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喜連川少年院・国立きぬ川学院施設見学

会報「SOPHIA」 平成30年 11月号より

子どもの権利委員会 委員 根ケ山 裕子

 10月29日、子どもの権利委員会が中弁連子どもの権利に関する委員会と合同で毎年開催している子どもに関する施設見学として、栃木県さくら市にある喜連川少年院と児童自立支援施設の国立きぬ川学院を見学しました。

 喜連川少年院は、昭和42年に開設された第1種少年院(長期処遇専門・定員140名)で、現在は寮舎をリノベーションしているため、減員し、関東甲信越出身者を中心に約40名の少年が入院しているとのことでした。さくら市という名前のとおり、広大なグラウンドには桜の木が周辺に植えられていました。

 少年の出院後の将来の生活のために,昭和49年から,喜連川少年院では県立宇都宮高校のスクーリング教場が設置され,高等学校教育を受けられます。少年院の中に高校の通信課程があるのは,全国でも喜連川少年院だけです。

 院内には,旅立ち寮という自立生活訓練ができる施設があります。出院が決まった更正意欲が特に高い少年で,その必要ある者が対象ですが,職員の保安立会がなく,個室や時計が貸与され,少年自身で決めた日課に応じて,院内を自由に行動することが許されています。出院後の生活を想定し,少年自ら考えて,行動をする訓練の場となっています。

 喜連川少年院では,従来,特に集団指導に力を入れてきましたが,最近の少年の傾向として,資質上,集団指導の効果が上がり難い者の割合が高くなり,育て直しの観点から,傾聴を重視した個別指導に多くの時間が割かれるようになったということでした。

 次に視察した国立きぬ川学院は女子のみを対象とする、全国に2か所しかない国立の児童自立支援施設です。児童自立支援施設は開放的な施設ですが、同院は、少年の行動の自由を制限する等の強制的措置(児童福祉法27条の3参照)をとることができる設備があります。

 広大な敷地(名城公園くらいの広さ)には、6つの寮舎があり、小舎夫婦制で、夫婦の専門職員が寮担当となり、少年と起居を共にし、生活の中で、基本的な生活習慣、人間関係の築き方を指導していくことで、少年が社会の中で生きていくことができるように少年の情性を育てることに力を入れています。

 また、多くの児童自立支援施設は、中学卒業とともに、退園することが多いのですが、同院では、根本的な支援をするために、中学卒業後も継続して入所することができるよう、中卒少年については、院内で介護職員初任者の資格取得や、高卒認定試験の勉強もすることができます。

 きぬ川学院にくる少年の多くは、児童養護施設や他の児童自立支援施設内で不適応を起こす等の理由で入所しており、中にはいくつもの施設を転々としている少年もいるとのことでした。

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 喜連川少年院ときぬ川学院に共通していたのは、発達障害等を抱えた子どもたちが多く、現場も試行錯誤で子どもたちを受け入れようとしている姿でした。この子どもたちが施設を巣立つときに私たちに何ができるのかを考えさせられました。