切動画をネタに事件の前にも加害少年に要望を聞いてもらっていたこと等の事情が、各少年役から明かされました。
 そして、聴取結果を基に、生徒らによる尋問が始まります。的確な質問が次々と繰り出され、加害少年、被害少年役の会員が少し戸惑うようにみえる場面にも接しました。「ここが知りたい」という探究心と同時に、質問者の「狙い」がうかがえる問いかけも多くみられました。
 検察官役からは、被害少年が脅すような言動をしたといっても、暴力に訴えることが許されないという立場からの尋問を、弁護人役からは加害少年も元々は悪い人物ではなく殴打に至ってしまった経緯にも汲むべき点があるという立場からの尋問が行われ、これを基に論告・弁論が行われました。
 その後、裁判官役による評議が行われ、加害少年にその結果が伝えられます。
 少年らが互いに謝罪するよう求められるほか、被害少年の治療費等の賠償や、問題となった動画の削除等といった具体的な処分が言い渡されるとともに、そのような結論に至った理由の要旨が述べられました。限られた評議時間のなかで、どのような解決が適切か、そして、加害少年に今後どうなってほしいのかということまで、しっかり議論してもらったことがよくわかる内容でした。

4 最後に

 開始当初はどこかぎこちなくみえた生徒たちも、徐々に事案の探求にのめり込み、事実を深掘りしようとする姿勢をみせてもらったことが印象的でした。
 講座終了後のアンケートでも好評を得ることができました。今後も引き続きブラッシュアップを続け、参加者の熱量に負けないようしっかりと準備して生徒たちを迎えたいと、改めて思いを強くしました。