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松本少年刑務所見学

会報「SOPHIA」 令和元年11月号より

刑事処遇に関する委員会 副委員長 樋 田 安 央


1 はじめに
 10月23日、刑事処遇に関する委員会・人権擁護委員会・刑事弁護委員会・犯罪被害者支援委員会・子どもの権利委員会の合同で、松本少年刑務所(長野県松本市)を訪問し、施設見学及び職員との懇談を行いました。
 松本少年刑務所には、教育施設の充実等、他の一般的な刑務所にはない特色が見られましたので、その特色を中心に紹介します。
2 受刑者について
 松本少年刑務所は、主に20歳未満で犯罪傾向の進んだ少年受刑者と26歳未満で犯罪傾向の進んだ受刑者を収容する施設です。もっとも、少年受刑者は全国的に減少傾向にあり、訪問時、施設に収容されている少年受刑者はいませんでした。また、訪問時の受刑者数は166名と、収容定員414名に対してかなり余裕があり、居室にも空きが目立ち、共同室を1人で使用している部屋もありました。
3 桐分校・桐教室
 「桐分校」は、松本市立旭町中学校桐分校の通称です。松本少年刑務所には、日本で唯一、公立中学校である桐分校が施設内に置かれています。松本少年刑務所では、全国の刑務所から義務教育を修了していない受刑者を集め、桐分校において1年間の中学校教育を行い、卒業させています。また、形式的に義務教育を修了した受刑者であっても、聴講生として学び直しができるようになっています。訪問日時点での桐分校在籍者は4名で、全員松本少年刑務所外から移監された受刑者とのことでした。
 「桐教室」は、松本少年刑務所内に置かれた長野県松本筑摩高等学校通信課程の通称です。桐教室も全国の刑務所から受講希望者を募り、刑務作業の傍ら通信制によって受講させ、高校卒業資格を取得させており、訪問日時点では10名の受講生が在籍していました。
4 外部通勤作業
 外部通勤作業とは、被収容者を単独で施設外の事業所に通勤させ、そこでの業務に従事させるというものです。松本少年刑務所ではこれを積極的に実施しており、近年では数名の受刑者が民間従業員とともにブナシメジの栽培作業に従事しています。昨年は松山刑務所大井造船作業場での脱走事件がマスメディアに大きく取り上げられましたが、地域の理解もあり、事件後も外部通勤作業への支障は全く出ていないそうです。

11月号松本少年刑務所見学
5 地域の理解
 職員との懇談では、松本少年刑務所に対する地域の深い理解があることがうかがわれました。地域の方々によって構成される「少年母の会」という支援団体があり(青少年受刑者の親代わりになろうというところからのネーミングなのでしょう)、文通プログラムを通じて受刑者との交流を行うなど、活発な支援を行っているとのことでした。また、施設を見学した際、施設内のグラウンドから近隣住居がよく見えたことが印象的でしたが、このことで近隣住民から苦情や改善要望は出ていないという点も、地域の理解の表れであるように思われました。