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犯罪被害者支援連載シリーズ(103)~犯罪被害給付制度の改正~ 給付金の引上げ
会報「SOPHIA」令和6年7月号より
犯罪被害者支援委員会 委員 佐藤 万里奈
1 はじめに
令和6年6月15日付けで、殺人等の故意行為によって死亡した被害者遺族や障害等の重大な被害を受けた被害者に国から支給される給付金の条件や金額等を規定した犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律の施行令が、改正されました。
本記事では、犯罪被害給付制度の改正内容を説明いたします。
2 犯罪被害給付制度の改正概要
犯罪被害給付金の種類には、被害者遺族が対象となる遺族給付金、被害者自身が対象となる重傷病給付金及び障害給付金の3種類があります。
今回の改正の概要は、令和6年6月15日以降に受傷した被害者や死亡した被害者の遺族を対象に、遺族給付金・休業加算額・障害給付金に設定されている最低額を一律で引き上げたり、遺族自身に生じる影響を踏まえて支給額を増額するというものです。
遺族給付金の算定基準となる基礎額は収入によって変わるため、改正前は、収入のない子ども、学生、求職中等の家族が亡くなった場合の遺族給付金が少額であるなどの問題が生じていました。しかし、遺族が精神的ショックで就労できなくなるなど、被害者の収入がないような場合でも、遺族が経済的に大きな打撃を受ける実態があることを踏まえて算定を見直すべきであるという観点から、遺族給付基礎額の最低額が、従前の3200~5300円(改正前は年齢により基礎額の最低額も異なっていた)から、一律6400円に引き上げられました。
また、収入の多寡にかかわらず、遺族給付金を、配偶者、子、父母が受給する場合、基礎額を一律4200円加算する仕組みも導入されました。
これにより、改正前は、例えば生計維持関係遺族のいない無収入の子どもが亡くなった場合、その父母は、最低額3200円×倍率1000=320万円しか支給されませんでしたが、改正後は(最低額6400円+加算額4200円)×倍率1000=1060万円が支給されることになりました。
さらに、障害給付金や、重傷病給付金の休業加算額の最低額もそれぞれ3600円から5900円に、2200円から3200円に引き上げられました。
3 残った課題
遺族給付金の金額が引上げや増額がなされましたが、それでも十分な補償というわけではなく、また、今回の改正は、改正前に発生した事案については対象にならないため(不遡及)、改正前に事件により亡くなったり受傷した子どもや学生等収入のない被害者については、救済されません。また、加害者と被害者が親族関係にあるような場合は、給付金が不支給又は減額される規定は従前どおり存在するため、金額が不十分であるという問題は残っています。
財政面での問題はありつつも更なる給付への期待や、犯罪被害給付制度以外に、加害者が被害者に対して支払うべき損害賠償金を国が立替払いする制度であったり、寄り添い支援の充実等、犯罪被害給付制度だけでなく、被害者の経済的補償を図る制度の更なる充実が期待されます。