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べてるの家見学ツアー

会報「SOPHIA」 平成29年9月号より

高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員 
原   秀  一

  9月10日から翌11日にかけて、委員10名で、北海道浦河町にある、べてるの家を見学しました。べてるの家とは、昭和59年に設立された主に精神障がいを抱えた当事者の地域活動拠点の総称で、有限会社福祉ショップべてる、社会福祉法人浦河べてるの家、NPO法人セルフサポートセンター浦河等の活動があります。現在は100名以上の当事者が同地域で暮らし、活動に参加しています。「当事者研究」という世界でもあまり類を見ない活動も行われており、近年は、弁護士会を含む多数の見学者があり、その活動が注目されています。
 10日午後2時に新千歳空港で集合し、浦河まで3時間レンタカーを走らせました。浦河到着後、懇親会には、べてるの家の職員5名にもご参加いただき、浦河での生活や、べてるの家での活動等をお聞きしながら、ざっくばらんに情報交換を行いました。
 翌日は、午前9時15分から、べてるの家で、当事者によるミーティングがありました。べてるの家では、「三度の飯よりミーティング」であり、月に100回以上のミーティングを行うそうです。ミーティングでは、励まし合い、支え合い、相互の情報交換を行うことを目的としています。見学した朝のミーティングでは、各当事者が当日の体調と気分、何時まで働けるか、仕事の内容等を報告していました。
 その後、当事者は各作業を開始し、見学者は、職員からべてるの家についての説明を受け、各作業を見学しました。
 見学後、午前10時からは当事者研究が始まりました。当事者研究とは、べてるの家で実践されている障がい当事者を主体としたプログラムで、障がいを医療で治すのではなく、精神障がいを抱える当事者が、自身の抱える生きづらさを自ら研究し、これを受容し、活かしながら、地域社会で共に暮らすことを目的としたプログラムです。見学当日は、4名の当事者が、研究結果等を発表していました。べてるの家では、自らのパニックや幻覚妄想等の症状を「誤作動」と呼んで客観視し、研究しています。入退院を繰り返していた当事者が、病気と向き合い、「誤作動」を起こさないためにどうしたらよいか、「誤作動」を起こしたときにどう対処すればよいかを研究し、その方法を発表していました。順調に生活できている当事者は、その方法を発表し、現在「誤作動」に悩んでいる当事者は、自ら考えていることを発表し、他の当事者から意見を募りました。当事者は、皆、実体験に基づいて積極的に意見を述べ、発表した当事者も、今後の方向性を見いだしたようでした。
 当事者研究において重要なのは、当事者が、自分で自分を助ける方法を見つけるという点にあります。浦河には精神科の病院がなく、入院が必要となれば、べてるの家の利用が困難になります。しかし、当事者らは、これまで入退院を繰り返していた方も含め、入院を必要とすることなくべてるの家での生活を続けています。それは、浦河の静かな環境に加え、自らの病気と真剣に向き合うという姿勢が大きく影響していると感じました。
 午後は当事者らの住居を外から見学し、午後2時頃、新千歳空港へ向かいました。
 名古屋と浦河では全く環境が異なりますが、今回のこの経験を、今後の精神障がい者への支援に活かすことができるよう、私自身勉強を深めたいと思いました。