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~法曹志願者確保に向けた取組として~

名古屋大学オープンキャンパスでの刑事模擬裁判
~法曹志願者確保に向けた取組として~

会報「SOPHIA」 令和元年8月号より

法科大学院委員会 副委員長  栗  山   晋

1 はじめに

 8月8日、名古屋大学豊田講堂において、当委員会が企画・協力する刑事模擬裁判が行われました。
 この模擬裁判は、名古屋大学大学院法学研究科の宮木康博教授が担当されているゼミの学生が、法曹三者又は裁判員のいずれかの役を担当し、各配役に応じて冒頭陳述、論告求刑、最終弁論、判決を学生が自ら起案し、実演するという形式で実施されました。
 宮木教授のご提案により、同大学のオープンキャンパス企画として開催されたということもあり、720名という非常に多数の高校生が参加観覧した大規模な企画となりました。

2 当委員会の本企画への関わり方

 このオープンキャンパスでの模擬裁判は、本年度、当委員会が新たに企画したものです。当委員会としては、模擬裁判の実施に向けて、題材の検討・修正、実施内容・方法の決定(裁判手続のどの部分をどのように実施するかなど)を行いました。また、裁判官役や弁護人役に配役された学生の起案指導、実演指導(検察官役の学生に対しては同大学法科大学院の検察官実務家教員である菊池静香教授にご指導いただきました)等の事前準備にも携わりました。加えて、品川菜津美委員長と齊藤静香会員はそれぞれ被告人役、証人役として模擬裁判に出演し、辻顕一朗副委員長は模擬裁判実施後の解説を行いました。

3 実施状況

 今回の模擬裁判では高校生向けに実演するという観点から、争点の把握がしやすい殺人事件を題材に、実演する手続を絞り、冒頭手続、冒頭陳述、証人尋問、被告人質問、論告求刑、最終弁論、評議、判決の刑事裁判手続を実演しました。
 実演する学生全員が非常に熱心に準備したことで、裁判の内容が観客によく伝わる実演であったと同時に、実際の裁判と遜色ない臨場感のある模擬裁判が展開されました。そのため、観覧した高校生も2時間を超える実演の間、集中して観覧していました。
 模擬裁判上は無罪の判決でしたが、観覧した高校生の結論は有罪と無罪それぞれあり、高校生も裁判員になったつもりで各自一生懸命に事件を検討していました。
 このように実演した学生のみならず、観覧した数多くの高校生も主体的に参加できる意義深い企画となりました。

4 おわりに

 模擬裁判後の弁護士に対する質疑応答の時間では、時間の限り熱心に質問する高校生が多く、このようなオープンキャンパスという場での模擬裁判は数多くの高校生に向けて法曹に興味を持ってもらう格好の機会となったと思います。
 また、企画後の懇親会では、裁判官役の学生からは判決を下す難しさ、弁護人役や検察官役の学生からは主張どおりの判決を得られた喜びや反対に得られなかった反省の感想を聞き、実演した学生には模擬裁判を通じて法曹の職の難しさとそのやりがいの一端を経験してもらうことができたように思います。
 最後になりましたが、このような貴重な機会を与えていただいた宮木教授をはじめ、名古屋大学の関係者の皆様にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。