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全国一斉労働相談ホットラインを実施
会報「SOPHIA」 平成29年6月号より
全国一斉労働相談相談員 藤 原 規 眞
6月9日、全国一斉労働相談ホットラインが実施された。計15名の会員が交替で電話の前に待機し、喫緊の課題に悩む労働者の方々の相談にあたった。
国民の経済格差が拡大し、自由な意思で仕事を選べない労働者が増えている中、その状況に乗じて被用者に違法不当な労働を強いる事業者が後を絶たない。また、昨今報道等で注目を浴びることが多いハラスメントも、社会問題となっているにもかかわらず根本的な解決には程遠い状況にある。
過酷な労働環境にあって弁護士に相談する時間も割けない労働者の方々にとって、電話で相談できる労働相談ホットラインは現代社会の「駆け込み寺」的な機能を担っている。
各種メディアも労働相談ホットラインの役割に注目し、例年、電話での相談の様子が新聞・ニュースなどで報道されている。
今年のホットラインにも、多くの相談が寄せられた。年齢では40~60代の方が半数以上を占め、高齢者の労働問題が社会問題になっていることを反映する結果となった。
また、性別でも男女比が1:1となっており、女性を取り巻く労働環境が一向に改善されていないことを意識せざるを得なかった。
正規雇用者からの相談が非正規雇用者からの相談を大きく上回ったことも注目に値する。どうしても非正規雇用者の労働問題について関心が向かいがちだが、賃金・残業・ハラスメントといった重要な問題は、正規雇用者であっても避けて通れないことを実感した。
相談内容の分類では、「いじめ・パワハラ」が最も多く46%を占め、続いて「解雇・雇い止め」と「賃金・残業代の未払い」がそれぞれ23%と続いた。前年度に続き、「いじめ・パワハラ」の数字が突出していた。
3時間の待機時間で計4件の電話に対応させていただいたが、最も印象に残ったのは、同僚からの嫌がらせを受けたことについての憤りを聴いたときのことだ。どの部署に相談に行ってもたらいまわしにされて疑心暗鬼が募り、一方で弁護士事務所に足を運ぶ時間もなかったという話を打ち明けられ、労働相談ホットラインが問題解決の端緒になっていることを肌身で感じた。
もっとも今回の相談が氷山の一角であることも紛れもない事実である。今後は労働相談ホットラインの告知に一層の工夫を重ねて周知に努める必要があるという課題も強く感じた。
同時に相談員の裾野を広げていくことも重要であると噛み締めている。私自身、先輩会員に倣ってこの取り組みを続けていこうと考えている。