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明石市の面会交流支援事業について~子育て支援の一環として~

会報「SOPHIA」 令和元年9月号より

子どもの権利委員会 委員 内 山 智映子

1 8月23日、明石市の面会交流支援事業の視察のため、委員と司法修習生合計15名で明石市役所を訪問しました。常勤弁護士の能登啓元氏、村山由希子氏、職員の大内智裕氏に加え、途中から泉房穂市長にも加わっていただき説明を受けました。
2 市役所訪問の前に、面会交流支援事業が実施されている「あかし子育て支援センター」を見学しました。同センターは明石駅前の複合施設パピオスあかし内にあり、未就学児専用のプレイルーム、こども図書室、小学生以上の遊具施設、相談窓口や一時保育施設も併設されております。夏休み中でもあり大賑わいでした。遊びに来つつ相談もできるのは心理的なハードルが下がりそうで、利用者目線に沿った施設だと思いました。
3 市役所では、まず村山氏から「明石市が取り組む離婚前後のこども養育支援」について説明がありました。こどもの養育プラン作成、相談事業、養育費確保支援など、弁護士職員もおり、順調に行われているとのことでした。

9月号明石市面会交流支援事業写真.jpg
4 明石市の面会交流支援について
(1)面会交流支援は、平成28年9月からモデル実施、翌年4月から運用開始されました。親の一方からの申し込みを受け、各自に1時間以上かけた丁寧な事前面接を実施した上で(その中で子どもの意向も確認)、父、母、子どもの三者が制度利用に合意できた場合に支援を開始します。市が合意形成に立ち入ることはないため、調停調書のあるケースが対象となることが多いとのことでした。
(2)支援が開始されると、職員が連絡調整を行い、当日は集合時間や場所を別にするなど、親同士が顔を合わせないように配慮します。希望に応じ面会に職員が付き添うこともあれば(プレイルームで実施、未就学児限定)、小学生以上の場合、室内の遊具施設の利用や外出をすることもあるそうです。終了時は職員が受け渡しを行います。
(3)明石市在住の子を対象とし、利用は無料で、これまでに14家族に対し述べ140回支援を実施したとのことです。回数制限や期間制限はなく、概ね年9~10家族が支援を受けているとのことでした。
(4)運用にあたっては、家庭問題情報センター(FPIC)東京ファミリー相談室の元理事である山口恵美子氏にアドバイザーとして月2回来てもらい、事前面接への立会いや助言を受けているそうです。
5 明石市では「子どもの立場で」を重視しており、決して面会交流ありきとは考えていない、と泉市長も述べておられました。市長によれば、子どもに関する予算を2.4倍(100億円を240億円に)、人を3倍にしたとのことで、決断して人と金を投入すればどこの市町村でも可能だ、と熱弁されていたのが印象的です。
6 面会交流を希望する場合に、無料で利用できる支援は大きな利点だと思いました。ただ、各家庭には様々な事情があります。今後導入する場合も子どもにとって最善の方法を適切にとってもらえるといいなあと思います。