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令和6年度模擬接見での学び

愛知大学法科大学院修了生 太 田 寧 々

1 今回の模擬接見について
 私は、12月11日に開催された、愛知県弁護士会法科大学院委員会による、模擬接見イベントに参加しました。
 今回の接見は、別々の被疑事実で勾留されている3人の被疑者を対象とする、国選弁護の初回接見でした。事前に開示された情報は、実際の国選弁護と同様、法テラスからFaxで送られてくる情報だけでした。形式としては、被疑者役の先生1人に対し、複数の弁護人役の参加者が接見をするというものでした。
 以下、私が担当した順番に、各被疑者との接見について記載していきます。
2 各接見について
 まず、覚醒剤所持の被疑者は、同棲するパートナーのものであるとして、共犯性を否認していました。この被疑者には接見禁止が付されており、また、被疑者からの要望が多く、対応すべきこととしてはならないことの判断がつかず、他の弁護人役同士で考えるも、漠然とした返答になってしまい、不甲斐ない思いをしました。実務に出た後には、先に先輩等と相談しておくか、要望に対する回答を直ちにできない場合は、曖昧な返答をするのではなく持ち帰り検討することができるようにしようと心に決めました。
 次に、傷害事件の被疑者は、酒に酔っていたため覚えていないとして、否認していました。被疑者が早く家に帰りたいと言っており、かつ、任意同行時とその後の状況に、実質的に逮捕に至っている疑いのある事情があったため、準抗告を申し立てることを考えました。模擬接見が終わり、事実の聞き取りについての講評をいただいた後、被疑者役の先生から、本当は一言目で帰ってくれと言う予定だったが、その場合どうしたかという問題提起をされ、イベント後の検討課題となりました。色々な先生にお話を伺った結果、そのまま帰るのではなく、何とかして信頼関係を築く努力をするべきだろうという結論に至りました。
 最後に、恐喝の被疑者は、強く貸金の返済を求めたにすぎないとして否認していました。この被疑者は少年院に入ったことがあるとのことで、接見時の会話の様子が慣れていたため、新人弁護士の方が気圧されてしまうような雰囲気がありました。このような被疑者との接見では、被疑者と信頼関係を築くために、雰囲気に飲まれないように話をしていくことが重要なのだろうと感じました。また、被疑者の仕事用デスクの引き出し内にあるはずの、消費貸借契約に基づく金銭授受についての証拠物をどのように入手するかについても、弁護人側で問題となりました。直接自分が取りに行くのは不適切ではないかと考え、私たちは被疑者の父親に持ってきてもらうことを提案しました。しかし、講評では、正当な弁護活動として、自分でできるのではないかと言われ、そのような活動もできるのかと目から鱗が落ちたようでした。
3 最後に
 紙幅の関係で、模擬接見後の先生方との座談会については割愛いたしますが、模擬接見の経験や先生方から伺ったお話を、修習でも活かしていければと思います。今回のイベントを開催してくださった愛知県弁護士会の先生方、お誘いくださった宮木先生、会場を準備してくださった名古屋大学の皆様、本当にありがとうございました。