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性犯罪に関し刑法が改正されました

会報「SOPHIA」 平成29年7月号より

刑事弁護委員会 副委員長  園  田   理 

 

 性犯罪に関し、刑法の一部を改正する法律が6月16日に成立し、7月13日から施行されました。

1 性犯罪の非親告罪化  

 従来の「強姦罪」「準強姦罪」「強制わいせつ罪」「準強制わいせつ罪」などは非親告罪化されました。  

 また、改正法施行後は非親告罪化されたこれらの罪を改正法施行前に犯していても、施行の際に既に告訴が取り消されるなどして法律上告訴がされなくなっているもの以外は、被害者の告訴なしに起訴可能になりました。  

2 「強姦罪」から「強制性交等罪」へ  

 「強姦罪」は「強制性交等罪」に改められました。 客体は女性に限定されなくなりました。行為は姦淫から性交等(性交、肛門性交、口腔性交)へ拡げられました。また、「性交等」には、性的侵襲をする行為だけでなく、性的侵襲をさせる行為も含まれます。 「準強姦罪」も「準強制性交等罪」に改められました。

3 監護者による性犯罪に関する規定の新設  

 「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」が新設されました。 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力に乗じて、わいせつな行為や性交等をした者は、暴行・脅迫を用いなくとも、「強制わいせつ罪」「強制性交等罪」と同様に処罰されることになりました。 「現に監護する者」に当たるか否かの外縁は明確ではありません。法案審議の過程で「現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点、生活上の指導監督などの精神的な観点、このようなものから依存、被依存ないし、保護、被保護の関係が認められ、かつその関係に継続性が認められることが必要」だと説明されています。  

4 性犯罪に関する法定刑の引上げ等  

 次のとおり法定刑が引き上げられました。

旧「強姦罪」3年以上の有期懲役 →「強制性交等罪」5年以上の有期懲役

旧「強姦致死傷罪」「準強姦致死傷罪」無期or5年以上の有期懲役 →「強制性交等致死傷罪」「準強制性交等致死傷罪」無期or6年以上の有期懲役

 改正前、強盗犯人が強姦をした場合は無期又は7年以上の有期懲役刑、強姦犯人が強盗をした場合は5年以上の有期懲役刑、というように法定刑に差がありましたが、強盗と強制性交等が同じ機会に行われれば「強盗・強制性交等罪」として無期又は7年以上の有期懲役刑に統一されました。  改正前、悪質事案として別個の構成要件とされていた「集団強姦罪」「集団強姦致死傷罪」は、上記のとおり「強制性交等罪」「強制性交等致死傷罪」の法定刑が引き上げられたこと等に伴い、削除されました。