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債権法(民法改正法)改正研修会

会報「SOPHIA」 平成29年7月号より

会 員 小 林 唯 希

1 はじめに

 本研修は、平成29年6月2日に債権法(民法改正法)が公布されて以来、初めての債権法改正に関する全国研修であり、実務に関する重要テーマである保証・時効・法定利率が取り上げられた。なお、改正法の施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされており、平成29年9月時点において施行日は未定である。


2 保証制度の改正

(1)根保証の規律の拡大
 改正法465条の2では、個人根保証契約一般に現行法の貸金等根保証契約の極度額に関する規律を適用することとし、極度額の定めがなければ、個人根保証契約の効力は生じないものとした。これにより、建物賃貸借契約の保証で、保証人が個人の場合についても極度額の定めがなければ効力が生じないこととなり、これまで問題視されてきた個人根保証契約における個人の保証人保護がはかられた。
(2)個人保証人の保護
 また、改正法465条の6では、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約で、保証人が個人である場合、公正証書による保証意思の表示を義務づけた。もっとも、経営者については公正証書による保証意思の表示が不要とされている(改正法465条の9)。
(3)情報提供義務
 改正法465条の10は、事業のために負担する債務の個人保証(貸金債務の保証に限らない)につき、主たる債務者に情報提供義務を課し、①主たる債務者が情報を提供せず、または事実と異なる情報を提供したため、②保証人が誤認し、それによって保証契約を締結したときで、③債権者が情報をきちんと提供していないことを知り、または、知りうるときは、保証契約の取消しを認めた。また、改正法458条の2は、債権者に対し、保証契約存続時の情報提供義務を課した。

3 消滅時効制度の改正

 改正法は、主観的起算点を導入し、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は、②債権者が権利を行使できるときから10年間行使しないときに時効消滅するものとした(改正法166条1項)。
 また、生命身体に対する損害に関する請求権は、契約債権、不法行為債権ともに、主観的起算点から5年、客観的起算点から20年で時効消滅することとし、統一された(改正法167条、724条の2)。
 そのほか、現行法の短期消滅時効制度(現行法170条ないし174条)が廃止され、時効障害事由の再編がはかられた。すなわち、時効障害は、「完成猶予」が原則となり、時効期間の完成前に完成猶予事由が生じれば、その事由が終了してから6か月を経過するまで、時効は完成しない(改正法147条以下)。また、更新事由が生じればその時から新たに時効の進行が開始する。

4 法定利率(改正法404条)

 自動変動型固定利率制を採用し、施行日から3%に変更し、以後3年毎に利率を見直すことになり、商事法定利率が廃止された。経過措置につき、パネルディスカッションにて具体的事例をもとに詳細な議論がなされた。