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旧優生保護法被害に関する電話相談

会報「SOPHIA」 平成30年4月号より


高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 副委員長 髙森 裕司

1 優生保護法とは
 「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的としています(1条)。このような法律が、戦後の昭和23年に制定され、平成8年に母体保護法に改正されるまで存在していました。
2 優生手術
 この法律では、①「遺伝性精神病」「遺伝性精神薄弱」など別表列挙の疾患がある者に対し、「その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは」、都道府県優生保護審査会の審査(4条)を経れば本人の同意がなくとも、男女を問わず、生殖を不能とする方法(精管や卵管を結さつ又は切断及び結さつ)による手術(優生手術)が認められていました。また、②非遺伝性の「精神病又は精神薄弱」である者についても、保護者の同意があれば同審査会の審査を経て、本人の同意なしに優生手術が実施できました(12条)。③本人、配偶者、又はそれらの四親等内の血族に遺伝性精神病等があれば、本人及び配偶者の同意で優生手術をすることもできました(3条)。
 しかし、優生手術に対しては、「遺伝性」の科学的根拠が十分でないこと、遺伝性以外にも広く認められたこと、本人の同意なく
「公益上必要」という理由で認められたこと、特定の疾患や障害を「不良」とみなしていることなど、問題点は枚挙に暇がありません。日弁連も平成29年2月16日意見書で、自己決定権(憲法13条)の侵害、平等原則(憲法14条1項)違反と明言しています。
3 優生手術の実態
 厚労省の資料によれば、昭和24年から平成8年までの間に、本人の同意なく審査により行われた優生手術は約1万6500件に上ります。厚労省の当時の通知には、審査を経たものについては、身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔の手段を用いることも許される場合があると目を疑うようなことまで書かれています。
 それだけではなく、精神病や精神薄弱でない者に対する手術、自分で生理の手当ができないという理由で法律上にも規定がなかった子宮摘出までされた、また、手術が結婚や施設入所、施設からの退所の条件とされて同意を事実上強制されたなど、当時の法律にも従っていない違法な事例が多数ある可能性があります(「優生保護法が犯した罪」優生手術に対する謝罪を求める会編 現代書館)。
4 電話相談
 国は、いまだに「当時は適法に行われた」として、謝罪や補償はもちろん、実態調査もしていません。これに対し、1月30日、強制不妊手術を受けさせられた被害者の方が、国に対し謝罪と補償を求めて提訴しました。
 これをきっかけに3月30日、全国17都道府県で電話相談が行われ、当会でも実施しました。結果は全国でも34件、当会では当事者でない方の情報提供が1件だけでした。
 しかし、元々当事者が声を上げにくい問題であり、たった1日の電話相談で被害実態が分かると思っていたわけではありません。この問題は、過去の問題ではなく、相模原障害者施設殺傷事件にも通底し、障害を理由とする差別が無くならない現在の問題と言えます。今後も電話相談を継続するとともに、それ以外の方法も含め、慎重で粘り強い被害実態の把握に努めていきたいと思います。ご協力をお願いします。