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行政連携センター設立2周年記念シンポジウム 「地方自治体・地域における 弁護士、弁護士会の関わり」

会報「SOPHIA」 令和2年2月号より

行政連携センター運営委員会 委員 吉 永 公 平
1 はじめに
 1月21日、ウインクあいちにて、愛知県弁護士会行政連携センターの設立2周年記念シンポジウム「地方自治体・地域における弁護士、弁護士会の関わり」が開催されました。2年前のセンター設立時から毎年開催されているシンポジウムです。センターの存在を自治体にアピールする段階から、弁護士・弁護士会と自治体とのより密な連携を深め、タイムリーなテーマも学ぶという、「内容の深化」の段階へと進んできました。
 当日は50名以上の自治体職員の方々にも御参加いただきました。愛知県副知事の青山桂子氏、名古屋市長の河村たかし氏からも、来賓の御挨拶をいただきました。
2 基調講演
 第1部の前半では、「弁護士との連携に期待するもの」とのテーマで、豊田市長の太田稔彦氏から御講演をいただきました。
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 太田氏からは、市長就任前の豊田市職員時代の御経験も踏まえ、豊田市が抱える法律問題につき、弁護士による市政への関与の有用性をお話しいただきました。特に豊田市は、愛知県内で最初に内部弁護士を採用した自治体であり、その効果として新規相談が大幅に増加したことが、先駆的な取組として紹介されました。現在も、瀧薫子会員と中村大器会員が勤務されており、3人目の内部弁護士の募集もされているとのことです。また、内部弁護士による多数の職員研修や政策条例の制定支援等、そして外部弁護士との子どもの権利擁護、成年後見、債権回収、包括外部監査等、多数の連携の実績も御説明いただきました。
 太田氏からは、「市民の立場に立ったとき、法的に若干リスクがあっても、踏み込むべき問題であればリスクを精査した上で踏み込むべきであり、その際には弁護士の法的サポートが重要であること」、また、「弁護士任せにせず、職員のレベルアップを図る必要があること」といった、弁護士と連携を図る上での自治体職員の心構えも説かれました。私たち弁護士としても、自治体と連携する弁護士のあるべき心構えにつき、大いに御示唆をいただいたと感じました。
3 行政連携センターの取組の紹介
 第1部の後半では、宮本曜爾会員から、行政連携センターの取組が紹介されました。
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 首長インタビューや実務者レベルでの協議会といった「顔の見える関係」の構築へ向けた取組や、自治体と弁護士会との橋渡し役として、自治体の様々なニーズを汲み取り、空家、災害、福祉に関する協定の締結等の「成果」に繋げていること等の具体的な活動につき、自治体職員の方々に認識していただきました。
4 パネルディスカッション
 第2部では、「自治体における内部統制の取組と弁護士の関わり」とのテーマで、パネルディスカッションを行いました。
 パネリストは、名古屋市総務局職員部人材育成・コンプライアンス推進室主査の細井和博氏、岐阜市行政部行政課法規係副主幹の大畑敦美弁護士(岐阜県)、岸本佳浩弁護士(大阪)で、コーディネーターは伊藤倫文会員です。
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 細井氏からは、政令市として名古屋市が検討している「実施義務自治体の内部統制」の取組を御説明いただきました。現時点の考え方として、内部統制の対象事務をどのように考えるか、他の部署で発生したリスクを庁内で共有する方法等、具体的なお話を聞くことができました。
 大畑弁護士からは、中核市としての岐阜市が実施・検討している「非実施義務(努力義務のみ)自治体の内部統制」の取組を御説明いただきました。岐阜市は地方自治法に基づかない内部統制を従前から実施しており、今後の同法に基づく内部統制との整理についても御見解をお示しいただきました。また、内部弁護士ならではの「行政の内部がわかること」の強みが内部統制でも活かせるという体験談もお聞きできました。
 岸本弁護士からは、日弁連が作成した「内部統制に関するモデル条例(試案)(都道府県・政令市用)」と「内部統制に関する要綱骨子(政令市以外の市町村用)」が紹介されました。自治体にかかる内部統制の負担を考慮し、自治体の規模や実情等に応じて選択・修正が可能な条例や要綱が検討されていることが印象的でした。また、外部弁護士として内部統制に関わる意義もお聞きできました。
 自治体職員の方々の御様子を拝見しましても、内部統制は、政令市以外の市町村でも、実施義務が課されていないにもかかわらず関心が高いことを実感しました。
5 合同説明会(プレゼン及び意見交換)
 第3部では、当会の行政連携の取組ごとにブースを作成し、分野ごとにプレゼンテーションと意見交換を行いました。分野は、自治体運営(政策法務、任期付公務員、条例制定支援、債権管理、空家、内部統制・監査)、子どもの権利、高齢者・障がい者、法教育、災害、消費者、その他の行政連携事業(両性の平等、犯罪被害者支援)です。
 私は自治体連携(任期付公務員、条例制定支援、債権管理)に参加しました。複数の自治体が任期付公務員を始めとした内部弁護士の採用に関心をお持ちであり、採用のメリットや活用方法等、具体的な質問が活発になされました。他のブースでも、多くの自治体職員の方々から御発言をいただきました。
6 おわりに
 今年度も多数の自治体職員の方々に御参加いただきました。弁護士会の行政連携が、月日を重ねるごとに、徐々に自治体にも浸透してきたことが実感できます。行政連携はもはや「新たな領域」ではない、とまでは至っていないでしょうが、この浸透の勢いを止めることなく、地方行政における法の支配の実現、住民福祉の増進に向けて、センター一同、より一層の取組を実施して参ります。