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中部経済新聞2017年1月掲載
不正競争防止法と営業秘密ー営業上の利益侵害を防止ー
中部経済新聞2017年1月掲載
不正競争防止法と営業秘密ー営業上の利益侵害を防止ー
この前、顧客の個人情報を流出させた疑いで逮捕されたというニュースを見たんだけど、どんな法律に違反するのかな? | |
不正競争防止法という法律です。 | |
不正競争防止法?聞いたことはあるような。どのような法律かな? | |
事業者間の公正な競争の促進と国際約束の的確な実施のため、不正競争を防止する目的で定められた法律です。 具体的には、不正競争によって、営業上の利益を侵害されたり、侵害されるおそれがある場合に、不正競争を止めさせたり、損害が生じた場合に賠償させる措置等が規定されています。また、公正な競争秩序を保護するため刑事罰についても定められています。 |
そもそも不正競争というのはどんな場合をいうのかな? | |
例えば、有名ブランドのロゴなどに似たロゴを使用する著名表示冒用行為や、他人の商品の形態を模倣した商品を販売する行為など、別表記載の行為が規定されています。 | |
確かに、そのような行為がなされると、公正な競争が害されてしまうね。 では、顧客の個人情報の流出はどの行為に関係しているのかな? |
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営業秘密に係る不正行為として問題となります。 盗み出すなど不正な手段により営業秘密を取得する行為や、不正取得行為によって取得した営業秘密を使用したり、開示したりする行為が、不正競争となり、違反した場合には刑事罰が規定されています(営業秘密侵害罪)。 |
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会社の営業秘密を盗んで、ライバル会社に転職して利用されたら、大変なことになるからなぁ。 顧客情報も営業秘密として保護されているんだね。 |
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実は、顧客の個人情報が必ず営業秘密となるわけではないんですよ。 | |
えっ、どうして。 |
営業秘密となるためには、 ①秘密として管理されていること(秘密管理性) ②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性) ③公然と知られていないこと(非公知性) の3つの要件を満たす必要があるんです。 |
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顧客の個人情報の場合は何が問題になるんだい? | |
顧客の個人情報が秘密として管理されているかどうかが問題となります。情報の保有者が主観的に秘密として扱うという意思を持っているだけでは足りず、客観的に秘密として管理されている状態が必要となります。 | |
顧客の個人情報をどう管理すれば、客観的に秘密として管理されているといえるんだい? | |
秘密管理性の判断基準としては、 ①当該情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限) ②当該情報にアクセスした者に当該情報が秘密であることが認識可能であること(認識可能性) が挙げられます。 |
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顧客の個人情報を誰でも閲覧できるとなると、営業秘密とは言えないと判断されかねないんだね。 | |
そうですね。社内の一部の者だけにアクセスを許す、パスワードを設定する、保管場所に施錠するなど、アクセス制限をきちんと行っておいた方が営業秘密と判断される可能性は高くなります。また、データやファイルに「マル秘」と明記し、秘密保持義務を就業規則に規定しておくことにより、従業員に対して顧客の個人情報が秘密であると認識できるようにしておくことも重要です。 | |
なるほど。そのような場合には、顧客情報が営業秘密に当たり、顧客情報を不正に取得したり、開示したりすると、犯罪になるということだね。 |
営業秘密侵害罪は、平成15年の法改正によって導入されたものですが、平成27年の改正によって厳罰化されました。 | |
どのような改正がなされたのかな。 | |
従来は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金でしたが、罰金についての上限が2000万円以下に引き上げられました(海外使用の場合などは3000万円)。法人についての罰金額の上限も従来は3億円でしたが5億円に引き上げられました(海外使用の場合などは10億円)。 | |
なるほど。営業秘密は不正競争防止法で保護されているということがよく分かったよ。今後は顧客名簿などが営業秘密と認められるようにアクセス制限を行い、管理を徹底することにするよ。 | |
営業秘密に関して、ほかにも改正がなされていますので、次回詳しくお話しします。 |
不正競争防止法2条に規定されている行為 |
①混同惹起行為(1号) 広く知られた商品表示によく似た表示、類似表示を使用した商品を作り、売るなどして、市場において混同を生じさせる行為 ②著名表示冒用行為(2号) 他人の著名な商品表示を、自己の商品表示として使用する行為 ③他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為(3号) 他人の商品の形態を模倣した商品を作り、売るなどする行為 ④営業秘密に係る不正行為(4号~10号) 営業秘密を盗んだり、使用・開示したり、盗ませたりする行為 ⑤技術的制限手段に対する不正行為(11号、12号) デジタルコンテンツのコピー管理技術、アクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為 ⑥ドメイン名に係る不正行為(13号) 不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一または類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有し、又はそのドメイン名を使用する行為 ⑦誤認惹起行為(14号) 商品の原産地、品質、製造方法等について、誤認させるような表示をしたりする行為 ⑧信用棄損行為(15号) 競争関係にある者の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は、流布する行為 ⑨代理人等の商標冒用行為(16号) パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用等する行為 |