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子どもの権利イベント 「少年法」 私たちはなぜ年齢引下げに反対するのか
~非行少年の実像から考える~
子どもの権利イベント 「少年法」 私たちはなぜ年齢引下げに反対するのか
~非行少年の実像から考える~
会報「SOPHIA」 平成30年6月号より
子どもの権利委員会 委員 横井志貴
1 はじめに
6月16日(土)、九州大学大学院法学研究院教授の武内謙治さん、全司法労働組合員の黒川清さんをお招きして、当会会館5階ホールにおいて、上記タイトルにてシンポジウムが開催されました。
2 少年法適用年齢引下げの問題点
まず、基調報告として、犬飼敦雄委員から、適用年齢の引下げの問題点について、簡潔かつ分かりやすく説明されました。
具体的には、①客観的な統計データからは少年事件が増加・凶悪化していないこと、②適用年齢は、飲酒・喫煙などのように、法の目的ごとに定めるべきであること、③軽微な事件が多い18歳、19歳を成人と同じに扱えば、教育的働きかけを欠くことにより、再犯が増加するおそれのあること、④現行少年法制は、法制審議会でもその有効性が評価されていることなどの問題点が挙げられました。
3 法制審議会の議論を踏まえて
次に、武内さんから、現在の法制審議会における議論の状況を中心に、適用年齢引下げの問題点がどこにあるのかについて、講演していただきました。
講演では、法制審議会の議論を、適用年齢の問題(形式面)と非行少年を含む犯罪者に対する処遇に関する刑事政策措置の問題(実質面)に分けて、複雑な議論を整理していただきました。
その上で、適用年齢引下げの問題点として、特に、犯罪学や脳科学の分野を踏まえると、18歳、19歳を少年法の適用対象から外せば、非行・犯罪のキャリアからの離脱が困難となると説明されました。
現在の法制審議会における議論の状況が整理されており、議論の焦点がどこにあるのか、よく理解できました。また、現行少年法は有効に機能しており、国法上の統一という形式面だけから、その少年司法の力を削ぐことになるのはいかがなものかと強く感じました。
また、愛知は、個々の弁護士や民衆の力で、少年司法の分野を切り開いてきた土地であるとの力強い言葉もいただきました。
4 18歳、19歳を見捨てるのか
最後に、講演された武内さんを始め、黒川さん、当委員会の多田元委員をパネリストに、パネルディスカッションが行われました。コーディネーターは、犬飼委員が務めました。
まず、黒川さんが、調査官としての経験から、少年非行の特徴を踏まえ、適用年齢の引下げによって、①18歳、19歳の少年が、事件を起こしても軽く考えてしまうこと、②大人から見放されると感じてしまうことなどを指摘されました。また、具体的な18歳、19歳のケースを基に、軽微な非行の繰り返しを断ち切り、「見習い」中である子どもたちの教育的な手当ての必要性を話されました。
そして、対談の中では、18歳、19歳が人として大切に想われず、成長の過程を奪われることに対する危惧が、黒川さんや多田委員から示されました。また、武内さんから、教育的な指導を中心とする少年院での処遇を、応報という考え方を前提とする刑罰として位置づける法制審議会の案に対する疑義が投げかけられました。
18歳、19歳を見捨てるような法制度に変わることのないよう愛知から声を上げていきたいと思ったシンポジウムでした。